にじゅうろく 初代ユーザーの影
スマホの画面に表示された文字。
『初代ユーザー』
その言葉を見た瞬間、半次郎はしばらく動けなかった。
自分と同じ姿をしたアバター。
同じ人族。
同じような服装。
ただ違うのは、その存在が「自分より前にランプにいた」ということだった。
「……いやいやいや」
半次郎は画面を何度もタップした。
「俺、初心者だったよね? なんで俺の姿の初代ユーザーがいるの?」
もちろん返事はない。
ただ古いランプのロゴだけが、静かに点滅していた。
現実ではただのスマホ画面。
しかし今の半次郎には、まるで誰かが向こう側から見ているような感覚があった。
その時。
ピコン。
通知音が鳴った。
「またか……」
半次郎は少し警戒しながら画面を見る。
しかし表示されたのは――
『料理人フレンドさんが新作料理を投稿しました』
だった。
「……このタイミングで料理投稿!?」
思わず力が抜ける。
内容を見ると、
『今日はランプ料理コンテストに向けて、巨大オムライスを作りました』
という投稿。
写真には、アバターの何倍もある巨大な卵料理。
半次郎は思わず笑った。
「いや、料理のサイズ感どうなってるんだよ……」
そこへコメント欄。
発光体が現れた。
『素晴らしい! しかし効率を考えるなら料理よりガチャ石を集めるべきです!』
「出た……」
半次郎は苦笑した。
どんな話題でも最後はガチャに持っていく。
発光体は今日も全身を光らせながら登場していた。
『ちなみに私は昨日、限定装備を三個出しました』
「また課金したの?」
『違います』
一瞬期待する半次郎。
『効率的な課金です』
「同じだろ!」
半次郎のツッコミがランプ内に響く。
そこへ、さらに新しい参加者が現れた。
寝落ち神だった。
……というより、寝ていた。
「え?」
半次郎は画面を見る。
寝落ち神のアバターは立ったまま目を閉じている。
『ログイン中』
なのに。
「寝てるじゃん」
半次郎が言うと、数秒後。
『起きてます』
返事が来た。
「いや絶対寝てたよね?」
『夢の中でログインしてました』
「それもうログインの意味変わってる!」
相変わらず意味不明だった。
しかし、そんな寝落ち神が急に動きを止めた。
『……あ』
「どうした?」
『初代ユーザーのページ、開いたんだね』
半次郎の表情が変わる。
「知ってるの?」
寝落ち神は少し間を空けた。
いつものふざけた雰囲気ではなかった。
『知ってる。でも、全部は知らない』
その言葉に、半次郎は不安を感じた。
『初代ユーザーは、ランプを作った人じゃない』
「え?」
『最初に、この世界を見つけた人』
画面の古いロゴが、再び点滅する。
そして突然。
新しいログが表示された。
【初代ユーザー記録】
【名前:半次郎】
半次郎の背中に冷たいものが走った。
「……俺?」
しかし、その下には続きがあった。
【登録日:ランプ正式公開より前】
【状態:現在確認不可】
そして最後の一文。
【あなたは二人目ではない】
半次郎は息を飲んだ。
その瞬間、非公開ユーザーから通知が届く。
『やっと入口に来ましたね』
半次郎は画面を見つめた。
『次は、あなたが忘れている記録を見せます』
その文字の下に、新しい場所の名前が表示される。
【旧ランプ管理室】
存在しないはずの場所だった。
そして半次郎の画面には、最後にもう一つだけ文字が浮かんだ。
【アクセス許可:初代ユーザー確認済み】
半次郎は震える指で、その場所を押した。
すると画面の奥から、聞き覚えのある声が流れた。
『おかえり、半次郎』
――




