決断
もうろうとした意識の中、ノアの耳に、女性看護師とエマの二人の会話が聞こえてきた。
「もう駄目みたい。このまま、そっとしておいた方がいいですよね」
「安楽死、苦痛を味あわせないのが一番ね。ぜひ、そうさせてあげて」
「世話する人がいないから、構ってあげられない。仕方ないですね、可哀想だけれど……」
安楽死?……ああ、オレ、死ぬんだな……でも、世話する人がいないなんて、まるでペット扱いだ。オレ達、そんな関係だったのか? もっと悲しそうにしてくれよ、オレ、死ぬんだろ……。
程なくして、意識を取り戻したノアを、チームメイトが見舞いに来た。
「どお、少しは元気になったの? ムードメーカーのあなたがいないと、明るくならないのよね」
「気休めはよせよ、どうせオレ、死ぬんだろ」
「死ぬって、あなた、まだ…」
エマの言葉を無視して、ノアは続けた。
「オレの体は、オレが一番良く知ってんだよ、もう長くは生きられないって……だから、言い残していたことを言う。オレは、オレはエマのことが好きだった、大好きだったんだよ。だから、リアムと仲良くしているのを見ているのが嫌で、あえて辛く当たってたんだ。本当は良い奴ってことは分かっていた。けど、仲良く出来なかった……。今更、遅いよな、死ぬ間際になって、こんなこと言っても……」
「私のことが、好きって……」
「ガキの頃から、とびっきりの可愛い子と一緒にいたんだぞ、好きにならない方がおかしいだろ」
やけになったノアが、今までの思いをぶちまける。
「知らなかった……。ノアのことは好きだよ。でも、ずぅっと、きょうだいのように思っていたから、好きっていう感情は芽生えなかったの。ご免ね、気付いてあげられなくて」
「きょうだいかぁ……そうだよな、一方的な片思いなんだから。この話があって、お前の親父さんにスカウトされた時は嬉しかったんだ。お前の役に立てるって。それがきっかけで、お前と付き合えるんじゃないかと期待していたんだぞ……なんで俺じゃなく、リアムなんだよ……。親父も、お前の親父さんもエマと付き合うんだろって言ってくれていたから、その気になっていたし、全てにおいて、その方が丸く収まるんだ。なのに、何故リアムなんだよぉ」
すっかり落ち込んでいるノアに、
「落ち込んでいるところ悪いんだけれど、あなた、死なないわよ」
ノアを安心させようと声を掛けるも、
「嘘付け! 俺は聞いたんだ、安楽死が良いんじゃないかってな」
「安楽死? ああ、確かに言ったわね。でも、それは看護師が飼っているペットのリリーの話。急に重い病気になったみたいなんだけれど、治療は人間の方が優先だからって諦めていたの。でも、峠を越えたみたいで、彼女喜んでいたわ。なんとか持ち直して、今は元気に生きているわよ」
「ペットのリリー……」
ノアが呟くように言うと、
「ウッ……」「ククク……」「……」
メンバーの失笑。
笑いを堪えていて、微かに漏れ出る声が伝わり、余計に惨めになる。
「なんであの場で、紛らわしいこと言うんだよ……」
あまりの恥ずかしさに、慌てて顔を隠すように毛布をかぶる。
体が自由に動くなら、この場から逃げ出したかった。
「で、どうなんだよ! エマのこと、本気で好きなのか」
急に、上体を起こしたノアが、今度はリアムにヤツ当たり。
「ワタシは、ワタシはエマさんのことが好きです。でも……ワタシは、貴方方の敵であるオシリス星の人間なんです。だから…」
「そんなことはどうでもいい! オレは好きか嫌いかを聞いてんだよ。オレだって、後進星の地球人だ。お前達より遥かに遅れた文明の人間なんだぞ! 人を好きになるのに、出身や身分なんて関係ないんだよ。リアム、お前が少しでもためらいがあるんなら、オレは力づくでエマを奪う、なんせ、お前より、ずうっと想い続けていたんだからな」
「私は好きよ、リアム、あなたのことが」
そう言って、戸惑うリアムの頬を両手で押さえながら、背伸びしたエマが強引にキスをした。
「――チキショ~! 見せ付けやがって」
エマの一途な気持ちが伝わり、ノアの微かな期待は完全に消えた。
「すいません、ワタシなんかが……」
「何謝ってんだよ、余計に俺が惨めになるだろうが。お前らも、心の中で笑ってんだよな、オレのこと、女々しい男だって」
「誰も笑ってなんかいないわよ」
エマが宥めるも、
「お前達は似合いのカップルだよ。気の強いエマを受け流す優しさ。心が広いんだよな、リアムは。なんにもやる気の出ないエマに、やる気を出させ、それに応えるエマ。嫉妬していたんだよ、お前達の相性バッチリの仲の良さに。あーぁ、オレは、なんて情けない人間なんだ……もう、いいだろ、さんざん笑えて、良かったよな、お前達」
「そんな、誰も笑ったりはしていませんよ」
今度はリアムが必死で宥める。
「いいから、一人にしてくれよ、もうこれ以上、恥を晒したくない。どうせ、ロシアもん、お前も心の中で笑っていたんだろ、そうだよな」
「いいや、悔しいが、カッコ良いと思った。人を想う真っ直ぐな気持ち、誰が馬鹿にするかよ」
イバンが呟くよう言った。
いがみ合っていた二人に友情が芽生えた。
「早く戻って来いよ、俺一人では荷が重いからな」
イバンがエールを送ると、チームメイトが静かに部屋を出た。
「早く戻って来い、か……」
そうマイクが呟くと、堪えていた悲しみが一気に噴出し、涙が止めどなく溢れ出た。その時、
部屋のドアが開き、その隙間から勢い良く猫が入って来た。
狸に似た猫が勢い良くノアのベッドに飛び乗ると、ノアに甘える。
「お前のせいで、とんだ恥をかいたんだぞ」
文句を言いながら涙をぬぐうと、猫を持ち上げて顔を見た。
すると、狸は怯える様子もなく、ノアの鼻をペロペロと舐める。
「でも、想いを告げられて、何かスッキリしたよ。ありがとうな」
その可愛らしい表情に何故か癒されるのだった。
「まあ、リリーがなついている。動物に好かれるタイプなんですね」
ノアの背後から、女性の看護師が声を掛ける。
「お前、リリーって言うのか。でもな、動物に好かれたって意味ないんだよな」
「泣いていたんですね」
「泣いてなんかねえよ、てか、誰だ? お前。何、勝手に入って来てんだよ」
「看護師ですから、勝手に入って来た訳じゃありません。申し遅れましたが、私の名前はユイナと言います。エマ様から、ノアさんの世話をするように頼まれました」
「チェッ、余計なことしやがって」
あからさまに嫌な顔をしてノアが言うと、
「はい、30点」
と反射的にユイナが言う。
「はぁ~? 30だぁ」
「あ、すいません、私、直ぐに点数付ける癖があって」
「そっか、今の俺は30点かぁ、手厳しい。お前、可愛い顔して、キツイな」
「ありがとうございます」
嬉しそうにユイナが言った。
「褒めたんじゃねえよ、全く、調子狂うんだから。でもよぉ、怒る気はしねえ、そのズレてるところが、まるでエマと話しているみたいで、何故か、落ち着くんだ」
「え?」
「なんでもねぇよ」
「男の人がいつまでもメソメしていては、見苦しいですよ。悲しいことは、スパッと切り変えなけゃ」
「男女平等、男だって泣いてもいいだろ」
「卑怯ですね、そういつまでも泣かれると、守ってあげなくちゃ、って強く思ってしまうじゃないですか」
「お前に守ってもらわなくてもいいんだよ」
ノアがすねた。
「出血多量だったから、壊死した細胞が蘇生するのに時間が掛るし、衰えた筋肉も戻さないと。それには日々のトレーニングが欠かせないですよ」
「オレ、体を動かすのは苦手なんだよなぁ~」
「そんなこと言っていると、いつまでたってもここから出れないですよ。さあ、一緒に頑張りましょう」
「お前が?」
「はい、エマ様にそうお願いされたんです、リハビリに協力してあげてって」
「あいつが命令したのかよ、全く余計なことしやがって」
「命令だなんて、そんな、私が進んでお願いしたんです。憧れのヒーローさんの手助けが出来るって」
「オレが、ヒーローだって? 活躍してもないオレなんか、ただのお荷物だろうが。自力で立つことも出来ない情けない男だぞ」
「いいえ、ノアさんのその目、光を失っていません。その目は私に語り掛けているんです、まだ負けていないって。それに、私は看護師、怪我人を助けるのが仕事ですから」
そうユイナが言いながら、ノアをしっかり抱きかかえて、ゆっくりと上体を起こそうとする。
「そう、ベタベタくっ付くなよ! 汗が、オレの汗が付くだろ」
「私、そういうの気にしませんから、お気遣いなく」
「オレが、このオレが気になるんだよ」
「はい、20点。そもそも立つこともままならないでしょう、何一つ一人では出来ないくせに」
皮肉っぽく言われるが「ヌ、ヌヌヌ……」何も言い返せないノア。
「すっかりヒーローさんになついているようですから、リリーの面倒をお願いします。一応、私の唯一の家族ですから」
「唯一の家族って、お前、一人もんなのか?」
「はい、アルキオネ星にミサイルが落ちて来て、街が焼け野原になってしまって。唯一、外出していた私だけが生き残ったんです。その時、一生分の涙を流したから、もう二度と涙を流すことは無いですけどね」
「……そうか、本星に巡航ミサイルが撃ち込まれたって聞いてたからな……その時に、みんな死んだのか……さぞ、ミサイルをぶっ放した奴を恨んでんだろ」
「無い、と言ったら嘘になるかも知れないですけど、恨まないようにしているんです。私、考えたんです。私に出来ることはなんだろって。人を恨むことじゃなく、困っている人を助けることなんだなぁって、そう思ったんです。もう、目の前で、人の死ぬところは見たくないですからね」
芯の強い女だな、まるで、エマと同じだ、と思うと同時に、今まで誰にも頼ることなく生きて来たノアにとって、味わったことの無い感情が芽生えた。
「独りぼっちなのか……なら、今のオレ俺と一緒だ。仲間に見放されたオレには、リリーだけだよな、構ってくれるのは……分かった、オレに任せろよ、ちゃんと世話をするからさぁ」
身も心も傷付いていたノアは、動物のリリーと共にすることで元気を取り戻していくのだった。
数日間のリハビリの成果もあって、衰えていた筋肉も戻り、自らの力で立てるようにまで回復した。
「看護師として病人が回復するのは嬉しいことなんですけれど、あ~ぁ、もう直ぐしたら、ヒーローさんのお世話をすることも無くなりますね」
寂しそうにユイナが言う。
「嬉しくないのか、清々するんじゃ……」
「そんなことありませんよ、一緒にいるだけで、凄く楽しいことばかりですから」
「楽しいって……。お前、確か、身寄りがないんだよな。なら、良かった」
「まあ、最低! 人の不幸を喜ぶなんて、ヒーローさんのこと見損ないました。マイナス70点!」
今度は、睨みながらユイナが言った。
「ち、違うんだ! 家族がいないなら、地球で一緒にいられるんじゃないかなぁって勝手に思ってさ」
「ほ、ほんとうですかぁ! 私、地球での生活に憧れていたんです」
「そうなのか? まあ、あっちでの俺は上流階級、マンションの一つや二つ借りたってどうってことない。生活の面倒だって見れるからな」
「そんな、もったいない。一緒に住めば良いじゃないですか」
「そうだな。ん? 一緒に……それじゃ、同棲だろ!」
「私は構いませんけどね。お願いです。私、なんでもしますから、一緒にいさせて下さい。私がエマ様と比べるなんて、おこがましいことですけれど、もっと私を見て欲しい、私だけを見て欲しかったです」
「……一緒に、暮らす、か。そうなれると良いんだがな」
「なれると良い、ではなく、なるんです! そう強く思うことが、大事なんですよ。最後まで諦めなかった先代のヒーロー達が、ハッキリと証明しているじゃないですか」
ユイナの説得力のある強い押しに、
「そ、そうだよな。お前に言われると、何故か不思議とそう思えてくる。以前、一生分の涙を流して、泣くことは無いって言ってたけど、今度は、涙腺が緩むくらいの感動で、涙を流させてやるよ」
ノアが自信を持って返事する。
「はい。そのためには、戦争を終わらさなければなりませんよ。早くオメガに復帰して、あっ、ゆっくりで良いですからね、一緒にリハビリに励みましょう」
強引にユイナがノアと腕を組む。
そして、嬉しそうにノアと一緒にリハビリ施設へ向かった。
食事の時も不自由なノアのそばにいて、ユイナは献身的に世話をした。
「もう何日も一緒にいたから、私すっかりその気になってしまいました。ノアさんに、きちんと責任、取ってもらわなくっちゃ」
そう言ってノアに鋭い視線を向けるが、
「オレ、何かしたか?……」
酷く動揺するノア。
彼女が積極的にアピールしていることに鈍いノアは気付かなかった。
ノアがオメガに復帰すると、戦況は大きく変わっていた。
合同軍が勢力を強め、連合軍に反撃、追い詰めていたのだった。
「連戦連敗? あっちには名参謀がいるのか! 人間業じゃない」
「そうなのよ、完璧な戦略を練って戦いに挑んでも、彼らはその上を行く。実戦経験の豊富な連合軍が、戦略・戦術で負け続けているの」
「もしかして、デッドに代わる新たな神を創造したんじゃ……リアムが言っていた、未来が見える、アテンとか言う神を。科学技術が最も発達したオシリス人なら可能だろう。情報が欲しい、どうなってるんだ、現在の状況は?」
信じられない様子のノアが聞くと、
「エニフ軍の主力艦隊に、エルナトの艦隊も大打撃を受け、今や合同軍は、連合軍より勢い付いている」
イバンが説明した。
「未来が見えるんだとしたら、連合軍は何をやっても勝てないんじゃ、勝てる筈ない……」
そうノアが呟く。
先の大戦で、中心的役割をしていたエニフ・エルナト両軍、実戦経験が豊富で優れた戦闘力の筈なのに、一度も勝利することが出来ないでいた。まるで先が見えているように、戦いを仕掛けて来る。
同胞の中にスパイか裏切り者がいるのか? 誰もが疑心暗鬼になる。その隙を見透かしたかのように大攻勢を仕掛ける。連合軍の指揮系統はバラバラ、統制が取れないでいたのである。
連合軍の総司令部が、合同軍の本拠地・アルゴル星への侵攻作戦を計画しているという情報がエマの耳に入った。
そんな中、エルナト星の若き指導者・スィニが密かにエマに接近。
エルナト・第二艦隊司令官のハルゼーが深々と頭を下げ、スィニに詫びた。
慌ててエマが嘆願する。
「悪いのは私、艦長さんは悪くない。罪に問わないで、お願い、お願いします」
「私は彼を、エマさんを責めている訳じゃない。むしろ、良く引き留めたと感心しているんだ。私が今の地位にいられるのは、エマさんのお蔭。我が師でもあるウィリスさんは、後継者にエマさんを、と考えていたのだから。今日、来たのは他でもない。是非とも我らに力を貸して欲しい。総司令部は、いよいよ総攻撃を決めた。不戦の誓いを貫くエマさんの気持ちは分かるが、この作戦は、世界のため、戦争を終結させるためのなんだ。分って欲しい。決してエルナトの勢力拡大のためじゃない。あくまでも平和、それはエマさんが目指そうとしている世界だろう、原動力だろう」
戦争を終わらせるというスィニの言葉にエマの心は動いた。
デッドの時のように、オシリスのアテン神によって人間が支配されるようなことがあってはならない。そうエマは思ってリアムを見た。
エマの考えを察したリアムが、彼女が言う前に、自らが言った。
「ワタシのことは気にしないで下さい。覚悟は出来ています。オシリス星を攻めることは、エマさんのリーダーとしての務め、正しい行為なのですから」
今度はチームメイトの顔を見渡し、エマは決断した。
「私達オメガは、もう、じっとしていられない状況になってきたわ。このままじゃ、この世界はアテンとか言う神の思う壺。だから、敵のアジトを叩くことに決めたの。でも、不戦の誓いは貫くわ。この戦いは、私達人間を惑わす人工知能・アテンとの戦い。創られた未来を食い止めるためよ。良かったわ、ノアが復帰してくれて。あなたの力が必要だもの」
エマの言葉は、ノアにとって何よりもありがたく、自然と力が湧いてくる。
「ただし、私達オメガだけで出撃、行動を起こすわ」
犠牲を最小限にしたくてエマが言うが、
「それは無茶だ、危険過ぎる」
第三勢力の独立艦隊を束ねるアルキオネ星の司令官が口を挟んだ。
「犠牲者を出したくないのは分かる。でももし、貴女の身に何かあっては取り返しのつかないことになる。恐らく、オメガの奇襲は敵のアテンとやらに知られていて、待ち構えている筈だ。いくら無敵を誇るオメガでも、敵主力艦隊を突破出来ない」
「だからなの、私達オメガは敵主力を引き付ける囮。その隙に、このパーシアス連邦の太守星・アルゴルを抑え込むのよ。元々、戦争にはやる気が無かったと聞くし、だからこそ、この好機を逃してはならない。一気に終戦へと向かわせたいの」
「なら、せめて、戦闘艦を中心とする、我が第二艦隊だけでも、決して足手まといにはなりません」
いたたまれずハルゼーが進言した。
「……分かったわ、心配してくれて、ありがとう。共にアテンを叩き、この戦争を終わらしましょう」
そう断言したエマに向かってノアが忠告する。
「ゲームでもよく聞く話だが、今のお前に言っておく。一軍を率いる将は、どんなに強くても、どんなに知恵をめぐらそうとも、将が首を取られれば戦いは負け。生き残ることが将、つまりお前の務めだ」
「分かっているわよ、そんなこと。でも、よく言ってくれたわ。あなたの言葉で、迷いが消えたもの」
幼馴染の二人、お互いを十分理解していた。
オメガの遠征部隊が長時間の航行の末、シャプレー連邦(超銀河団)にたどり着くと、オシリス星を衝こうとするエマの奇襲作戦を待っていたかのように、合同軍の大艦隊が待ち構えていた。
「やはりな、あの司令官の言っていた通りだ。この場で、俺達の息の根を断とうと待ち構えていたんだな」
「でも、それだけじゃない。この場所、何かヤバい気がするな。俺達は、敵の罠にまんまとハマったんじゃないのか。悪い胸騒ぎがするんだ」
違和感を覚えた能力者のイバンが、チームメイトに注意を促す。
「兵法でもあるんですよね。『調虎離山の計』と呼ぶ、敵を本拠地から誘い出して、有利な地で戦うという戦術がね」
ハオュも注意する。
「敵の術中にまんまとハマったって訳か。なあに、俺達オメガのハンディとしては申し分ない」
不安を払拭しょうとノアが強がって言った。
合同軍の戦闘艦の主砲から放たれる、エネルギー体が軽空母・オリオン号をかすめ、船体が大きく揺れた。
「みんな、出撃よ!」
エマの号令が船内に響き渡り、十一機のアームキャリーがオリオン号から一斉に飛び立った。
「接近し過ぎないで、戦闘艦の主砲の一撃をくらえば、ひとたまりもないわよ」
「任せておけ! ゲームで培ったオレの動体視力は、マイクロ秒、当たる気がしねぇ!」
不戦を誓うエマの目の前に、第一次攻撃隊の無数の敵機が接近。攻撃を仕掛けて来た。
戦力の劣るオメガが大軍の敵に勝利するには、戦闘の枠にはめない方がいい。
「みんなに指示は出さない。戦況を見て好きに動いてくれ」
オメガのエース・ノアがメンバーに言って、リーダーのエマに声を掛ける。
「攻撃を仕掛ける敵は、反撃しても構わないんだろ!」
とのノアの言葉に、
「42条発動! ここを一気に突破するわよ!」
エマが力強くチームメイトに言った。
「この場は我ら、第二艦隊が引き受ける、オメガは先へ!」
第二艦隊司令官・ハルゼーが言った。
戦闘艦を中心とした第二艦隊が援護射撃をし、オメガはオシリス星を目指した。




