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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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13-2

 私たちの先を行くのは、キャリーケースを持った旅行客たちだ。高知に帰省した人もいるだろう。後ろを走る道路を大型バスが通り過ぎていく。色とりどりの衣装を着た奢り子たちを乗せたバスだ。市内に数か所ある演舞場で踊るため、移動はバスになるらしい。はりまや橋でも踊り子を見かけたが、このホテルまで来ると、その姿はない。演舞場へ移動しているころだ。


「立派なホテルだね」


 ルークが見上げる。


「祭りの期間だから、かなり前から予約していたの」

「人気なんだね」

「ええ。この時期はすぐ満室になるのよ」


 私たちは自動ドアをくぐり、涼しいロビーへ入った。冷房の効いた空気に包まれ、ほっと息をつく。


「生き返る……」


 思わず呟くと、アレクが笑った。


「さっきまで暑かったですからね」


 ロビーには、祭りのパンフレットや観光案内が並び、チェックインを待つ宿泊客が何組もいた。海外からの旅行者も多く、英語や中国語が聞こえてくる。フロントスタッフも慣れた様子で次々と対応していた。順番が来ると、私は代表して予約名を伝える。


「永山です」


 スタッフがすぐに予約を確認し、にこやかに微笑んだ。


「永山様ですね。二泊で、ツインルームをご用意しております」


 私は頷いた。


「お願いします」


 手続きは思っていたよりもスムーズだった。宿泊カードへ記入し、ルームキーを受け取る。


「お部屋は7階でございます」


 スタッフが案内図を差し出した。私とルーク、保木君とアレク、兄とユリウスさんの組み合わせになる。


「ありがとうございます」


 ちょうどその時だった。ロビーの反対側から兄とユリウスさんが歩いてきた。


「紫乙」


 兄が手を振る。


「チェックインは終わった?」

「今、ちょうど終わったところだ」


 隣ではユリウスさんが穏やかに笑っていた。


「荷物を置いたら昼食だな」

「私たちはひろめ市場にするわ。一緒にどう?」


 私が言うと、兄は頷く。


「ユリウス君ともそうしようと言っている。1時間後くらいでいいか?」

「ええ。それぐらいなら十分よ」


 こうして、それぞれルームキーを受け取り、エレベーターへ向かった。二泊三日の高知旅行。その始まりに、私の胸は期待でいっぱいになっていた。


 エレベーターに乗り込むと、静かに扉が閉まった。館内には落ち着いた音楽が流れている。私とルーク、そして保木君とアレクは、それぞれキャリーバッグを並べ、七階へ向かう表示を眺めていた。


「祭りの期間だから混んでいるかと思っていましたけど、意外とスムーズでしたね」


 保木君がそう言うと、私は頷いた。


「ホテルの人も慣れているのよ。この時期は毎年たくさんのお客さんが来るから」

「なるほど」


 アレクも感心したように頷く。


「海外から来ている方も結構いましたね」

「よさこい祭りを見に来る人も多いし、お盆休みも重なるからね」


 ほどなくしてエレベーターが七階へ到着した。廊下は明るく、大きな窓から高知市街が見渡せる。ルークが足を止めて窓の外を眺めた。


「景色がいい」


 私も隣へ並ぶ。遠くには高知城の緑が見え、その周囲に市街地が広がっていた。真夏の空はどこまでも青く、白い入道雲がゆっくりと流れている。


「夜になったらまた雰囲気が変わるわよ」

「街の灯りも綺麗そうだね」

「ええ」


 私は微笑んだ。4人で廊下を歩いていくと、部屋が並んでいた。


「私たちはここね」


 私はカードキーを取り出した。ルークと宿泊する部屋だ。そのすぐ隣の扉の前で、保木君も立ち止まる。


「僕たちはこちらですね」

「隣同士でよかった」


 アレクが笑顔を見せた。私はカードキーをかざす。小さな電子音が鳴り、ドアの鍵が開いた。


「失礼しまーーす」


 部屋へ入ると、ひんやりとした空気が迎えてくれる。


「わあ」


 思わず声が漏れた。室内は木目を基調とした落ち着いた雰囲気で、大きな窓の前には丸テーブルと椅子が二脚置かれている。ベッドはゆったりとしたツインタイプだった。


「思っていたより広いね」


 ルークが荷物を置きながら言う。


「ええ。ゆっくり過ごせそう」


 私はカーテンを開けた。窓いっぱいに夏の高知の景色が広がる。道路には車が行き交い、路面電車がゆっくりと走っていた。ホテルの前を歩く人たちの姿もよく見える。キャリーバッグを引く観光客、帽子をかぶった家族連れ、スマートフォンで写真を撮っている人たち。祭りの期間らしく、街には多くの人が集まっていた。


「観光客がたくさんいるわね」


 私が言うと、ルークも窓の外を見ながら頷いた。


「賑やかだ」

「この時期は一年で一番人が集まるからね」


 その時、部屋のドアがノックされた。


「紫乙さん」


 保木君の声だった。


「はい」


 ドアを開けると、保木君とアレクが立っている。


「こちらの部屋も、とても綺麗でした」


 保木君が笑顔で言った。


「窓からの景色もいいですね」

「本当ね」


 私も頷く。すると、アレクが腕時計を見た。


「あと一時間ありますね」

「ええ」


 私は時計を確認した。


「お兄ちゃんたちとは1時間後にロビーで待ち合わせだから、それまで部屋で少し休みましょう」

「分かりました」


 保木君が頷く。


「荷物だけ整理しておきます」

「僕も少し休憩します」


 アレクも笑顔で答えた。


「それでは、また後ほど」

「ええ、ロビーで会いましょう」


 二人は軽く会釈をして隣の部屋へ戻っていった。私はドアを閉め、もう一度窓の外を見る。真夏の青空の下、高知の街は多くの観光客で賑わっている。これから兄とユリウスさんも合流し、ひろめ市場へ向かう。二泊三日の高知旅行は、まだ始まったばかりだった。

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