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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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140/182

13-3

 12時半。


 私たちはホテルから歩いて10分ほどの場所にある、ひろめ市場へやって来た。昼時ということもあり、市場の中は大勢の観光客で賑わっている。県外から来た人だけではない。地元の人らしいグループや家族連れの姿も多く、店先からは威勢のいい呼び込みの声が響いていた。


 市場内には約60店舗が軒を連ね、カツオのたたきや土佐料理、揚げ物、餃子、スイーツまで、さまざまな店が屋台のように並んでいる。ひろめ市場はフードコート形式になっており、それぞれの店で料理を購入し、市場中央に並ぶテーブルと椅子で自由に食事を楽しめる。席数はかなり多い。それでも、この時間帯はほぼ満席だった。


「すごい人ね」


 私は思わず周囲を見回した。テーブルの間を料理を持った人たちが行き交い、あちこちから楽しそうな笑い声が聞こえてくる。お祭りの日らしい活気だった。


「席、空くかな」


 ルークが少し心配そうに言う。


「回転は早いから大丈夫だと思うわ」


 そう答えたものの、内心では少し不安だった。6人で座れる席を見つけるのは簡単ではない。そこで私たちは、まず席を確保することを優先した。市場内をゆっくり歩きながら空席を探していると、ちょうど食事を終えた6人組が席を立った。


「空いた!」


 私は思わず声を上げる。すぐにルークがテーブルへ向かい、私も続いた。


「運がよかったね」


 ルークが笑う。


「本当に」


 私もほっと胸をなで下ろした。待ち始めてから15分ほどだった。これだけ混雑している中で6人席を確保できたのだから、かなりタイミングが良かったのだろう。


「じゃあ、料理を買ってきますね」


 保木君が言う。


「僕たちで回ってきます。人数が多い方が早そうですから」


 すると、兄も笑顔で口を開いた。


「この市場は冬にも来たことがあるから、どの店に何があるか大体分かる」

「さすが、お兄ちゃん」

「任せてくれ。ユリウス君、一緒に行こう」

「ああ」


 ユリウスさんも頷く。こうして兄、ユリウスさん、アレク、保木君の4人が料理を買いに向かうことになった。土地勘のある兄が案内役になれば、効率よく店を回れる。私は安心して送り出した。席に残ったのは、私とルーク2人だった。私はテーブルに肘をつきながら、市場の活気を眺める。店先では藁焼きの炎が勢いよく上がり、香ばしい香りが風に乗って流れてきた。


「いい匂い」


 ルークが小さく呟く。


「お腹が空いてきた」

「飛行機に乗ってから何も食べていないものね」

「うん」


 私は笑いながら、兄たちが何を買ってくるか思い浮かべた。カツオのたたきは二皿。高知へ来たら外せない料理だ。それに餃子を二人前。ウツボの唐揚げ。青さのりの天ぷら。土佐巻き。そして、高知名物のいも天。6人で囲めば、テーブルいっぱいに料理が並ぶだろう。考えただけで楽しくなってくる。


「豪華なお昼になりそうね」


 私がそう言うと、アレクも嬉しそうに笑った。


「全部食べ切れるでしょうか」

「きっと大丈夫よ」


 そんな話をしていると、一人の女性が近くを見回しながら歩いてきた。私と同じくらいの年齢だろうか。困ったような表情で、空席を探している。ちょうどその時、私たちのすぐ近くの三席が空いた。


「どうぞ」


 私は女性に声をかけた。すると、女性はぱっと表情を明るくした。


「ありがとうございます ちょうど空いたなんて、本当に助かりました」

「よかったですね」


 女性は何度も頭を下げながら席へ座る。手に持っていたペットボトルのお茶を一口飲み、大きく息をついた。


「これで一安心」


 そう呟いた次の瞬間だった。私は思わず目を見開いた。女性の身体から、一人の女性が静かに姿を現したのである。


「……!」


 私は驚いて息をのむ。ルークが私の中から現れた時と、まったく同じだった。透き通るような雰囲気をまとった、美しい女性。長い髪を揺らしながら、穏やかな笑みを浮かべている。


「ヨール、待っていて。私が買ってくるから」

「ええ。待っているわ」


 女性はそう言い残し、料理を買いに歩いていった。席には、ヨールと呼ばれた女性だけが残る。すると、ヨールさんは、私たちへ柔らかく微笑みかけた。ルークとアレクが静かに会釈を返す。


「知り合いなの?」


 私が小声で尋ねると、ルークが頷いた。


「あの人はアルタイルから来た守護者だよ」

「やっぱり……」


 私が驚いていると、今度は一人の男性がこちらへ歩いてきた。黒髪を軽くパーマで整えた、おしゃれな雰囲気の男性だった。


「イザヤ」


 ヨールさんが穏やかに呼びかける。


「ちょうど、そちらの方が席を見つけてくださったの」

「そうでしたか」


 男性は私たちへ軽く頭を下げた。


「ありがとうございます。おかげで助かりました」

「いえ、ちょうど空いたところだったので」


 私も頭を下げ返す。こうして普通の観光客の中に自然に溶け込んでいる守護者たちは、案外、すぐ近くにいるものなのだと実感した。するとその時、兄が大きな皿を持って戻ってきた。


「お待たせ」


 手には、やいろう亭で買ってきたカツオのたたきの盛り合わせがある。


「お兄ちゃん、ありがとう」

「これぐらい何でもない。それより、店の客の中にプレアデス星団の人たちがいたぞ」

「そうなの?」


 私は少し驚いた。兄はハトホルの力が備わっており、異星人を見つけることができる。頭の中に、どこの所属の団体なのか情報が入ってくるそうだ。それは当たっているそうで、ルークが、転生後もハトホルの力を忘れていない例だと言っていた。

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