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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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3-3

 社長とは会社の中でプライベートの話をすることがあるが、踏み込んだ内容はなかった。しかし、社長は兄から聞いていることがあるようで、私のことをよく知っていた。しかし、私は社長のプライベートはよく知らない。一人暮らしであること、兄弟はいないということ。それぐらいだ。


 社長は続けて言った。


『君のことは信頼できると言われている。だから、頼みたい。ルーク君と一緒に来てもらってもかまわない。仕事の都合がつけばでいい。男の元に一人で行くのは気になるだろうから、彼も一緒だといいだろう』


 はっきりとした言い方だった。私は、少しだけ迷った。けれど、答えは決まっていた。


「分かりました。お引き受けします」

『助かる』


 短く、それだけ言う。


『明日の午前中に来てくれればいい。詳しいことは、そのときに』

「はい」

『あと、買い物だが――』

「はい」

『恵介から直接、リストを送らせる』

「分かりました」

『頼む』


 それだけ言って、通話は切れた。私はスマホを見つめたまま、しばらく動かなかった。


「……忙しくなりそうね」


 小さく呟く。そのとき、後ろから声がした。


「仕事?」


 ルークだ。振り返ると、いつものようにそこにいる。


「うん。明日ね、社長の家に行くことになったの。あなたもよければ一緒にって」

「へえ」


 興味深そうに首を傾げる。


「恵介君よ。社長の遠縁の。スキャンダルで大変だから、面倒をみるんだって」

「人間社会は複雑だね」

「ほんとにね」


 苦笑する。そのとき、スマホが再び震えた。メッセージ通知だ。


「……来た」


 恵介君からだった。簡潔な文面だ。


『卵、レタス、リンゴ、蕎麦(乾麺)お願いします』

「……これだけ?シンプルすぎない?」


 思わず声が漏れる。ルークが横から覗き込む。


「健康的だね」

「健康的すぎるのよ」


 ため息が出る。社長から聞いている。恵介君は、かなりストイックな食生活をしているのだと。家で食べるのは、ゆで卵に、ちぎっただけのレタスばかりだそうだ。リンゴは丸かじりだ。それだけでは栄養が足りないから、普段はヘルシー系の外食で補っているらしい。でも、今は外に出られない。


「料理、作るしかないわね」

「できるの?」

「できるわよ」


 即答する。とはいえ、恵介君本人も料理はできる。ただ、以前包丁で怪我をしてから、事務所に止められているらしい。


「……蕎麦はお兄ちゃんに頼みましょう。キシヤマ製麺の物がいいと思うから」

「そうだね。新しい商品が出たんじゃなかったっけ?つゆもセットで届けてあげるといいよ」

「そうね。お兄ちゃんに連絡を取るわ。もう何かを用意しているかもしれないけど」


 誰かの役に立てる。それは、少し前の自分にはなかった感覚だ。自然と張り切ってしまう。


「じゃあ、今日のうちに準備しようか」


 ルークが言う。


「買い物もあるし」

「……そうね」


 私はスマホを握り直した。やることが増えた。でも、それが、少し嬉しいと思っている自分がいる。窓の外は太陽の光が差し始めていた。昨夜のような気温とは打って変わって晴天に恵まれて、午後には雪が解けるだろうというほどの陽気らしい。窓の外を見ると、少し暑いぐらいであり、たしかにいい天気なのだった。

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