新生 オメガ
エルナト星に来たエマを待っていたのは、
「エマさーん!」
そこには、誰よりも会いたかったリアムがいた。
「ずぅーと会いたいと思って待っていたのに、何故、会ってくれなかったのよ! 私のことが嫌いなら、はっきり嫌いって言ってよ。リアムが迷惑って言うんなら、私、諦めるから……」
「嫌いだなんて、そんな。ワタシも会いたかった。でも、ワタシはエマさんを誘拐した犯罪者、罪を償っていたんです」
「犯罪者だなんて、酷い。私を救ってくれたじゃない」
「理由はどうあれ、ワタシはエマさんを騙し、利用した。自身の目的のために、エマさんを危険な目に遭わせたんです。だからその罪を償おうと。でも、ただ罪を償っていたわけじゃありません。エマさんの力になるために、ワタシは何をすべきか考えました。ワタシの持つ全ての知識を使って、アリストの持つ技術を、エルナト軍に転用することでエマさんの力になれる。ワタシはエマさんに恩返ししたかったんです」
「私の力になろうと……そう、そうだったの……でも良かった、本当に良かった。こうしてリアムに会えて」
うっすら涙を浮かべながら、エマが呟くように言った。
「オーーイ、エマー!」
聞き覚えのある声にエマが振り向くと、そこには幼馴染のノアがいた。
「やっぱり、あなたが選ばれたんだ」
「おう、真っ先に、オヤジさんに選ばれたんだぞ」
「ゲームだけは得意で、誰よりも強かったからね。それはそうと、あなた、今までどこに行ってたのよ。高校を中退したって聞いて、心配していたんだから。悪い仲間達とつるんで、悪い噂しか聞かなかったわよ」
「悪さするのも飽きしなぁ、もう大人なんだし、第一、恥ずかしいよ」
「そう、あなたも、大人になったんだね」
「オレのことはどうだっていいだろ、別に家族じゃないんだし。ところで、そいつは誰だ? 一瞬、女かと思ったぞ」
「私の彼氏よ」
「か、かれし~ぃ!」
思わず声を上げたノアが、百年早いんだよーと言わんばかりに、リアムにガンを飛ばす。
「エマさんの彼氏だなんて、そんな、ワタシなんかが……」
「正真正銘の、彼氏よ」
尻込みするリアムを、エマが強引に腕組みをした。
「……お前達、どこまでいったんだ? ひょっとして……」
「どこまで行ったって、さっき会ったばかりよ」
「そ、そうか、じゃあ、キスもまだなんだな」
「き、キスって、なに想像しているのよ、いやらしいわね、詮索するのはやめてよ」
と言いつつ、何故かエマは嬉しそう。
何故こんな奴に……男を磨いてきたオレの方がずっと魅力的で、カッコ良い筈なのに……。こいつの女っぽい、頼りない所がエマの母性本能をくすぐるのか? やっと、やっとあいつの前で活躍出来ると、張り切って来たんだぞ……。そう思うと、ノアの目の前が真っ暗になった。
「エマさーん! 俺達もいるんだけど。選ばれたのは、そいつだけじゃないぜ。俺の出身はロシア、名はイバン、エマさんと同じ十八歳。宜しくな」
目付きの鋭い端正な顔立ち、体格の良いイバンが言った。
「ロシアもん、か」
ロシアという国名を聞いたノアが、対抗心を燃やしてイバンを睨み付けた。
ノアとイバンがお互いをライバル視し、早くも火花を散らす。
その後、続々とメンバーが入って来た。
「俺は、ドイツ。名はレオン、二十歳」
引き締まった顔立ちと鋭い眼光。
「俺は、フランス。名はナタン、十九歳」
凛々しい顔立ち、スタイルも良くモデル体型、髪の毛が少し天然パーマの掛った色男。
「俺はスペイン。名前はウーゴ、同じく十九歳だ」
ラテン系の風貌、彫が深く鼻が高い。まつ毛が長いのでセクシーな顔立ちに見える。
「私は中国。名はハオユ、十八歳です」
「僕は韓国。名前はジュンです、十七歳です」
「俺は日本。名は加藤ハルト、十八歳」
「同じく日本。名前は北山ユウト、十七歳」
「ユウトの姉のサクラです、十八歳です」
そう彼らは一人ずつ自己紹介をした。
総勢十人、エマを守るために、マイクが選んだエース級パイロット達である。
「日本って、じゃあ、あなた達が、先代ヒーローの御子息ね」
エマが聞くと、皆がユウトとサクラに視線を向けた。
「あなた達は、今日より任官し、軍籍は少将のこと。ちなみに私は、中将なんだけれどね」
エマがメンバーの一人一人に階級章を首元に付けながら、
「この階級バッジには通信機能が備わっているから、メンバー間同士の交信に使ってね」
と言った。
娘を守るために、マイクが地球上の世界各国から優秀な人材をスカウトする。
『マイクノート』に、十名の出身地から性格や特徴、特技などの詳しい情報が書かれていた。
オメガのメンバーは、戦闘フォーメーションを決めるテストを行うために、巨大なドーム状の施設に入った。
彼らは、パイロットの養成に使われる施設で、フライトシミュレーターを用いて、シミュレーション上での模擬戦闘を行う。
「このフライトシミュレーターは、操縦士の戦闘データーが瞬時に分かる優れ物なのよ。まずは、この分析装置を使って、戦術を有効に遂行するための最適なフォーメーション、戦闘隊形を決めるわ。大きく分けて、オフェンス専門(攻撃)と、ディフェンス専門(守備)の二つに分けるわよ」
フライトシミュレーターのテストによって、新オメガの実力が明らかになる。
「知ってるぜ、青色は英雄機。もちろん、オレ様が乗るんだよな」
ノアが自信満々に言うと、
「さあ、それはどうかしら。模擬テストの成績次第ね」
エマが指摘する。
「パイロットになるのに、テストがあるのか? オレ、筆記試験は苦手なんだよなぁ~」
と顔をしかめるノアに、呆れ顔のエマが言った。
「馬鹿ね、筆記試験なんてある訳ないじゃない、なんの役にも立たないんだから。シミュレーション上での戦闘よ。個々の能力を詳しく調べるの」
「それを早く言えよ、驚かしやがって。みんな頭だけは良さそうだから、ドンべになるかと思った。対戦ものなら、オレに敵いそうな奴は見当たらない。見せてやるよ、オレの実力を、腰を抜かさせてやるぜ。敵の数は十機、いや、二十機を相手してやる!」
「ちなみに、一度に五機の敵を相手にするエース級と呼ばれるパイロットの戦闘力数値は、100と言われているの。あなた達は選ばれしヒーローだから、この数字を超えてもらわないとね」
そう説明して、エマがメンバーに発破を掛けた。
ノアがドームの中心に浮いている戦闘機に乗り込むと、ドーム内の照明が消え、天井に敵機の姿が映った。その数二十機。緻密で精巧な映像の敵機が、ノアの実物の戦闘機に迫る。
一気に半数の戦闘機を撃墜するも、堕ち漏らした戦闘機が人型に変形して襲い掛かった。ノアも人型に変形して迎え撃つ。
シミュレーション上の二十機の敵を相手に、ノアはズバ抜けた戦闘力を見せ付けた。
「さすがは、世界チャンピョン。まるで、ゲームをしている感覚で、ロボットを操縦しているんだろう。俺と対戦した時の、誰にも真似出来ない巧みなコントーラーさばきで……。あの時と同じ、俊敏な動きだ……」
ナタンが驚きの言葉を口にした。
コックピットから出たノアが、結果が表示された電光掲示板の数値を見た。
『攻撃力・800、命中率・70%、防御力・30、ダメージ・40、戦闘力・750、動体視力・0.000001秒』
どんなもんだい、と言わんばかりに、ドヤ顔でメンバーを見渡した。
「凄い! マイクロ秒なんて……」
想以上の成績に、エマが声を上げる。
「一度も練習していないのに、この数値は異常だわ……」
「まあ、見ているというよりは、勘、直観だけどな。トレーニング施設に泊まり込んで、血の滲むような努力をしてきたんだ。試合への作戦を練ったり練習したりと、地味で孤独な修行の日々だったからなぁ~」
「聞きようによっては凄いことしてきたんだと誰もが思うけれど、それって、単なるゲームの話でしょう、好きでやっていることじゃない」
とエマが突っ込みを入れる。
「ノアの反射神経も良いのだろうが、その素早い動きに対応するロボットの性能も凄い。光速に近い動きに付いて行けるんだからな。地球の技術じゃ、アームの関節部分がすぐに焼き付いて、動かなくなる。一体、どんな構造しているのか、俺はそこが興味深いよ」
「さすがは技術立国ドイツ、レオンさんは見るところが違うな」
ノアが感心する。
「次は中国、ハオュ君ね」
「私は十機ぐらいが限界なのに、ノア君が二十機ってハードルを上げるから、アッという間に撃墜されてしまいますよ」
とハオュが謙遜しながら言うと、
「いつもニヤニヤしやがって。中国人は、心の内を見せないから苦手なんだよな」
嫌味そうにノアが言った。
『攻撃力・350、命中率・75、防御力・75、ダメージ・30、戦闘力・550、動体視力・0.00006』
「なんとか、撃墜されずに済んだから、ホッとしましたよ」
「彼は卓球の選手だったのよ」
そうエマが言って、『マイクノート』の資料を見ながら説明した。
「はぁ、ピンポン? 遊びじゃないんだぞ」
「卓球を馬鹿にしないで、驚異的な動体視力や運動神経を必要とする競技なの。小さな台の上で繰り広げられるスマッシュは、速い時で球速二百kmに達するそうよ。あの至近距離で、その球を肉眼でとらえるのは至難の業、他の競技では有り得ないわ」
「でも、それだけじゃぁな」
ノアが不満そうな顔をする。
「ハオュ君の頭脳はIQ200、メンバーの誰よりもずば抜けて頭が良いの。孫子の兵法を熟知しているみたいだから、私のそばにいて、アドバイスしてもらえると助かるんだけれど」
「またまた、そんな謙遜な。エマさんが本気を出せば、きっと私より上ですよ」
ハオュが言うと、
「ほんと、こいつ、実力はあるのに、それを使いこなせないっていうか、何をしてもやる気ってもんが無いんだよなぁ」
ノアが同調した。
「それと、リアム君も、知能が高い気がします」
とハオュが補足する。
「まあ、異星人だからな、地球人と違っていて当然だろ。リアムは、こっちの世界の情報に詳しいんだ。お前がいなくては、何も出来ないからな。もっとも重要な存在だろ」
「もう、私達のことはいいでしょう。それより続けて。次は、韓国、ジュン君ね」
「ちょ、ちょっと待てよ、やらなくても分かるだろ。あんな病弱、メンバー最弱だろう。お前の親父さんも節穴だな、よりによって、なんであんな弱そうな奴を選ぶんだよ」
「ああ見えて彼、eスポーツ界の高校生チャンピョンなのよ」
エマの言う通り、eスポーツチャンピョンは伊達じゃなかった。
『攻撃力・750、命中率60、防御力、60、ダメージ、40、戦闘力、650、動体視力・0.00003』
ノアに迫る高得点を叩き出した。
「お前、凄いな。マジ、凄い。ヘタすりゃ負けるところだった。でも、あれだろ。この世界の医療技術で、その病弱な体、直してもらえばいいじゃないか?」
「それが……」
エマが口を濁し、言った。
「健康な体を治せば、彼の爆発的な力が発揮出来なくなるかも知れないの」
「僕はこの体が気に入っているんです。僕の個性ですからね。個性は神様が選んでくれたものだから、もっと自分を好きにならないと。ただ、近眼だった眼だけは矯正してもらいました。メガネだと、素早い行動には不便ですからね」
「神様から貰った体、か。お前、強いんだな。オレだったら、弱い体に生れた運命を恨むけどな。メンタル面が強いよ、気に入った。馬鹿にしてすまなかったな。そもそもゲームとは、操作するマシーンに、どれだけ魂を吹き込めるかなんだよな」
そう言って、ノアが心から詫びた。
次はハルトが試した。まさに疾風のようなスピードで駆け抜け、その速さに加え、美しさがある。動きに無駄がないから優雅に見えた。
「ゲームなんてしてなさそうに見えるのに、良い腕をしている。まさに、センスの塊のような奴だな……。でも、いくら強くても『心眼』が使えなくちゃ、ただのエース級のパイロットじゃないか」
嫉妬したノアが嫌味っぽく言った。
『攻撃力・480、命中率・90、防御率・85、ダメージ30、戦闘力・500、動体視力・0.00005』
ノアの言った通り、戦闘力は伸びなかった。
心眼が代名詞だった父親・ヒロトと違って、心眼の使えないハルトの戦闘力は大幅に削減された。
「次は、フランスのナタンさん、彼はサッカー選手なの。ポジションはミッドフィルダーだったそうよ」
「だろうな、フランスのスポーツと言えばサッカーだろ」
「サッカーだけじゃない、俺、ゲーマーだぞ、エボの大会で渡米した時、予選で君と対戦したことがあったんだ。優勝候補の君と違って俺は弱かったから、眼中になかったのかも知れないな」
「そ、そうか、覚えてないな……わりぃ」
『攻撃力・450、命中率・80、防御力・95、ダメージ・25、戦闘力・450、動体視力・0.00007』
「試合の組み立てが求められるミッドフィルダーとあって、全体の動きを捉え、それに連動する動きが出来ているわ。あと、フェンシングもやっていたみたいだから、それが生きているのね。次はドイツ、レオンさん。彼もサッカー選手、ポジションはゴールキーパーだそうよ」
『攻撃力・480、命中率・83、防御力・98、ダメージ・18、戦闘力、480、動体視力・0.00006』
鉄壁の防御で、メンバー随一の防御力を誇る。
「ナタンさんとレオンさんの二人には、守りに徹して欲しいわね。次はスペインのウーゴさん。彼は…」
「言わなくても分かってるって、サッカー選手だろ。ヨーロッパのスポーツと言えば、サッカーだからな。他には思いつかないよ」
嫌味ともとれるノアの言葉に、ナタンにレオン、それにウーゴが苦笑い。
「ポジションはフォワード、求められるのはシュート力にドリブル能力、つまり、スピードが一番重要なのよね」
『攻撃力・480、命中率・78、防御力・90、ダメージ・28、戦闘力・460、動体視力・0.00007』
「確か、スペインは闘牛が有名だったよな。直線的なボールの動きと違って、暴れ回る猛牛を一発で仕留める闘牛士だからなのか、一瞬の見極めが凄い」
と、ノアが感心。
「最後はロシアのイバン君、行ける? ……おかしいわね、イバン君のデーターだけが無いの」
「選ばれたのが最後だったからだろう。マイクさんが直々にエマを頼んだぞ、と俺のことを一番期待してくれていたよ。俺は柔道、だから接近戦は誰にも負けない」
と自分で得意分野を説明する。が、
『攻撃力・520、命中率・65、防御力・25、ダメージ・45、戦闘力・550、動体視力・0.00005』
と伸び悩んだ。
「戦闘力550だぁ、よくそんな成績で俺に偉そうなことが言えたな。オレの勝ち、お前、見掛け倒しだな」
勝ち誇ったようにノアが言い放つ。
「メカの操縦では負けるが、拳と拳なら、負けないがな」
「ロシアは、ただ土地が広いだけの国じゃねえか。オレには、豊かさとは無縁の国のイメージしかないがな」
「ほざけ! 誇りがあるんだよ」
いがみ合うノアとイバン。
ライバル心むき出しに、闘争心を燃やしていた。
一通りテスト行い、結果、750の最高得点を叩き出したノアが、
「やはりオレ様が一番だろ。オレは毎日、ゲームの練習を十二時間はしていた、ゲーム漬けの日々だったからなぁ。いつかこんな日が来るだろうと、努力した甲斐があったぜ。やっと、親父の汚名を晴らす時が来たんだ」
自慢げに言った。
「なによ、偉そうに、単に遊んでいただけじゃない。呆れるわね、全く。まだ一人いるじゃない、取って置きの彼が」
エマが忠告する。
「ユウト? 知ってるぜ、こいつ、怒りがないと力が発揮出来ないんだろ。模擬相手に、そうそう怒れないよなぁ~」
「決め付けないでよ。やってみなければ分からないでしょう」
「じゃあ、俺もノアさん達と同じ二十機、いや、三十機でいいや」
ユウトが言った。
「三十機だと! まさか、お前、撃墜されて恥かくのが嫌だから、大きく出て、敵機の数が他の奴らより多いから撃墜されました、って言い訳しようとしているんだろ」
「そんな言い訳しないよ。このままじゃあ、比べようがないからね」
そう言ってユウトがコックピットに座った途端、雰囲気が変わる。
いきなり全開――計測器が測定不能になり、レベルオーバーの驚くべき数字を叩き出した。
『攻撃力・……、命中率・100、防御力・100、ダメージ・0、戦闘力・……、動体視力・0,000000001秒』
「凄い! パーフェクトじゃない」
エマが驚愕の声を上げる。
「コンマ00……、一体いくらゼロが並んでるんだ? それに、測定不能? あいつ、本当に人間なのか……」
ノアも驚きを隠せない。
「ナノ秒……、人間業じゃないな。まさに、神の領域だ」
驚いたようにイバンが言うと、
「なぁに、相手が止まって見えるんだ、ユウトにとって簡単なことだろう」
レオンが冷静に言った。
「でも、何故だ?」
ノアが不思議に思うのも無理はない。
「ユウトは……ユウトは、無理やり親元から引き離されて、孤独な生活を送っていたから、ずうっと自分を押し殺していたの。だから、自分をコントロールする術を自然に身に付けていたんだわ、きっと」
サクラがそう言って、寂しそうな目をユウトに向けた。
「英雄機の象徴である青色は、ユウト君に決まりね」
これだけの結果を見せ付けられては、さすがのノアも何も言えず、エマの指示に従うしかなかった。
フラフラしながらコックピットから出て来たユウトをサクラが抱える。
「俺、力が長続きしないんで。それと、こっちの世界に長い間いるから、いつまで力が発揮出来るか分からないんですよ。あとのことは頼みましたよ、ノアさん」
「お、おう、あとのことはオレに任せろよ」
何故か嫌な気がせず、親しみがわいた。
「じゃあ、一応だけれど、私が行くね。二十機は無理、十機に調整してくれる?」
サクラが自ら進んでコックピット内に入った。
『攻撃力・230、命中率・100、防御力・450、ダメージ・75、戦闘力・280、動体視力・0.0008』
弓道の達人とあって、命中率の精度はチーム一だった。
「凄いわね、驚異的な命中率。いえ、正確に相手の弱点を射抜いている。一瞬の爆発力は、青を継ぐ者のDNAを受け継いでいるんだわ」
と感心するエマ。
「あと、一人いるだろ、肝心なリーダーが」
ノアがエマに振った。
「私? 私はいいでしょう、ゲームなんて一度もしたことがないんだから」
「いや、以外といけるんじゃないか? なんせ、オレ達のリーダーなんだから」
嫌々ながらもエマがコックピットに座り、始めた。
結果、一人だけ撃墜され、リーダーとしての面目を失う。
運動神経は優れているものの、異世界の戦闘力に直結するゲームの類を一度もしていないエマには不向きだったようだ。
「お前、B級どころか、C級パイロット以下じゃねえか」
ノアが呆れた口調で言うと、
「……だから言ったじゃない。リーダーの私は、戦略・戦術の方、敵の心理を読むことが肝心なんだから」
と真っ赤な顔をしながら言い訳する。
「エマさんの能力は、人を引き付ける力であり、みんなをまとめる力、戦闘力の強さとかじゃないんです。エマさんは愛の力で強くなれるんだとワタシは思うんです」
リアムがエマを庇うように言うと、
「愛だぁとぉー、マンガじゃあるまいし、そんなもんで強くなれるんだったら、苦労しねぇよ」
と呆れ顔のノア。
「ここで言う愛とは博愛の愛、そうだろう、リアム」
ウーゴが聞くと、
「はい、エマさんは、誰に対しても、分け隔て無く、平等に愛する力で強くなれると思うんです」
自信をもってリアムが答えた。
「そんなもんかなぁ……」
姿か形の無い愛という力、ノアには理解出来ない未知な力だった。
強い――。よく、これだけのメンバーを集められたものだ。
マイクの人選の凄さに感心するリアム。強いオメガの実力を目の当たりにして、何か言いたげのリアムだが、あえて何も言わなかった。
これだけの個性の集まりを、どう使いこなすか。エマさんになら出来る。けれど、エマさんには、自らの手で血を染めるようなことがあってはならない。それだけは、絶対に阻止しなければならないんだ、と、そうリアムは強く思った。
新生オメガのメンバーは、トップシークレットの場所である、アームキャリー製造工場に案内された。
彼らの目の前で、最新型のアームキャリーが生まれようとしていた。
戦闘模擬テストで得た、個人の性格やクセなどの蓄積されたデーターが頭脳に埋め込まれていく。
攻撃力のある者は重いボディでパワーがある大型機、防御力のある者は軽量の小型機が選ばれた。
「好きな色を選んでいいわよ。まずは、年長者のレオンさんからね」
メンバーは、機体名と塗装色をそれぞれ選んでいく。
「俺は、空の王者と呼ばれる鷲、ドイツの国章でもある『アドラー』、色は、そうだな、ブラウン、茶色が良い」
レオンが言うと、
「俺は、フランス語で疾風という意味の『ラファール』、芸術的でお洒落なパープル、紫色が良いな」
とナタンが言った。
「俺はライオンの意味の『レオン』。色は白が良い。俺の好きなクラブチームのユニホームの色だから」
ウーゴが言う。
「俺はロシア皇帝の『ツァーリ』が良い。色は赤だ」
とイバンが言った。
続いてハオュが言う。
「じゃあ、私はエンペラー色の黄色かな。名は、母なる河、黄河『ファンフー』でお願いします」
「僕も同じ大河にちなんで、ソウルに流れる漢江、『ハンガン』が良いな。五方色の一つで、レオンさんの色とかぶるけれど、守護神とされる白虎の白色が良いです」
「オレは、地元ニューヨークにそびえ立つ自由の女神『リバティ』、世界一有名な銅像だろ。機体の色は、女神と同じ色の緑だな」
とノアが誇らしげに言った。
「俺は、日本を象徴する富士山の『フジ』。そして、機体の色は、頂に積もった白銀の雪のようなシルバーが良い」
ハルトが言うと、
「俺の機体名は大和で『ヤマト』、色は、英雄機の青で良いんだよね」
チームメイトを見回しながら言うと、誰も異論はなかった。
「じゃあ私は、ユウトの、大和ゆかりの飛鳥で『アスカ』、色は夕日に染まった、朱色のカーマインかな」
そうサクラが言って、ユウトの方を見た。
二人が嬉しそうに見詰め合う。
「さっきから言おうと思ってたんだが、お前達、いつも一緒にいて、ベタベタし過ぎなんだよ」
ノアが言うと、
「そんなことないよ、姉として……」
慌ててサクラが言うが、言い訳の言葉が浮かばずに黙り込む。
「きょうだいって、そういうもんだろ」
色男のナタンが二人を庇った。
「オレにも、弟が二人いるけど、全然寄り付かないぞ。だから、きょうだいの仲の良さが分からないんだよな」
「そこは、男兄弟だからだろう。それにしても、弟が寄り付かないって、どんな兄弟関係なんだ? 君が特別じゃないのかい」
「ふぅーん、そんなものか? きょうだいって」
ナタンに諭され納得したノア。
そんなノアが、形作られていくアームキャリーを見渡しながら、
「しかし、きらびやかな部隊だな、これじゃ目立ち過ぎるだろ」
そう言うと、
「だから良いのよ。相手を引き付けられるし、オメガってだけで恐れさせることも出来るんだから」
エマが説明し、
「派手な色は、パイロットの腕が良いってことですから」
とリアムが補足する。
「今度のアームキャリーは、人工知能を搭載していないの。私のアリスちゃんを調べて分かったんだけれど、オシリス星は、人工知能にハッキングする技術を持っていて、アームキャリーを支配される恐れがあるから、あえて人工知能は搭載しないのよ。でも、レボリューション型なので、修復機能は備えているわ。また、全てのアームキャリーのデーターはネットワークを介して共有出来るのよ」
「まるでオンラインゲームだな。仲間と協力して敵を倒すんだろう」
ゲームに詳しいノアが、分かり易く言うと、
「もう、なんでもゲームに例えて言うんだから」
と呆れるエマだった。
「リアムは特別だけど、総勢十一人かぁ、まるでアメフトだな」
アメリカンフットボール好きのノアが言うと、
「おいおい、それを言うならサッカーだろ」
負けじと、サッカーを愛するウーゴが言った。
「どちらのスポーツも、攻撃・オフェンス力と守備・ディフェンス力があり、状況によってフォーメーションを使い分けると良いですね」
ハオユが冷静に判断した。
オメガのメンバーは、完成したばかりの、それぞれに特徴ある形状のアームキャリーに乗り込んだ。
そして、試運転のために大海原へと飛び立った。
相性の良いアームキャリーを獲た、新生オメガ。
柔軟かつ迅速な対応を可能にした、戦闘力を最大限に発揮するためのメンバーの配置は完璧なもので、大宇宙・オム二バース世界に、一個艦隊に匹敵する最強の部隊が誕生したのだった。




