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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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11-16

 私は腕を組みながら考える。死亡後サービス。100万円。体験共有プログラム。そして、バンジージャンプ。普通なら即座に断る話だ。しかし、さっき聞いた内容が頭から離れなかった。――大切な人に早く会える。兄の顔が浮かぶ。子供の頃からずっと守ってくれた人。困った時には助けてくれて、迷った時には相談に乗ってくれる。私が宇宙だの守護者だのという話に巻き込まれても、最後まで味方でいてくれた人だった。


 私は小さく息を吐く。兄に相談しようか。一瞬そう思った。しかし、すぐに首を横に振る。駄目だ。相談したらいけない。兄は絶対にこう言う。――必要なら僕が払う、と。間違いなく言う。断言できる。兄はそういう人だ。昔からそうだった。私が困っていると知ったら、自分のことは後回しにしてでも助けようとする。それが月島凰李という人だった。


「どうした?」


 ルークが聞いてきた。私は顔を上げる。


「お兄ちゃんのことを考えていたの」

「ああ」


 ルークは納得したようだった。


「相談する?」

「しない」


 即答だった。すると、アレクが首を傾げる。


「仲が良いなら相談してもいいのでは?」

「駄目よ」


 私は首を横に振る。三人が私を見る。私は苦笑した。


「兄が払いそうなの」


 アレクが少し考える。


「優しいんですね」

「優しいわ」


 私は頷く。


「だから困るの」


 保木君が小さく笑った。


「払ってくれそうなんですね」

「絶対に払う」


 私は断言した。


「それも笑顔で」


 するとルークが頷く。


「払うね」

「でしょう?」

「払う」

「だから相談できないのよ」


 私は額を押さえる。兄に無理をさせたくない。それが一番大きかった。兄にとって払えない金額ではない。むしろ払おうと思えば払えるだろう。でも、それが問題なのだ。払えるからこそ払ってしまう。私のために。私はそんな顔を何度も見てきた。


「それなら」


 アレクが言う。


「申し込んだ後で報告するんですか?」


 私は少し考えた。そして、頷く。


「その方がいい気がする」


 それなら兄は後から怒るかもしれない。心配もするだろう。でも、自分で決めたことだと説明できる。少なくとも代金を払わせることはない。


「なるほど」


 アレクが感心したように言う。


「お兄様の性格をよくご存じなんですね」

「長い付き合いだから」


 私は笑った。兄妹なのだ。嫌というほど分かっている。すると、保木君が少し羨ましそうな顔になった。


「いいですね」

「え?」

「そういう関係」


 私は瞬きをする。保木君は照れたように笑った。


「兄とは仲が良いんですけど」

「うん」

「そこまで何でも話す感じではないので」

「ああ」


 なんとなく分かった。兄弟にも色々な形がある。私と兄の関係は、かなり特殊な方かもしれない。すると、アレクが言った。


「湊は素直じゃないですから」

「アレク」

「本当です」


 アレクは笑っている。


「兄貴に頼ればいいのに、自分で抱え込みます」

「誰かさんに言われたくないけど」


 保木君も反撃した。どうやらこちらも似た者同士らしい。私はそのやり取りを見ながら少し微笑む。なんだか楽しそうだった。すると、その時だった。ルークが急に立ち上がった。


「よし」

「なにが?」


 私が聞く。すると、ルークが真面目な顔で言った。


「決めた」


 嫌な予感がした。


「なにを?」

「バンジージャンプ」

「飛ばないわよ」


 私は即答する。しかし、ルークは構わず続けた。


「下見に行こう」

「飛ばないって言ってるでしょう」

「見るだけ」

「見るだけなら」


 そこまで言って、私は止まった。危ない。それが罠だ。見るだけのつもりで行って、そのまま飛ばされる未来しか見えない。アレクの目が輝いていた。営業マンの顔だ。


「素晴らしいですね」

「まだ何も決まってないわよ」

「現地確認は大事です」

「そういう問題じゃないの」


 保木君が横で笑いを堪えている。どうやら面白がっているらしい。私は大きくため息をついた。しかし、胸の奥では少しだけ思う。兄のこと。未来のこと。そして、自分のこと。今まで考えないようにしていたことを、今日はたくさん考えた。だからだろうか。バンジージャンプは嫌だった。でも、以前ほど即座に拒絶できなくなっている自分もいた。そして、やっぱり兄に相談しようと思った。代金は支払わせない。申し込むときはバンジージャンプをする。


「やっぱり、兄に相談するわ。黙っているのはよくないから」

「ありがとうございます!」


 アレクは満面の笑みだった。保木君が吹き出す。ルークも満足そうに頷いている。どうやら私は、一歩ずつ包囲網を狭められているらしかった。その事実に気付いた私は、思わず頭を抱えるのだった。

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