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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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1-1 奢られないクリスマス、配信中(紫乙視点)

 12月24日、水曜日。23時。


 私の名前は永山紫乙。音響会社で社長秘書をしながら、ネット配信もしている。ジャンルは雑談とオカルト。心霊スポットに出かけたり、兄から聞いた怪談を語ったり――休日には、こうして近所を散歩しながらの生放送・ライブ配信が定番だ。


 コメントを拾いながら歩いて、視聴者に勧められたコンビニの新商品を買いに寄り道して、そのまま公園で食べることもある。そういう、ゆるい時間が好きだった。


「今夜は寒いわねーーー。らんらんさん、こんばんは!」


 自撮り棒に取り付けたスマホを軽く振って、私はインカメラに笑いかける。ときどき外カメラに切り替えて、静かな夜道を映す。街はクリスマスイブにしては落ち着いていて、遠くでイルミネーションがぼんやり光っている。


 現在の視聴者数は178人。配信開始から一時間で、累計は580人。数字は画面の端に小さく表示されている。手元にはスマホがもう一台。仕事用と、緊急連絡用。配信中でも現実は容赦なく割り込んでくるから、切り離せない。


 コメント欄には「今来ました」「こんばんは」、それからお決まりの「オツかれ」が流れる。私の名前にかけた挨拶だ。私は、らんらんさんのコメントを拾う。彼氏と居酒屋デートしてきましたというものだ。それに対して、他の視聴者から「いいなー」が連投される。


「いいわねえ。え、奢り?最高じゃない。……私、前にも言ったと思うけど、奢られたのって最初だけなんだよね」


 少し肩をすくめて笑う。


「付き合って一か月くらいまでは優しいのよ、みんな。それ過ぎると割り勘。で、そのうち“ちょっと貸して”が始まるの」


 コメント欄に「わかる」「それ地雷男」と流れるのを見て、私は苦笑した。


「貸したお金?返ってきたことないよ。見事に全員。最後はだいたい“今別れたら明日のご飯がない”って言われるの」


 風が頬を撫でる。思ったより冷たい。街灯の下で、白い息がふっと浮かんだ。


「会社員だよ?みんな。なのに、なんであんなにお金ないのか不思議なんだけど」


 コメントが少し荒れる。「それ利用されてる」「優しすぎる」といった言葉が流れていく。


「優しいっていうか……。まあ、断るの面倒だっただけかもね」


 自分で言って、自分で少しだけ刺さる。


「しかもね、後で浮気発覚して、その相手にはカラオケ代出してるの。意味わかる?私には一円単位で割り勘なのに」


 笑いながら話しているのに、胸の奥がじんわりと冷える。クリスマスイブの夜にする話じゃないな、と思いながらも、やめる気にはなれなかった。


「だからさ、奢られるっていうの、ちょっと夢なんだよね。誕生日プレゼントとかさ。普通のやつ」


 画面の向こうで誰かが「今度奢るよ」と軽口を叩く。


「そういうのはいいの。ネットの人に奢られても意味ないでしょ」


 そう言いながら、ほんの一瞬だけ視線を逸らす。意味がない、と言い切った言葉が、自分の中で少しだけ引っかかった。

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