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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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 警察車両がもうすぐで到着するだろう。それでも私は落ち着かなかった。ルークは火事ではないと言った。警備船も確認に向かっている。だが、それとこれとは別だった。実際に無事な姿を見るまでは安心できない。


「佳代子さん」


 私は振り返った。


「黒崎家へ行きましょう」

「ええ」


 佳代子さんも同じ気持ちらしい。不安そうな表情だった。私たちは道路を渡る。ルークもついてくる。保木君も一緒だった。健吾さんは警察が到着するまで男のそばを離れられない。一貴さんと修輔君もその場に残っていた。


「状況が分かったら連絡します」


 私が言うと、一貴さんが頷いた。


「ああ、頼む」


 私たちは急いだ。まずは、敷地の手前に建っている夏樹君たちの家だ。すぐに異変を感じた。


「あ……」


 私は足を止めた。窓ガラスが割れている。一枚や二枚ではない。複数の窓が破損していた。ガラス片も見える。衝撃波の影響なのだろう。


「結構やられているわね……」


 佳代子さんが呟く。私は思わず本家の方を見ようとした。しかし、見えない。黒崎家の庭は広い。木々も多い。そのため、本家の屋敷の様子まではここから確認できなかった。見えるのは手前の家だけだ。煙も木々に遮られていて、どの辺りから上がっているのか分かりにくい。


「まずはこっちね」


 私は夏樹君たちの家の玄関へ向かった。インターフォンを押す。ピンポーン。返事はない。もう一度押す。やはり反応はなかった。


「留守かしら」


 佳代子さんが言う。


「本家の方に行っているのかもしれないわね」


 私もそう思った。今日は休日だ。みんなそちらへ集まっている可能性が高い。しかし、確認できない以上、不安は残る。私はスマートフォンを取り出した。


「夏樹君に電話するわ」


 発信する。呼び出し音が鳴る。一回。二回。三回――。


『もしもし!』


 夏樹君の声が聞こえた。私はほっと息を吐く。


「夏樹君!」

『紫乙さん!?』

「大丈夫なの!?」

『大丈夫だけど!』


 後ろが騒がしい。人の声がいくつも聞こえる。


「今どこ?」

『本家!』


 やはりそうだった。


「そっちにいたのね」

『うん!』


 夏樹君が答える。


『みんな本家に集まってる!』


 私は佳代子さんと顔を見合わせた。予想通りだったらしい。


「今、手前の家の前にいるの」

『えっ?』

「窓ガラスが割れているわ」

『そっちもかなり酷いんだ』


 夏樹君の声が聞こえる。


『爆音の直後に全部割れた』


 私は改めて家を見た。確かに被害は大きい。でも、建物自体は無事そうだった。


「怪我は?」

『今のところない!』


 私は胸を撫で下ろす。


「本当に?」

『本当!』


 その時だった。電話の向こうで聞き覚えのある声がした。私は思わず瞬きをする。


「……え?」


 今の声。聞き間違いではない。


「夏樹君」

『うん?』

「もしかして……」


 すると、夏樹君があっさり答えた。


『月島さんもいるよ。すごいんだよ。爆発音の直前に俺たちのことを床に伏せるように言ってくれてさ。その後で空が光って、何か落ちてきたって思ったんだ。隕石かもって言っているよ』


 私は驚いた。私のそばで、ルークが、兄の予知だと言った。


「みんな無事なの!?今、警察を消防を呼んだわ。あと、門の前で修輔君がナイフを持った男に襲われて、一貴さんが取り押さえたの。健吾さんも押さえているわ。襲われているときに何か落ちてきたの」

『え!?そっちに行くよ!黒崎さんが外に出たんだ。クレーターができているって言ってる』

「やっぱり。アレクが空から降ってくるのを見たのよ」

『こっちでも消防を呼んだよ』

「近所の人も呼んだと思うわ」


 そこで、私は今日の予定を思い出す。そうだ。今日はホワイトデーだった。兄とユリウスさんは夜に食事へ行く予定だと聞いていた。でも、まさかこの時間に黒崎家へ来ているとは思わなかった。


「ユリウスさんもいるの!?」

『いるよ』


 夏樹君が答える。


『さっきからずっといる』


 私は驚きながらも少し安心した。すると、電話の向こうで別の声が聞こえた。


『紫乙さん?』


 ユリウスさんだった。


「ユリウスさん!」

『僕なら大丈夫だよ。アンもアンドリューも、ユリウスも大丈夫だよ。月島君が、ユリウスのことを抱いていろっていうから、抱いていたんだ。それから、床に伏せた。お手伝いさんたちは奥のキッチンにいたから全員無事だよ。そっちはガラスは割れていないだ。月島君は分かっていたみたいだ』


 少し苦笑したような声だった。


『びっくりしたよ』

「そりゃそうでしょう!」

『本当にそうだよね』


 電話の向こうで誰かが何か言った。圭一さんかもしれない。少なくとも話せる余裕はあるらしい。それだけで安心できた。


「怪我はない?」

『ないよ』


 ユリウスさんが答える。


『みんな無事だ』


 私はようやく肩の力を抜いた。その時だった。ルークが道路の向こうを見た。少しして言った。


「警察と消防が来るよ」


 私は再び電話へ意識を戻した。夏樹君たちが外に出てくるそうだ。


『俺たち、そっちに行くから!男を取り押さえているんだろ!?怪我はないの?』

「一貴さんが少し手を切ったわ」

『やばい!すぐに行くよ』


 そして、夏樹君たちが外に出てきた気配がした。そして、言った。


『クレーターができてる!』


 私は言葉を失った。


『本当に落ちたんだ』


 夏樹君の声が聞こえる。


『隕石だよ』


 現実味がない。けれど、現実だった。人生は本当に何が起こるか分からない。

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