表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
149/182

13-12

 何でもない時には見ることができるのに、探したらいないなんて。私は目を細めて、遠くの方を見た。


「うーーん。見えないものね」

「普通は見えないよ」


 ルークは楽しそうにシャッターボタンを押した。

 

 カシャッ。

 

 もう一枚。


 カシャッ。


 角度を少し変え、また撮影する。


「写るの?」

「分からない」


 ルークは笑いながら答えた。


「写らないかもしれない」

「それでも撮るのね」

「こういうのは記念だから」


 私は思わず笑ってしまう。


「あなた、本当に楽しそう」

「楽しいよ」


 ルークは少年のような笑顔を浮かべた。


「あとで拡大したら、光が写っていることもあるから」

「なるほど」


 保木君も興味深そうにスマートフォンの画面を覗き込む。


「そんなことがあるんですね」

「たまにね」


 アレクが穏やかに答えた。


「人間の目には見えなくても、カメラには光だけ写る場合があります」

「不思議ね」

「向こうもこちらを撮っているかもしれないし」


 ルークがさらりと言った。


「えっ?」


 私が振り向く。


「撮られているの?」

「たぶん」


 ルークは悪びれる様子もなく頷いた。


「警備記録としてね」

「そういうことなら安心だけど」

「紫乙が坂本龍馬像の前で笑っていたから、記録に残ってるかも」

「ちょっと恥ずかしいわ」


 私が苦笑すると、ルークはまた一枚、空へ向かってシャッターを切った。カシャッ。その姿は、子どものように生き生きとしている。私はその横顔を見ながら微笑んだ。宇宙船が写るかどうかは分からない。でも、こうして旅先で空を見上げ、目には見えない誰かに思いを馳せながら写真を撮る時間も、きっと私たちらしい旅の思い出になるのだろう。


 ルークは最後に満足そうに画面を確認すると、自撮り棒をたたんだ。


「これでよし」

「電池は大丈夫?」

「もちろん」


 ルークはリュックサックのポケットを軽く叩いた。


「モバイルバッテリーも持ってきたから、一日中撮っていても平気だよ」

「準備万端ね」

「旅行だからね」


 その一言に、私は思わず笑顔になった。ふと隣を見ると、兄がスマートフォンを構え、私たちの様子を静かに撮影していた。


「お兄ちゃん、いつの間に」

「自然な表情が一番いいからな」


 兄は笑いながらシャッターを切る。カメラの先には、ルークが空を見上げながら写真を撮る姿と、それを不思議そうに眺める私たちの姿が収まっているのだろう。


「後で送る」

「ありがとう」


 私は微笑んで答えた。改めて考えると、不思議な顔ぶれだった。私と兄とユリウスさんは地球人。ルークはアルタイル星人。アレクはベガ星人。そして、兄とユリウスさんはハトホルの職員である。それぞれ生まれも立場も違う6人が、こうして桂浜で笑い合いながら観光を楽しんでいる。もし数年前の私にこの光景を見せたとしても、きっと信じなかっただろう。地球の観光地で、異なる星の仲間たちと肩を並べ、旅行を楽しむ日が来るなんて、想像したこともなかった。


 兄は撮った写真を確認しながら満足そうに頷く。


「いい写真だ」

「どれどれ?」


 私が画面を覗き込むと、そこには自然な笑顔の私たちが写っていた。青空の下、坂本龍馬像を背に、それぞれが思い思いの表情を浮かべている。私はその一枚を見ながら、胸の中が少し温かくなった。きっと、この写真は何年たっても、大切な思い出として残り続けるのだろう。


 私たちは坂本龍馬像の前を後にし、来た道をゆっくりと引き返した。木陰を抜けるたびに潮風が頬を撫で、さっきよりも少しだけ暑さが和らいだように感じる。


「次は神社ね」


 私が言うと、兄が案内図を確認しながら頷いた。


「ああ。海のテラスを通って行くと近い」

「楽しみ」


 私は自然と足取りが軽くなる。坂を下り切ると、目の前に新しい建物が姿を現した。海のテラスだ。ルークが周囲を見回す。木材を多く使った開放感のある建物で、店内の様子がよく見えた。外にはテラス席も設けられていて、海風を感じながら食事を楽しめるようになっている。


「きれいな建物ね」


 私が感心すると、ユリウスさんも頷いた。


「観光地らしい雰囲気だ」


 施設の中へ入ると、一気に活気が伝わってきた。昼のピークは過ぎているはずなのに、飲食店の前にはまだ多くのお客さんが並んでいる。家族連れ。カップル。海外からの観光客らしい人たち。どの店も笑顔で賑わっていた。


「まだこんなに混んでいるのね」


 私は驚きながら歩く。


「夏休みだからかな」


 保木君が周囲を見回した。


「よさこい祭りの期間でもありますし」

「両方だろうな」


 兄が笑う。店先を通るたびに、おいしそうな香りが鼻をくすぐる。焼きたてのハンバーガー。炭火で焼いた魚。揚げたての天ぷら。ソフトクリームやジェラートを持って歩く人も多い。


「いい匂いだ……」


 ルークが立ち止まりそうになる。私は思わず笑った。


「また食べる気?」

「匂いだけ」

「さっき芋天を食べたいって言っていたものね」

「龍馬バーガーも」

「まだ言ってる」


 私が苦笑すると、ルークは笑った。今度は何を買ってもらおうかと言っている。本当にお金を持っていない。でも、のんびりしている。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ