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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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4-4

 私が何度も生まれ変わる中で、ルークは、ずっと私のそばにいたらしい。守護者として。それは神が定めた役割だと、彼は言う。最初に出会ったのは、二万年前。アルタイルで生まれたときだった。そのときの私は、性別を持たない存在だったという。けれど、どちらかと言えば男性的だったらしい。そこで、私たちは恋人になった。


 それからも、私は何度も別の星で生まれた。プロキオンでは修道女として生き、金星近傍の星では書店を営む家の娘として生まれ、16歳で命を落とした。そして、クレアという星。そこでは、16歳になると結婚が義務づけられていた。私はその慣習から逃れるために、宇宙連合軍へ入隊した。所属を変えれば、籍が外れるからだ。父は、ハトホル集合意識体に属する軍人だった。その縁で私は会議に参加し――そこで、ルークと再会した。彼は、その場でこう紹介されたという。ラファエル天使の位を授けられた者だと。そこから、また関係が始まった。私は彼についていき、アルタイル軍へ移籍した。部下として。そして――妻になるために。


 それから、今度は地球に生まれた。ルークの話によれば、アルタイルの施設には“私の本体”が眠っているらしい。今ここにいる私は、その本体から分けられた意識体。この人生を終えれば、本体へと還る。地球で見た最後の景色を胸に、アルタイルで目覚める。そのとき、記憶はすべて統合される。永山紫乙としての私は――“記録”になる。残るのは、本体としての私。そして、その隣にはルークがいる。再会するのは、“妻”としての私だ。


(……不思議な話よね)


 自分でも、どこまで現実として受け止めていいのか分からない。けれど、彼の言葉には妙な説得力がある。ルークは、私の魂の歴史をずっと見守ってきたと言う。どの時代でも、どの星でも。最終的な私の目標は、軍人として新人育成の教官資格を得ること。そのために、この地球で経験を積んでいるのだと。


 長い時間を共有してきたから、私のことはすべて分かるらしい。思考の癖も、言葉も、選択も。今だって、意識は繋がったままだ。私の考えていることなど、隠しようがない。


(……それなら)


 ふと、思う。


(浮気なんて、するわけないって分かるでしょうに)


 半年前。ルークに、付き合ってほしいと言われたとき――私は不思議な懐かしさに背中を押されて、頷いた。恋人というより、相棒に近い関係。それが、しっくりくる。


「ルーク。あなたも嫉妬するのね」


 ふと、口に出す。


「そりゃあするよ」


 彼はあっさり答えた。


「僕は嫉妬深いんだ。君はまだ思い出してないだろうけど」

「そうなの?」

「君が誰かのために料理をするなんて、妬かないわけがない」

「本当に馬鹿ね」


 思わずため息が出る。


「私、そんなに惚れっぽくないし、恋愛に貪欲でもないの。知ってるでしょう?」


 少し肩をすくめる。


「それに、もう41歳よ。若い頃ならともかく、今さら心配されても」

「……その言い方、懐かしいな」


 ルークがくすっと笑う。


「君は変わらない」

「そう?」

「大人だから恋をしない、なんてことはないだろう?」

「あなたがいるじゃない」


 自然と返す。


「付き合ってるんでしょう?」

「そうだよ」


 彼は頷いた。そして――少しだけ、意地悪そうに笑う。


「でも、君から“好き”って言われたことはない」

「……」

「それも、昔からだ」


 言葉に詰まる。図星だった。ルークは、ただ静かに微笑んでいる。整った顔立ち。どこか色気を帯びた雰囲気。以前、ユリウスさんが言っていた。“色気がだだ漏れ”だと。配信の視聴者も、同じことを言う。たしかに、最初はそう思った。でも――。


(中身が子どもなのよね)


 今では、そういう印象の方が強い。私が何かを覚えようとすると、わざと意識に介入して忘れさせたり。気に入らないと、強引にウォークインして買い物を操作してきたり。散財させるのも、お仕置きの一種らしい。本当に、面倒な人だ。でも、それも含めて、昔から変わらない関係なのだと、ルークは言う。死んでも直らない――そんな言葉が、妙にしっくりきた。


 そのときだった。エレベーターが、静かに止まった。ドアが開く。目の前には、静かな廊下がある。私は一歩踏み出し、目的の部屋の前に立つ。深く息を吸う。そして、インターホンを押した。すぐに、ドアが開く。


「来てくれたか」


 五十里社長が立っていた。すでに出勤前の整った姿。その奥に――もう一人。白い肌。整った顔立ち。少しだけ疲れた目。それでも、視線を引きつける存在感。最近、テレビで見かけるようになった顔だ。彼が、ゆっくりとこちらを見る。


「……どうも、すみません」


 小さく頭を下げる。声は思ったよりも静かで、繊細だった。


「入ってくれ」


 社長に促され、私は一歩中へ入る。広く整えられた空間だ。静かで、どこか張り詰めた空気がある。外の世界と切り離されたような――そんな場所。私は荷物を持ち直しながら、ふと思う。ここから、また少し違う日常が始まるのだと。

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