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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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 私は改めてアレクへ向き直る。答えは決まっている。ちゃんと考えて出す答えだ。


「じゃあ、私、申し込むわ」


 アレクの背筋がぴんと伸びた。


「はい!」

「支払いは体験共有プログラムを使いたいの」

「承知しました!」


 元気の良い返事が返ってくる。


「でも、前にも言った通り、私は腰が悪いからバンジージャンプは飛べないわ。その代わり、夏に高知へ行って、よさこい祭りを見てくることにするわ」

「ありがとうございます!」


 アレクの顔がぱっと明るくなった。


「その内容で承りました!」


 私は頷いたものの、ふと疑問が浮かぶ。よさこい祭りは分かる。でも、体験共有プログラムの利用者を見る限り、バンジージャンプを選ぶ人も多いらしい。なんとなく申し訳ない気もした。


「でも、いいのかしら」


 私が首を傾げる。


「バンジージャンプみたいな派手な体験じゃなくて」

「問題ありません!」


 アレクは即答した。


「大切なのは体験の価値ですから!」


 なるほどと、私は頷く。すると、ふと思いついた。


「そうだわ」


 私は隣に座るルークを見る。


「あなたなら、バンジージャンプを飛べるわよね?」


 ルークが嫌な予感を察したような顔をした。


「……何を考えているんだ?」

「ついでに飛びなさい」

「ついでって?」


 即座に返された。私は真面目な顔を作る。


「私に大事なことを黙っていた罰よ」

「理不尽だな」

「当然です」


 私は頷く。兄も少し笑っている。ユリウスさんまで肩を震わせていた。ルークは小さくため息をついた。


「別に飛ぶのは構わない」

「あら」

「守護者の身体能力なら問題ない」

「素直ね」

「でも」


 ルークはアレクを見る。


「僕が一人で飛んでも面白くないだろう?」


 その言葉に、アレクの目が輝いた。


「あっ!」


 嫌な予感しかしない。


「実はですね!」


 アレクが勢いよく身を乗り出す。


「僕も申し込みたいサービスがあるんです!」


 全員が一斉にアレクを見る。


「サービスを提供する側なのに?」


 保木君が呆れたように聞く。


「もちろんです!」


 アレクは胸を張った。


「社員割引がありますから!」

「あるのね……」


 私は思わず感心した。ベガ中央百貨店は抜かりがない。


「それで?」


 兄が促す。すると、アレクは満面の笑みを浮かべた。


「僕も体験共有プログラムで支払おうと思っていまして!」

「へえ」

「内容はバンジージャンプです!」


 言い切った。やっぱり飛ぶらしい。しかも、嬉しそうだ。


「ですので!」


 アレクはルークを指差した。


「一緒にどうですか?」


 ルークが固まった。保木君が吹き出す。ユリウスさんも思わず笑っている。兄に至っては真面目な顔をしているつもりでも、完全に笑っていた。私は思いがけない提案に目を丸くした。


「あら、いいわね」

「僕も賛成だ」


 ユリウスさんが即答した。


「ぜひ映像を見たい」

「ユリウス君まで……」


 ルークが遠い目をする。だが、兄も穏やかに頷いた。


「僕も興味があるな」

「凰李もか」


 ルークが声を上げる。


「せっかくだろう」

「せっかくなんかじゃない」

「面白そうだ」

「本音が出ているよ」


 ルークの反論に、部屋中から笑い声が上がった。重たい話をしていたはずなのに、不思議と空気は明るい。未来の不安が消えたわけではない。けれど、それを一人で抱え込まなくてもいいのだと思えた。私は笑いながら思う。もし本当にルークとアレクが並んでバンジージャンプを飛ぶことになったら、その映像はきっと、何年経っても笑い話になるだろう。そんな未来も、少し悪くない気がした。


 ルークは部屋中から向けられる期待の視線を受けて、しばらく黙り込んでいた。私と兄。ユリウスさん。保木君。そして、きらきらと目を輝かせているアレク。全員が返事を待っている。やがて、ルークは大きくため息をついた。


「……分かった」

「あら」


 私は思わず笑う。


「本当に?」

「そこまで期待されて断る方が面倒だ」


 ルークは肩をすくめた。


「それに、許可が下りないわけじゃない」

「やったーーー!」


 アレクが勢いよく立ち上がった。


「ありがとうございます!」

「まだ飛ぶ日も決まっていないよ」

「決めましょう!」


 アレクは即答した。さすが営業である。行動が早い。


「詳しい日程は後で連絡する。僕も予定を確認したい」


 ルークが言う。


「もちろんです!」


 アレクは満面の笑みだった。


「楽しみですね!」

「君だけだと思うよ」


 ルークが真顔で言う。保木君が吹き出した。ユリウスさんも笑っている。兄まで口元を押さえていた。

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