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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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147/182

13-10

 14時半。


 タクシーに揺られること約25分。私たちは桂浜公園に到着した。車はバス乗り場のあるロータリーで静かに停車し、私たちは順番に外へ降りる。その瞬間、ふわりと海風が頬を撫でた。


「気持ちいい……」


 思わず深呼吸をする。潮の香りが鼻をくすぐり、すぐ近くに海があることを感じさせた。


「海の匂いだね」


 ルークも嬉しそうに空を見上げる。


「高知へ来たって実感する」


 私たちの目の前には広い駐車場が広がり、観光バスや乗用車が次々と出入りしていた。バス停には待合室も設けられている。建物自体は少し年季が入っていて、長くこの場所を見守ってきたことが伝わってくる。しかし、中はきれいに整備されていた。時刻表は新しく、待合室の椅子も清潔で、観光客が利用しやすいよう手入れされている。


 その時だった。


「紫乙、あれ」


 ルークが一台のバスを指差した。ちょうど観光バスがゆっくりとロータリーへ入ってくるところだった。


「MY遊バスだ」


 車体には大きくその名前が描かれている。


「あれ、高知駅から出ている観光バスよね」

「うん」


 ルークが頷く。


「市内の観光名所を巡って、最後に桂浜へ来るコースなんだ」


 乗客が次々と降りてくる。家族連れや夫婦、友人同士の旅行客など、みんな楽しそうな表情を浮かべていた。


「今度、高知へ来る時は、あれに乗って市内を回ってみたいな」

「いいわね。四国八十八か所のお寺にも立ち寄るコースがあるんでしょう?」

「竹林寺だよ」


 ルークはすぐに答えた。


「すぐ近くに牧野植物園もあるから、一緒に回れそうだ」

「素敵ね」


 少し想像するだけで楽しくなる。高知にはまだまだ行きたい場所がたくさんある。


「明日、乗る?」


 私が冗談半分で聞くと、ルークは少し考えてから苦笑した。


「いやあ……」

「どうしたの?」

「明日は昼までゆっくりしたい」

「夜に備えて?」

「うん」


 ルークは真面目な顔で頷いた。


「夜のよさこい祭りが本番だからね」

「もう、体力のない宇宙人なんだから」


 私は笑いながら肩を軽く叩く。


「いいわよ。無理をして疲れるより、あなたのペースで楽しんだ方がいいもの」

「ありがとう」


 ルークも笑った。


「また高知へ来る理由が残るのも楽しみだしね」

「そうね」


 今回だけですべてを回ろうとは思っていない。明日も、ひろめ市場で昼食を食べた後、市内の神社を二か所参拝し、よさこい祭りの演舞場をいくつか巡る予定だ。市内だけでも見どころは十分ある。夏の暑さも考えると、あまり詰め込みすぎない方がいい。夜は本部競演場でよさこい祭りを観覧する。そのためにも体力は温存しておきたい。それに、今夜はディスレクトサイドゼロの高知公演が待っている。私は思わず笑ってしまった。


「今から体力を残しておかないとね」

「そうだね」


 ルークも頷く。


「コンサートで全部使い切りそうだ」

「でしょう?」


 私は楽しそうに話を続ける。


「ディスレクトサイドゼロのライブって、ヘヴィメタルとハードロックでしょう?腕を振り上げて、リズムに乗って、ヘドバンして盛り上がるのが定番なんだから。お兄ちゃんたちはやらないと思うけど」


 兄は苦笑した。


「見る専門かな」

「僕も」


 ユリウスさんも笑う。


「でも、紫乙さんはやりそうだ」

「もちろん!」


 私は胸を張った。


「せっかくなんだもの。一度くらい挑戦してみたいじゃない」

「明日、筋肉痛になりますよ」


 保木君が笑う。


「それでもいいわ」


 私も笑い返した。


「旅行なんだから、思い切り楽しみたいもの」


 すると、ルークが前方を指差した。


「あれが『海のテラス』だ」


 視線の先には、新しく整備された建物が見える。木の温もりを感じるデザインで、おしゃれな雰囲気だ。


「最近できた施設なんだよ」

「きれいね」


 私は思わず見入った。


「ここでランチを食べても良かったかもしれないわ」

「今はさすがに入らないけど」


 ルークが笑う。


「でも、芋天があったら食べたい」

「また?」

「うん。あと、龍馬バーガーも気になる」

「食べたい物が多いのね」

「旅行だから」


 私は苦笑した。確かに今はお腹がいっぱいだ。ひろめ市場でたくさん食べたばかりなのだから当然である。隣ではアレクがお腹をさすっていた。


「少し食べ過ぎました。ズボンがきついです」


 その言葉にみんなが笑う。保木君も意外なくらいたくさん食べていた。細身だから小食なのかと思っていたが、まったく違った。一方で兄とユリウスさんは少し控えめだった。


「ここで何か食べるつもりだったんでしょう?」


 私が聞くと、兄が笑った。


「ああ。カツオバーガーが気になっていた」

「やっぱり」


 私は施設案内図を思い出した。


「飲食店もたくさんあるものね」

「少し歩いてお腹を空かせてからでもいいかな」


 兄がそう言うと、私は頷いた。


「それなら先に坂本龍馬像へ行きましょう。ここから歩いて7分くらいだったわよね」

「そうだな」


 兄も賛成する。私たちの目的は、桂浜の海を見ること。坂本龍馬像の前で記念写真を撮ること。そして、桂浜の先に鎮座する海津見神社である龍王宮とも呼ばれる神社へ参拝すること。その後は桂浜水族館へ立ち寄り、桂浜を満喫する予定だ。2時間ほどの滞在になるだろう。海風を受けながら、私たちは期待に胸を膨らませ、桂浜の散策へと歩き始めた。

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