表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
150/183

13-13

 一方で、アレクは地球のお金を用意していた。保木君のところで暮らすには、それが必要だと言っていた。地球人に溶け込むためだし、生活もしないといけない。私はそれを聞き、ルークもお金を用意できるのだと察した。でも、ルールがあるのなら仕方がないのか。ルークは店先に出ているメニューの看板を見ている。


「美味しそうだ。でも、今は入らない」

「それが正解よ」


 そこで、アレクもお腹をさすりながら笑う。


「僕も今は無理ですね」

「夕飯までにはお腹を空かせないと」


 保木君も同意した。今夜はディスレクトサイドゼロのコンサートが終わった後、ホテルへ戻る前に軽く何か食べようという話になっている。今ここで食べ過ぎるわけにはいかなかった。


「帰る前にお土産を見てもいいかもね」


 私が言うと、兄が頷く。


「その方が荷物にならなくていい」

「最後に寄りましょう」


 そう話しながら施設を抜ける。建物の先には、石造りの階段が続いていた。


「海へ下りるんだね」


 ルークが先を覗き込む。


「ええ」


 私は頷いた。


「神社は浜辺の先にあるの」


 ゆっくりと階段を下りていく。すると、目の前が一気に開けた。


「わあ……」


 思わず息をのむ。青く輝く太平洋。白い波が砂浜へ打ち寄せ、その音が心地よく響いている。浜辺には多くの観光客が思い思いに過ごしていた。波打ち際を歩く人。砂浜へ座って海を眺める人。写真を撮る人。子どもたちは波が来るたびに歓声を上げている。


「きれい」


 私は自然と微笑んだ。


「テレビで見るよりずっと広いわ」

「本当だ」


 ルークも目を細める。


「海がどこまでも続いている」


 砂浜の脇にはアスファルトで整備された遊歩道が延びている。それは桂浜の先端へ向かって続いていた。私はその先へ目を向ける。


「あった」


 遠くに赤い建物が見える。鮮やかな朱色が緑の中でひときわ目立っていた。


「あれが海津見神社よ」

「龍王宮とも呼ばれている神社ですね」


 保木君がパンフレットを見ながら言う。


「そう」


 私は頷いた。


「海の神様が祀られているの」

「海らしい場所だね」


 ルークが穏やかに笑う。すると、海風が少し強く吹き、私の帽子が飛ばされそうになる。私は慌てて帽子を押さえた。


「今日は風も気持ちいいわね」

「暑いが、この風があるだけで全然違う」


 兄も海を眺めながら言った。私たちは歩道へ入り、ゆっくりと海岸線を歩き始める。左にはどこまでも続く青い海。右には松林が広がる。波の音を聞きながら歩いていると、時間までゆっくり流れているような気がした。これから参拝する神社では、今回の旅行が最後まで無事に過ごせることをお願いしよう。そう思いながら、私は朱色に輝く社殿を目指して、一歩ずつ歩みを進めた。


 波の音を聞きながら遊歩道を歩いていると、前方に楽しそうな声が響いてきた。


「人が集まっているわね」


 私が視線を向けると、建物の入り口が見えてきた。


「あれが桂浜水族館だ」


 兄が指さす。入口には多くの観光客が集まり、家族連れやカップルがチケットを手に笑顔で写真を撮っていた。小さな子どもたちは、水族館の看板を見るだけで興奮している。


「楽しそう」


 私は思わず微笑んだ。


「帰りにゆっくり見よう」


 ルークも頷く。


「アシカもいるんだよね」

「そうよ。ウミガメも人気みたい」

「楽しみだ」


 水族館のすぐ隣には、お土産ショップが並んでいた。高知限定のお菓子や坂本龍馬のグッズ、海をモチーフにした雑貨などが店先いっぱいに並べられている。風鈴が風に揺れ、涼しげな音を立てていた。


「帰りにここも見たいですね」


 保木君が店内を覗き込みながら言う。


「そうね。やっぱり最後がいいわね」


 私も賛成した。まだ歩き回る予定なのだから、今は身軽な方がいい。さらに歩いていくと、小さな軽食店が見えてきた。店先では揚げたてのポテトフライが販売されている。ジュワッという油の音とともに、香ばしい匂いが辺りへ漂ってきた。


「またいい匂い……」


 ルークが足を止める。私は思わず笑ってしまった。


「あなた、本当に匂いに弱いのね」

「お腹はいっぱいなんだけど」


 ルークは少し照れたように笑う。


「匂いだけで食べたくなる」

「その気持ちは分かるわ」


 私も店先を見る。ポテトフライのほかにも、ソフトクリームやかき氷、冷たいジュースなど、夏らしいメニューが並んでいた。


「飲み物もあるわね」

「神社の帰りに休憩してもいいかもしれない」


 兄が提案する。


「それなら、腹も落ち着いているだろう」

「賛成」


 ユリウスさんも笑顔で頷いた。その時だった。放送が流れ始めた


『ご来園の皆様にお知らせいたします。桂浜は遊泳禁止となっております。海へ入ることは大変危険ですので、おやめください。皆様のご理解とご協力をお願いいたします』


 落ち着いた女性の声が、浜辺全体へ響いた。私は思わず海へ目を向ける。


「遊泳禁止なのね」

「桂浜は波が高い日も多いからな」


 兄が説明してくれた。


「見た目は穏やかでも、急に深くなったり流れが速かったりするんだ」

「なるほど」


 私は青く広がる海を見つめた。遠くから眺めていると、とても穏やかで入りたくなるような海に見える。けれど、美しい景色だからこそ、危険な場所でもあるのだろう。波は絶え間なく砂浜へ打ち寄せ、白い飛沫を上げていた。


「見る海なんだね」


 ルークが静かに呟く。私は頷いた。


「ええ。今日は景色を楽しんで、神社へお参りして、水族館も楽しみましょう」


 そう言うと、みんなも笑顔で頷き、私たちは再び海津見神社を目指して歩き始めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ