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そのときだった。画面が、わずかに揺れた。
「……あれ?」
スマホが、ほんの少しだけノイズを走らせる。コメント欄が一気に荒れた。
――「来た!!」
――「これ昨日と同じ!」
――「やばいぞこれ」
――「また光くる!?」
「ちょっと待って」
私は思わず立ち上がる。部屋の空気が、変わった気がした。静かすぎる。雪の夜の静けさとは違う。何かが、“集まってくる”感じだ。
「ルーク……」
小さく呼ぶ。彼は、すぐに私の隣に立った。
「大丈夫」
短く言う。でも、その目は、少しだけ鋭い。いつもの優しさとは違う。その瞬間だった。窓の外に、光が走った。
「……っ!」
思わず息を呑む。昨日と同じ。いや、違う。もっと近い。もっと、はっきりとした光だ。コメント欄が、完全に崩壊した。
――「来たああああ!!」
――「やばいやばいやばい」
――「これガチだって!!」
――「見えてる!!!」
――「逃げて!!」
「……なに、これ」
声が震える。昨日は、ただ“見せられた”だけだった。でも、今回は違う。これは明らかに、こちらを“見ている”。すると、ルークが、低く呟いた。
「……予定にないことだ」
「え……?」
その一言で、背筋が冷えた。昨日のは、計画されたもの。でも、これは違う。じゃあ、今の現象は何だろうか。光が、ゆっくりと広がる。でも、美しくない。どこか、冷たい。感情のない光だ。コメントが、混乱する。
――「怖い」
――「昨日と違う」
――「なんかおかしい」
――「これやばいやつじゃない?」
「ルーク……、これ……」
言葉が続かない。彼は一歩前に出た。画面の前に立つ。その背中が、はっきりと見えた。
「……紫乙、配信を切ろう」
「え?」
「今すぐ」
その声には、迷いがなかった。私は、画面を見た。コメント欄。視聴者。この状況。全部が、ぐちゃぐちゃに混ざっている。でも、分かった。これは、昨日の“奇跡”とは違う。私は、指を伸ばした。配信終了ボタン。一瞬、迷う。でも、押すしかない。
「……またね」
小さく言って、私は、画面をタップした。配信が、途切れる。その瞬間、部屋の中が、静まり返った。光は、まだ外にある。でも、さっきまでのざわめきが、嘘みたいに消えた。私は、その場に立ち尽くした。
「……何、あれ。消えたわね」
小さく呟く。ルークは、外を見たまま答えなかった。ただ、静かに。今まで見たことのない表情で、そこに立っていた。そして、言った。今まで交流したことのない宇宙船がコンタクトを取ってきたのだと。どうやら、視聴者の中に彼らと交流がある人がいるらしく、昨日の配信を見ていたらしい。
「危ない人たちなの?」
「光を送ってくる程度にはね。調べておくから、今日は静かにしておこう」
「そうね」
「もうすぐで凰李が来るんだろう。蕎麦を届けに」
「うん。お兄ちゃんもさっきの光を見たかしら」
「タクシーの中で仕事をしていただろう」
ルークと話しているうちに、私の心は落ち着きを取り戻した。そして、数分後に兄が家にやってきて、恵介君に届けるための蕎麦乾麺とつゆを持ってきてくれた。光は見なかったらしい。でも、今年のクリスマスはにぎやかだったね。そんなことを言って笑って心がほどけて、ホッとしたのだった。




