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体験終了

掃除洗濯家事嫌い~(笑)

うちにもメイドさんほしい~!

メイド体験は思っていた以上に大変だった。掃除班、洗濯班、買い出し班……。どれをとっても肉体労働。肉体労働。肉体労働……。


体力自慢じゃないと務まらない!!


毎日ベッドに沈み込みながら自分の浅はかさを恥じたルビー。

一日の仕事を終えて宛がわれた部屋に戻ってくるたびに一人反省会。

体験でさえへとへとのルビー。これが本職となれば容赦なく仕事量は増え、責任も重くなるだろうことは想像に難くない。


やっていける自信ない……。こんな情けない私なのに、他の皆さんてばあんなに動き回っているのに、ちっともキツそうに見えないし、ムキムキじゃないし、むしろしなやかってゆーか? どうなってんの?


一日中せわしく働いているのにもかかわらず、一つ一つの動作も洗練されていてガサツさは微塵もない。仕事の時だけではない。プライベートな食事のマナーなどもちゃんと教育されている様子。さすがは伯爵家と言うべきか。


ここで働かせていただいたら、ほんと、いい行儀見習いになると思うわ。

でも――


何かが違うと感じながら、うとうとと眠りにつくルビーだった。




一週間はあっという間に過ぎ、ルビーのメイド体験も終了。

「一週間、大変お世話になりました。とてもいい経験が出来ました」

来た時同様、深々とお辞儀をするルビー。


タンザナイト家の玄関ホール。

ルビーとリリィのお見送りに、タンザナイト伯爵夫人以下、屋敷の者たちが勢揃いしている。そして、前回同様「遠縁のお嬢様にもここまでなさるんだぁ! すごー!!」と感心しているルビー。遠縁ではなく実の娘なのだが、ルビーには関係のない話。


「それはよかったわ。もし本当にお勤めをお考えならばぜひうちにいらっしゃい。あなたならとてもいいメイドさんになれるわよ」

にっこりと微笑みながらタンザナイト伯爵夫人はルビーに声をかけた。

「勿体ないお言葉でございます!!」

慌ててまた頭を下げるルビーに、

「いいえ! ルビーはとっても頑張っていたわよ! 自信を持って?」

リリィも微笑んで太鼓判を押す。

「ありがとうございます!」

うれしさに頬を上気させるルビーだった。


「じゃ、そろそろお暇しましょう」


それまで黙ってニコニコとしながら二人を見守っていたディータの声で、屋敷を後にすることになった。ディータはもちろん、リリィを迎えに来たのだ。

「「はーい」」

二人揃って返事をし、屋敷を出た。


「もうすっかり暗くなってしまったわね。ルビーは私たちが送っていくから安心して?」

ニッコリと宣言するリリィだけれど、ディータとの貴重な二人時間を邪魔する勇気はないルビー。

「大丈夫よ! 私一人でも平気だからお姉ちゃんはディーさんとゆっくり帰って?」

慌てて手を前でブンブンふりながら辞退する。

「だめよ。いくら安全な王都とはいえ、夜はさすがに物騒よ。いいから、さ、行きましょう」

困惑するルビーを他所に、その手を摑まえてずんずん歩き出すリリィ。

困ったなぁ、と思いディータを見遣るが、

「そんな気を使わないで」

と、こちらにもにっこりと微笑まれてしまった。

「……ありがとうございます」

二人の優しさに、ほっと心が和んだ。




屋敷を出、正面の門を出たところで、ルビーの手を引いていたリリィが立ち止まった。


「あっ」

「何? どうしたの? お姉ちゃん?」

「どうしたの? リリィ? ……ああ、そういうことか。じゃあ、僕たちはお邪魔だね? リリィ」

「ええ、そうみたいね」

「って、何? え? え?」


急に立ち止まったかと思うと、一人納得した様にコクコク肯いているリリィに、初めは怪訝な顔をしていたディータも、リリィの視線を追ってすぐ、納得顔になる。

リリィが陰になって前が見えていないルビーだけが未だ不思議顔。

なんだなんだ?? とクエスチョンマークをふんだんに飛ばしているところに、


「ルビー」


聞き馴染んだ声が、リリィの向こうから聞こえてきた。


「え? ジェダ? えええ?」


リリィの陰から顔を出し、ようやく前を確認するルビーだったが、目の前に幼馴染を見つけて驚くばかり。

「どこかからの帰りの途中? もう暗いよ。早く帰らないとおばさんにこっぴどく怒られるよ?」

ジェダんちのおばちゃん恐いんだよね~! などと思いながら幼馴染の身の上を心配する。

ジェダイトの母親は、見かけはなよなよと美人なのだが、いかんせん、男ばかり3人も育てたのですっかり中身は肝っ玉母ちゃんなのだ。隣のルビーやその弟にはとびきり甘い優しいおばちゃんなのだが。


「違うよ。ルビーが今日帰ってくるっておばさんから聞いたから迎えに来た」


ちょっと拗ねたような顔をしながら、そう告げたジェダイト。

「え? そうなの? あら、ごめん」

意表を突かれた形になったルビーは、何故か謝ってしまった。

「いや。ほら、帰ろう。リリィさんたちのお邪魔するわけにいかないだろ?」

「あ、そっか!!」


ジェダはわざわざお姉ちゃんたちを私から解放するために来たのね! ……うう、私ってばほんと気の利かない子だわ。


ジェダの登場に納得のいったルビーだが。


「それ、ちょっと違うよね」

「うん。ルビーちゃん、すごい勘違いしてるね」

「鈍感?」

「天然?」

「わざと?」

「ああ、僕、ジェダイトくんがかわいそうになってきたよ……」

二人の後ろでこそこそ話すリリィとディータ。




噴水大広場まで四人で一緒に帰り、

「じゃあ、よく考えてみて? 体験を踏まえて自分のやりたいことが見つかるといいわね!」

優しくルビーをハグするリリィ。

「うん、ありがとうリリィお姉ちゃん。ディーさんもおやすみなさい」

「「おやすみ」」

大広場を南下するリリィとディータ。北東方向に進むルビーとジェダイト。

笑顔で手を振り、各々家路についたのだった。


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