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ファーストコンタクト~私の宇宙人彼氏はお金を出さないけど、光を降らせる~  作者: 夏目奈緒


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 私は少し身構える。500万円のネックレスの後である。これ以上すごい話が出てくるとは思えない。しかし、アレクはどこか真面目な表情になっていた。営業スマイルは浮かべている。けれど、先ほどまでの商品の説明とは雰囲気が違った。


「実はですね」


 アレクが静かに言う。


「近年、ベガ中央百貨店が最も力を入れているのは、商品販売ではありません」

「そうなんですか?」

「はい」


 アレクは頷く。


「サービス事業です」


 ホログラムが切り替わる。今度は文字が並んだ。警備サービス。居住サポート。資産管理サービス。そして、その一番下に書かれていた言葉を見て、私は首を傾げた。


「死亡後サービス?」


 なんとも物騒な名前だった。すると、アレクが嬉しそうに頷く。


「こちらです」


 私は少し不安になる。名前からして嫌な予感しかしない。保木君は気まずそうにお茶を飲んでいた。どうやら内容は知っているらしい。


「死亡後サービスというのはですね」


 アレクが説明を始める。


「地球への転生者で、寿命を終えた方を対象にしたサポートです」

「はあ」

「地球で人生を終えた後、多くの方は元の星へ帰還します」

「そういうものなの?」


 私はルークを見る。ルークは頷いた。


「人によるけど」


 否定はしなかった。どうやら本当にそういう仕組みらしい。私は黙る。アレクが説明を続けた。


「ですが、そこで問題があります」

「問題?」

「再会まで時間がかかるんです」


 私は首を傾げる。


「再会?」

「はい」


 アレクは頷く。


「地球で大切だった人たちとの再会です。本体の身体に戻って、会いに行くことができるんです。それには、あらかじめ、事情を話しておかなければなりませんが、多くの方が話をされていますから、残された方は、再会を待ち望むんです」


 その言葉に、私は少しだけ表情を変えた。アレクは続ける。


「通常ですと、地球での人生を終えた後、各種手続きや帰還処理があります」

「役所みたいね」

「かなり役所です。そのため、再会できるのは最短でも地球時間で3日後になります」

「3日」

「はい」


 アレクは頷く。


「ですが、当社の死亡後サービスをご利用いただくと――」


 そこで少し胸を張った。


「すぐに会えます」


 私は固まった。


「すぐに?」

「すぐです」

「そんなことできるの?」

「できます」


 即答だった。私はルークを見る。ルークも見ている。そして。


「できる」


 と言った。私は頭を抱えたくなった。宇宙のデパートは何を売っているのだろう。小皿から始まり、最後は死後サービスである。商品の幅が広すぎた。すると、アレクが資料を操作する。


「実際に利用されたお客様からも高評価をいただいております」

「お客様って言うのね……」

「お客様です」


 アレクはきっぱり言った。私は少し笑ってしまう。すると、アレクがこちらを見る。


「紫乙さん」

「はい?」

「配信でお兄様のお話をよくされますよね」


 私は頷いた。


「そうね」

「とても仲が良いのでしょう」

「ええ」


 それは否定しない。すると、アレクは優しく笑った。


「だからこそ、お勧めしたいんです」


 私は首を傾げる。その意味がよく分からなかった。そして、次の瞬間だった。


「こちらで紫乙さんのことを見送る方が必要ですから」


 その言葉に、私は瞬きをする。


「え?」

「お兄様より先に命を落とされる予定だと、ルークさんからお聞きになっていませんか?」


 部屋が静かになった。私は固まった。保木君も固まった。アレクも固まった。そして。


「あ」


 と、アレクが声を出した。完全に失言した顔だった。アレクが青ざめる。


「僕、口が滑りました」


 私は何も言えない。ルークを見る。ルークは湯呑みを持ったまま止まっていた。


「聞いていないんですね」


 アレクが恐る恐る言う。私はゆっくり首を振る。聞いていない。初耳だった。


「アレク」


 保木君が小声で言う。


「それ言っちゃ駄目なやつでは」

「駄目なやつです」


 アレクが即答した。さっきまでの営業スマイルが消えている。私は静かにルークを見る。


「ルーク」

「なに?」


 ルークは落ち着いていた。


「どういうこと?」

「説明すると長い」

「説明しなさい」


 私は即答した。ルークは少し困った顔になる。その様子を見て、私は逆に冷静になる。すると、アレクが小さく手を挙げた。


「その前に、本当に申し訳ありません」


 深々と頭を下げた。保木君まで一緒に頭を下げている。私は思わずため息をついた。怒る気にはなれなかった。なぜなら、アレクが悪意で言ったわけではないと分かったからだ。ただ、問題は別にある。私はゆっくりルークへ視線を戻した。


「後で詳しく聞くから」

「うん」


 ルークが頷く。その返事が妙に素直だった。だからこそ、私は確信する。この話は、かなり長くなりそうだった。

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