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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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3-4

 18時。


 部屋の中は、すっかり夜の気配に変わっていた。外の雪は消えてしまった。昼のうちにだ。でも、道路の端には白い塊が積み上がり、街灯に照らされてぼんやりと光っている。私はテーブルの上にスマホをセットした。リングライトを点ける。画面に、自分の顔が映る。


「……よし」


 深く息を吐く。少しだけ、緊張していた。昨日とは違う。今日は見られている。そういう感覚が、はっきりとある。でも、やると決めた。私は画面をタップした。配信の開始だ。


「こんばんは、オツです」


 いつもと同じように、少しだけ笑って言う。――その瞬間だった。コメント欄が、一気に流れ始めた。速い。明らかに、いつもと違う速度だ。


 ――「きた!!」

 ――「待ってた!」

 ――「昨日の人だ!」

 ――「本物!?」

 ――「やばい来た!!」


「え……、ちょっと待って、速い速い」


 思わず笑ってしまう。視聴者数を確認する。


「……え?」


 桁が、違った。普段の何倍もある。


「え、ちょっと待って、何これ……、すごくない?」


 自分でも驚いている声が、そのまま配信に乗る。コメントは止まらない。


 ――「昨日の光なに!?」

 ――「あれ本物?」

 ――「CGじゃないよね?」

 ――「彼氏どこ!?」

 ――「またやって!!」


「ちょっと落ち着いて……」


 私は軽く手を振る。


「昨日のやつね、私もよく分かってないの」


 正直に言う。コメントがさらに加速する。


 ――「嘘でしょ」

 ――「絶対知ってるでしょ」

 ――「彼氏関係あるよね?」

 ――「あの人何者?」


 そのときだった。背後で、気配が動く。ルークだ。私はほんの一瞬だけ、そちらに視線を向ける。彼は静かに、少し後ろに立っていた。コメントが、一斉に反応した。


 ――「いた!!!」

 ――「彼氏!!」

 ――「きたきたきた」

 ――「この人誰!?」

 ――「やっぱり違和感ある」


「……あー、うん」


 私は少しだけ苦笑する。


「昨日もいたけど、この人ね」


 軽く手で示す。


「ルーク・ヴェイルよ」


 名前を出した瞬間、コメントが跳ねた。


 ――「ルーク!?」

 ――「外国人?」

 ――「俳優?」

 ――「雰囲気やばい」

 ――「なんか怖いんだけど」


「怖くないから」


 思わず即答する。ルークは、画面の方を見て、小さく手を振った。


「こんばんは」


 静かな声だ。それだけなのに、コメント欄が爆発した。


 ――「声やばい」

 ――「低音イケボ」

 ――「絶対普通じゃない」

 ――「なんか空気違う」

 ――「この人関係あるでしょ」


「関係あるっていうか……、まあ、あるけど」


 曖昧に答える。ここで全部は言えない。言ったら、終わる。そんな気がした。


「今日はね、普通に雑談しようと思ってたの」


 話題を変える。コメントが少し落ち着く。その流れの中で、一つ、妙なコメントが目に入った。


 ――「さっきからノイズ入ってない?」


「え?」


 思わず画面を見る。音声は普通だ。でも、コメントは続く。


 ――「今もなんか聞こえた」

 ――「ザーって音」

 ――「電波悪い?」


 私は一瞬、言葉を失った。ルークを見る。彼は、無言で首を横に振った。その意味は――“違う”。電波じゃない。じゃあ、何だろうか。

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