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私はヨールさんたちの方へ視線を向けた。すると、兄がおや、という表情を浮かべる。やっぱり分かるのだと思った。
「こちらの方はアルタイルから来た守護者なんですって。地球人の方が料理を買いに行っているところなの」
私がヨールさんたちを紹介すると、兄は穏やかに会釈をした。
「そうなのか。ユリウス君が今、明神亭へ塩たたきを買いに行っているんだけど、そこにもアルタイルの人がいたよ。プレアデス星団の人たちと知り合いみたいだった。今日の祭りは、いろいろな星の人たちが来ているみたいだな」
「やっぱりそうなのね」
私は玲司さんから聞いた話を思い出した。よさこい祭りの期間中になると、地元の新聞社には宇宙船らしき写真が毎年数多く寄せられるという。白い光が空に浮かんでいたり、丸い物体が隊列を組むように飛んでいたりと、さまざまな目撃情報が集まるそうだ。中でも、本部競演場の上空に白い円盤型の宇宙船がいくつも集まっていたという証言は毎年のようにあり、地元のUFO研究家の間では、この時期になると高知へ観測に訪れる人も少なくないという。
「目撃情報が多くて、新聞でも話題になることがあるんですって」
「これだけ集まっているなら、目撃されても不思議じゃないな」
兄が笑いながら言った。私も市場の賑わいを改めて見渡す。観光客であふれるこの市場の中にも、私たちが気付いていないだけで、異星から来た人たちが何人も紛れているのかもしれない。そう考えると、不思議な高揚感が胸に広がった。私は玲司さんからその話を聞いた時から、一度このよさこい祭りを自分の目で見てみたいと思っていた。
地球の祭りを楽しむ人々と、その様子を静かに見守る異星の人々。その二つの世界が、何気ない日常の中で自然に交わっている。そんな光景が、この高知には確かに存在しているのだと思うと、この旅がますます貴重なものに感じられた。その時だった。
「お待たせ」
ユリウスさんが大きなトレイを抱えて戻ってきた。トレイの上には、藁の香ばしい香りを漂わせる塩たたきが並んでいる。
「すごい……」
私は思わず声を漏らした。厚めに切られたカツオは艶やかで、表面には藁焼きの香ばしい焼き色が付いている。添えられているのは玉ねぎのスライス、にんにく、みょうが、大葉、それに青ねぎ。高知らしい盛り付けだった。
「明神亭、結構並んでた」
ユリウスさんが苦笑する。
「でも回転は早かったよ」
「ありがとう」
兄も頷いた。
「これで主役はそろったな」
すると、その後ろから保木君も両手いっぱいに料理を抱えて戻ってきた。
「お待たせしました」
トレーには焼き餃子、ウツボの唐揚げ、青さのりの天ぷらが並んでいる。どれも揚げたてらしく、湯気が立っていた。
「おお、すごい」
ルークが目を輝かせる。
「まだありますよ」
保木君が笑う。その直後、最後に戻ってきたアレクが、大きな土佐巻きと、山のように積まれたいも天を持って現れた。
「甘いものも必要でしょう」
「さすがアレク」
私が笑うと、アレクも照れくさそうに笑った。
「旅ですからね」
6人で料理をテーブルへ並べ始める。あっという間に長テーブルが埋まっていく。藁焼きの香り。揚げ物の香ばしい匂い。酢飯の爽やかな香り。そのすべてが混ざり合い、食欲を刺激していた。
「豪華ね」
私は思わず笑みを浮かべた。
「旅の初日からこんなに食べられるなんて」
「いただきますか」
兄が手を合わせる。
「いただきます」
私たちも続いた。最初に箸を伸ばしたのは、やはりカツオのたたきだった。一切れ口へ運ぶ。藁焼きの香ばしさが最初に広がり、その後からカツオの旨味が一気に押し寄せる。玉ねぎのみずみずしさと塩の加減も絶妙だった。
「おいしい!」
私は思わず声を上げる。
「やっぱり本場は違うわ」
「うん」
ルークも感心したように頷く。
「東京で食べたのとは全然違う」
「焼きたてだからでしょうね」
保木君も笑顔になる。
「藁の香りがすごいです」
兄が満足そうに頷いた。
「冬に来た時も思ったけど、やっぱりここは外せないな」
ユリウスさんも塩たたきを一口食べ、目を細める。
「酒が欲しくなる」
「禁酒しているんでしょう?」
私が笑うと、ユリウスさんも苦笑した。
「今日だけは飲んでもいいかなって思ったんだ。アレクと保木君も飲むし」
たしかに二人の前にはビールがある。兄とユリウスさんと私とルークはウーロン茶だ。そして、今度はウツボの唐揚げへ箸を伸ばす。衣は軽く、中は意外なほど柔らかい。
「ウツボって初めて食べた」
ルークが驚いたように言う。
「もっと硬いと思ってた」
「私も最初はそう思ったわ」
「白身魚みたいですね」
保木君も感心している。その隣ではアレクが土佐巻きを頬張っていた。
「これはまた面白いですね」
「にんにくが効いてる」
「高知らしい味ですね」
市場のあちこちからも、おいしいという声が聞こえてくる。周囲のテーブルでも観光客たちが笑顔で料理を囲み、写真を撮ったり乾杯をしたりしていた。その賑やかな空気までが、この料理をさらにおいしく感じさせる。




