009
時間不明
地球
地域不明
ヘル視点
Holy shit、ここ、クソ寒い。すみません、今の俺にはこれしか言えない。
全身が震えるほど寒い。
俺の隣にいるのは、俺の先生だ。
先生は笑いながら言った。
「現場に着けば、そんなに寒くなくなるさ。」
俺は文句を言った。
「何の説明もなく、人に袋を被せて現場まで運ぶ。」
「いつから先生の国は誘拐集団になったんですか?」
先生は苦笑しながら後頭部をかいて言った。
「普通の手続きだと記録が残る。」
「それに、お前の性格も微妙に面倒だからな。」
「こうするように提案したのは私だから、悪かったな~」
「先生の誠意は札束で表現してください。」
「ところで、ここはどこですか?」
先生は笑いながら言った。
「言えない。」
「ただ、目的地にはものすごく巨大な隕石クレーターがある。」
「推定でだいたい8キロくらいだ。」
「面白いだろ?」
俺は驚いた。
宇宙とかについては素人だけど、それでも8キロくらいの隕石クレーターとなると、それがどれほどの規模なのかくらいは分かる。地震一回で終わるような話じゃない。
俺は言った。
「どうしてニュースで見なかったんですか……」
先生は笑いながら言った。
「あるぞ。」
「地震の報道はあっただろ?」
「ただ、彗星の衝突については言ってないだけだ。」
「ははは。」
俺は冷や汗を流しながら答えた。
「先生の国、怖すぎますよ。」
「この情報はずっと封鎖するんですか?」
先生は当然のように答えた。
「公開しても、ろくなことにならないからな。」
「それに、もし良いことがあるなら、当然先に自分たちでいただく。」
「これが秘密保持協定だ。」
「適当にサインしてくれ。」
俺は呆れながら言った。
「先生、秘密保持協定にサインする順番と意味がどこにあるのか分かってます?」
先生はとぼけたように言った。
「結局、後から追及された時に責任逃れができる書類にすぎん。」
「ははは。」
俺は言うしかなかった。
「何が『ははは』だよ!」
「この邪悪な大人め!」
現場に到着。
正確に言うと……
8キロ先にある隕石クレーターによってできた丘だった。正しくは「クレーターリム」と呼ばれる。
なるほど。
どうりで俺が呼ばれたわけだ。
先生が口を開く前に、俺は言った。
「先にこの丘を削って出入口を作って、大型移動実験室車両やその他の車両が安定して現場まで来られるようにするんですよね?」
先生は微笑みながらうなずき、親指で集合地点を指した。そこにはすでに、俺に必要な車両が用意されていた。
まあいい。
ここまで準備されているなら……
仕事を始めよう。
本来なら土木計画を担当する人間が、最適な掘削地点を測量してから始めるべきだ。だが、今のところ、そんな役割の人間は見当たらない。どこから掘り始めるかは、俺自身で判断するしかない。
少なくとも、クローラーが安定して往復できるルートは確保しないといけない。そうして俺は、クローラー式油圧ショベルを運転して作業を開始した。クローラーの動きから、地面の緩みを感じ取る。
地盤が安定していない。
何しろ隕石クレーターだ。
柔らかさは冗談じゃない。
まあいい。
考え方を変えよう。
土を削る力をかなり節約できる。俺はこの地域の土壌の性質に身体を慣らしながら、機械の動きに合わせて作業速度を上げていく。見えている大型移動実験室車両の大きさを基準に、影響が出ない程度まで削り、仕上げは中型油圧ショベルに切り替える。
仕上げがだいたい終わったところで、俺は車両から降りた。結果、外はまだ運転席に戻りたくなるほど寒かった。途中で先生に捕まって連れ戻された。ちなみに、先生の身長は190センチで、アーノルド・シュワルツェネッガーのような体格をしている。
身長170センチ、体重65キロの俺を片手で持ち上げるくらいは問題ない。俺はそのまま先生に片手でぶら下げられ、集合地点まで連れていかれた。どうやら現場には、すでに人が集まっているようだ。
だが、この人数では……
10人でも少なすぎる。
いったいどれだけ秘密なんだ?
先生が俺に簡単に紹介してくれた。だが、俺はあまり興味がないので、だいたい分かればいい。軍から派遣されたボディーガードが4人。
先生が調査指揮官。
俺が操縦士。
残りの4人はそれぞれ、地質学者、考古学者、極地専門家、科学者。
ちなみに俺が一番若い。
先生以外の全員が俺の顔を見る目は、
「本当にこいつを連れていくのか?」
だった。
ははは。
俺もそう思う~
俺を運転席に戻してくれない?
先生は現場の空気をはっきり察し、笑いながら皆の前で俺の背中をバンバン叩き、皆に紹介した。
「このガキは運転だけなら問題ない。」
「それ以外の時は、存在しないものとして扱ってくれ。」
さすが先生。
俺の紹介の仕方が失礼すぎる。
残念ながら、反論できるところがない。
先生は振り返って俺に聞いた。
「丘はもう削ったんだな。
車両を入れてもいいか?」
俺は簡単に答えた。
「まだ無理です。」
「前方の地面はかなり土質が柔らかい。」
「これから先に中型ホイールローダーで一度路面を踏み固めて、その後に大型ロードローラーを一往復させて、路面を締め固めたほうがいいです。」
先生は少し考えてから言った。
「なら、最初の一往復は我々も一緒に運んでくれ。」
「10人なら、少し詰めれば問題ないだろう。」
「ボディーガードはバケットに乗せて、残りの人間はローダーのデッキに乗れば問題ないだろ?」
先生の思考パターンは相変わらず、かなり強引だ。
だが……
俺はうなずいて言った。
「排気管に触れなければ、たぶん大丈夫です。」
「中型ホイールローダーも小さくないですし。」
「それに路面の状態は、俺がまだ感知できます。」
「10人分くらいなら、正直そこまで変わりません。」
先生は笑ってうなずき、振り返って皆に言った。
「そういうことだ。」
「皆、荷物を持って乗ってくれ。」
こうして俺は、中型ホイールローダーを運転し、皆を乗せて目的地へ向かった。
途中……
あ、まずい。
俺は元々進む予定だったルートを避け、目的地へ向かおうとした。すると、車両に乗っていた考古学者が言った。
「なぜそのまま進まない?」
「直線のほうが進みやすいんじゃないか?」
やっぱりこうなるよな。
どう説明しよう?
だが、俺も説明するのが面倒なので、先生に任せることにした。
俺は先生を呼んだ。
先生は後頭部を手でかきながら言った。
「俺も説明するの面倒だな。」
「一回見せれば分かるだろ。」
俺も先生と同じで、説明するのが面倒なタイプだ。俺はホイールローダーを止めた。角度を調整して、ゆっくり後退する。ちょうどいいと思ったところで、すぐに車両を前進させる。
その直後……
さっき俺たちが迂回した場所が崩れた。ホイールローダー一台を丸ごと飲み込めるほどの亀裂ができた。先生はこの時、崩落した場所を指差しながら、まるでガイドのように言った。
「そういうことだ~」
その後、皆の俺を見る目が変わった。
現実的な連中だ。
特に地質学者の目なんて、宝物を掘り当てたみたいになっている。
そんな目で見るな。
俺はすごく居心地が悪い。
「この任務が終わったら、俺は生まれたばかりの孫娘を抱きしめに帰る。」
先生はそう言った。
「先生、こんな時に死亡フラグみたいなセリフを言わないでください。」
俺もそうツッコむしかなかった。
「だが、目の前のものを見たら、こう言うしかないだろ。」
先生は理由を言った。
まあ、俺にも理解できる。
遠くからでも見えていた。
だが、目的地に到着するまで、その実感は湧かなかった。
遠くから見えていた氷山……
それは墜落地点の中心にあった。氷山の内部には、極めて巨大な、まるでSF小説にしか登場しないような未知の物体が包まれていた。
まるで宇宙船だ。
この現場の人数で、これを調査する……正直、いじめと変わらないだろ。
俺は何も考えないことにした。
現場は専門家に任せる。
俺は中型ホイールローダーを運転して戻りながら路面を踏み固め、ついでに最適なルートを見つけ、その後、すべての車両を順番に運転して現場まで持ってくる。どうやって全部の車両を現場まで持ってくるのかって?
簡単だ。
電動オフロードバイクを一台持っていけば、何度でも往復できる。まあ、電動オフロードバイクを固定するのも、簡単なことではないけどな。
疲れる。
俺の仕事は、車両がすべて揃ったからといって終わったわけではない。皆が現場で一日休んだ後、作業を再開した。俺は相変わらず車両を運転しなければならない。今回の作業は、油圧ブレーカーを装着した油圧ショベルで氷を破壊することだ。
もしかしたら、こう思う人もいるかもしれない。
「氷や地質には研究する価値がないのか?」
ある。
ただ、その日のうちに現場に元々存在していた物質だと確認できたので、問題ない。俺は油圧ショベルを交代で運転して氷塊を移動させたり、油圧ブレーカーを使って氷を破壊したりする。普通ならかなり時間がかかるし、二人必要になる。
だが、油圧ブレーカーを厚い氷層の一点に当てれば、一気に氷層を突破できる。
それほど難しくない。
それに、メリットもある。
ここは氷の層で、環境もかなり寒い。少なくとも俺は、しばらくの間は大規模な崩落の危険を心配する必要はないと思っている。
目標が遠すぎる場合を除けば。
一日かかった。
俺は氷層を貫通した。
途中で小さな事故が起きた。
氷による視差で見える角度がずれていたため、貫通した時に未知の物体の外殻にぶつけてしまった。だが、まったく傷がついていない。ふう~
びっくりした。
これだけ長い時間をかけて作業したのに、一撃で現場を壊してしまうのは嫌だからな。
うん。
まあ、傷はない。
知らなかったことにしよう。
俺はさらに少し時間をかけて仕上げの作業を行った。現場を片付け、研究員たちが安心して作業できるようにする。大型移動実験室車両も所定の位置についた。
これで俺の仕事はない。
途中でサボりたいとは思ったけど……帰りはやっぱり俺が運転しなければならない。だから、先生が言った通り、
「皆さん、俺が存在しないものとして扱ってください。」
そう思ってテントに潜り込もうとした時……
「そうはさせんぞ。」
「人手が足りない、お前も手伝え。」
先生は相変わらず片手だけで俺を暖かいテントから引っ張り出した。
奇妙だ。
科学者は絶えず機器を使って観測している。だが、彼の顔には疑問がいっぱい浮かんでいる。俺には理解できない専門用語をいくつも口にしている。分からないところは、俺は先生に聞く。先生は顎に手を当て、疑問そうな表情を浮かべながら言った。
「簡単に言うとだな。」
「放射線や赤外線など、さまざまな信号を検知する機器が、すべて反応を返していない。」
「この未知の宇宙船は、驚くほど何もない。」
俺は思った。
よかった。
放射線はない。
……どうやら、そう簡単には言えないらしい。俺は、さっきうっかり油圧ブレーカーでぶつけた時のことを思い出して言った。
「もしかして、こいつが食べたんじゃないですか?」
皆が驚いて振り返った。
あ、まずい。
理由を考えないと。
でも、嘘をつくのもまずいので、本当のことを言う。
俺は言った。
「油圧ブレーカーを使っていた時、振動が吸収されているような感じがありました。」
「理由は分からないけど、たぶんこいつが原因じゃないですかね。」
科学者はそれを聞くと、すぐに新しい機器を取り出した。
測定した後、言った。
「彼の言う通りです。」
「ソナーに異常があります。」
「反射がない。」
「軍用戦闘機よりもひどい。
完全に吸収しています。」
先生は笑いながら言った。
「なるほど。」
「だから影響範囲がこれだけだったのか。」
科学者も笑って言った。
「これなら納得できます。」
「どれほどの吸収能力があるのかは分かりませんが、8キロほどの隕石クレーターを作ったのに、被害がこの程度だった。」
「原因は、それ自体の吸収能力にあるわけですね。」
皆が答えを知ったものの、次の行き止まりになった。
どうやって先に進む?
取っ手やスイッチのようなものは何も見つからない。ほかに研究できそうな場所も見当たらない。これがいわゆる、群盲象を撫でるってやつか?
誰かが提案した。
「油圧ブレーカーを装着した油圧ショベルで、壊してみないか?」
当然、反対する者もいれば、賛成する者もいる。
匿名投票は6対4。
結果は、
「試してみよう。」
俺は油圧ブレーカーを装着した油圧ショベルを運転して、破壊を試みる。だが、さっきと同じように、何の傷もつかなかった。
痕跡すらない。
俺は少し考え、できるだけ細かく調整してみることにした。油圧ブレーカーの角度とチゼルを調整し、両方を完全に水平に保つ。プラスマイナスゼロの角度で、完璧に衝撃を与える。ものすごく恐ろしい音はするが……
やはり、まったく痕跡がない。
皆でさらに半日ほど模索を続けた。
それでも何の成果もなかった。
俺の暇つぶし病も発症し始めた。だが、ここにいる連中にいたずらをしたら、俺の命が助かる保証はない。俺はもう気にしないことにした。地面に横向きになり、円寂(涅槃)のような寝姿勢に入った。その瞬間、俺は何かに気づいた……
先生は俺の姿勢を見て言った。
「どうした?」
「そんなに早く昇天するのか?」
俺は笑って言った。
「まだ早いですよ。」
「でも、少し悟ったことがあります。」
「先生、未知のものを見る時は、視点を変えて、さらに少し広く見たほうがいいと思います。」
先生は俺の言葉から何かを感じ取ったようだった。そして俺と同じ姿勢で地面に横になり、未知の宇宙船を見た。ほかの科学者たちも、それを見て同じように横になった。ボディーガードたちも困惑した顔をしながら、同じように横になって見始めた。
うん……
お前ら、本当にいいのか?
結果として、皆が見たものはたぶん同じだった。
あまりにも大きかったからだ。
皆、目の前の一部分だけを見て、全体を見落としていた。俺たちが見ていたのは、どうやらドアの下だった。実際には、そのドアはかなり大きい。少なくとも8尺の高さがあり、しかも少し斜めになっているため、一目では角度を捉えにくい。
つまり……
皆、宇宙船の大きさの基準を、人間の範囲内で考えていた。その後、俺は油圧ブレーカーを装着した油圧ショベルを使って、見える範囲を広げた。門全体と、その周囲が一目で見えるようにするためだ。
チームの活動範囲も広がった。
どうやら、あの門の大きさを見たことで、皆の視点も変わったようだ。何しろ、明らかに人間の範囲ではない。万が一に備えて、皆も生化学防護服を身につけた。
何しろ……
万が一、開けたら「花が咲くタマタマ」が出てきたら笑える。探索を続けた結果、「右手の法則」がここでも使えることが分かった。確かに、明らかに区切られた四角形の領域がある。だが、高さがかなりあるので、俺が油圧ブレーカーで叩いてみることになった。
俺は、吸収が弱くなっているのは感じられるものの、それでも硬いことに気づいた。だから、押してみることにした。
確かに、この部分は動かせる。
だが、かなり強い推力が必要だ。俺は角度を合わせ、油圧ブレーカーの力を利用して、力いっぱい押し込んだ。仕掛けが作動したような感触が伝わってきた。
蓋のような部分が飛び出した。
俺は油圧ブレーカーのチゼルを調整して蓋を開けると、中に取っ手があることに気づいた。
だが……
それも人間が触れられる大きさでも高さでもない。
もちろん。
やっぱり俺に任せるしかない。
俺は油圧ブレーカーのチゼルで、手の動きを真似するように動かしてみた。角度を調整した後、俺は皆に合図を送った。俺たちは生化学防護服が完全な状態であることを確認した。ボディーガードたちもライフルを構え、大門に向けた。
俺はそのまま取っ手を回した。
大門がゆっくりと開いた。
最初に見た時、内部はかなり暗かった。皆の探照灯は、まるで吸収されたかのようだった。しばらくすると、内部に照明機能があるらしく、微かな光が広がり始めた。
俺たちが見た光景は……
とにかく広く、そして天井が高かった。先生は顔を上げたり下げたりしながら周囲を観察し、言った。
「煙もないし、蒸気もない。」
「上下にも虫の卵はない。」
「ちょっと残念だな。」
俺はツッコむしかなかった。
「先生、それ俺のセリフです。」
「それに、普通ならああいうものは一番奥に置いてあるはずでしょう。」
「入口に置いたらネタバレですよ。」
科学者はおそらく機器でここの状態を測定していたのだろう。
そして言った。
「空気に問題はない。」
「ただ、ここの状況と空間配置をまだ完全には理解できていないので、今はまだ生化学防護服を脱がないほうがいい。」
皆がうなずいた。
ボディーガードは前に二人、後ろに二人という配置になり、まずこの宇宙船の現在の空間配置を理解しながら移動することになった。
ところで……
今は俺には関係ないよな?
ここで「俺は外で待っています」と言ったら、空気が読めないと思われるかな~?先生が突然、俺の後ろから言った。
「ホラー映画の定番だと、こういう時に最初に犠牲になるのは、だいたい一人で外に残って待っている奴だ。」
「先生、俺まだ何も言ってないですよ……」
探索が始まってから、かなり長い時間が経った。たとえこれが宇宙人の宇宙船だと言われても……それにしても、めちゃくちゃ大きい。
観察に集中するのも難しい。
集中しすぎても、ただ虚しくなるだけだ。だから俺は歩く速度を落とし、隊列の後ろを歩くことにした。皆の反応を直接見て、気を紛らわせる。簡単に言えば、少数の人間だけに注意を向ける。周囲の作業を観察するのは、他の人たちに任せよう。
あれ……
あの人……
運が悪いな。
むしろ自分から最後尾についたせいで……また一つ、注意しなければならないことが増えた……探索が深くなるにつれて、広大さからくる不気味さが、皆を少しずつ侵食していく。戦闘員ではない研究員たちにとっては、大変だろうな。
うん、俺もだよ。
俺も非戦闘員だ。
俺、すごく疲れた~先生は隊列の状態が良くないことに気づき、皆に先に休むように言った。俺も休もうとしたところ、先生に引っ張り起こされ、集団の外へ連れていかれた。
俺は苦笑しながら言った。
「先生、俺は非戦闘員ですよ~」
先生は笑いながら言った。
「嘘つけ。」
「お前、静かすぎる。」
「こういう時のお前なら、くだらないことを言うはずだ。」
「なのに何も言わない。」
「どうした?」
俺は低い声で言った。
「先生。」
「ボディーガードは先生が探した人ですか?
それとも国から派遣された人ですか?」
先生は言った。
「国から派遣されたほうが安い。」
「あら……」
「まさか、変なものが混じっている?」
俺はツッコんだ。
「幽霊みたいに言わないでください。」
「先生も俺も、そんなもの信じてないでしょう。」
「はっきり言えば、『身内じゃない』ってことです。」
「最後まで行ったら、気をつけたほうがいいです。」
先生は笑いながら言った。
「じゃあ、誰だ?」
「根拠は?」
俺はボディーガードのほうを見ずに、ヒントを出した。
「一番疲れて見えて、一番頭が悪そうな奴。」
先生はツッコんだ。
「お前、毒舌すぎるぞ。」
俺は続けて言った。
「だって俺が最後尾にいた時、本来なら周囲を警戒するはずのそいつが、逆に全員の位置と方向を気にしていた。」
「時々、俺のほうも盗み見ていた。」
先生は言った。
「気のせいじゃないのか?」
俺は言った。
「は。」
「隊列から外れたことが気になるなら、俺に直接声をかけるか、俺を見たり、合図を出したりすればいい。」
「でも、あいつは慌てていた。」
「明らかすぎる。」
先生は眉をひそめて言った。
「面倒なことになったな。」
「今解散したほうがいいが、そうすると情報が漏れる。」
「今ここで捕まえてもいい。
理由なんて適当に作ればいい。」
「ただ、怖いのは……」
俺は先生の言葉を引き継いだ。
「馬鹿すぎるから、一人とは限らない。」
「目くらましの可能性も排除できない。」
「だから先生~、次からはちゃんと金を使って災いを避けてくださいね~」
先生は笑いながら言った。
「勉強になった。」
「次からはボディーガードを身内から選ぶ。」
「今回は見逃してくれ。」
「研究員も私が選んだから、先に除外できる。」
俺は当時の状況を少し思い返した。
ダメだ。
隙がない。
いや……
馬鹿があまりにも分かりやすい。
かなり成功しているのか?
俺は言った。
「最悪。」
「全員だったら?」
「どうなる?」
先生は言った。
「その時、お前は何人くらい片付けられる?」
俺は笑いながら言った。
「先に先生を盾にして、逃げます。」
先生は突然俺を抱き上げ、すりすりしながら小声で言った。
「あら~、そんなに冷たいこと言うなよ~」
「別に殺せって言ってるわけじゃない~」
俺は怯えながらもがいて言った。
「ふざけんな!」
「生け捕りのほうが難しいでしょうが!」
「相手は銃を持ってるんですよ。」
「しかも全身、防護装備を着てる。」
「俺を死なせるつもりですか?」
待て。
危うく先生のペースに乗せられるところだった。俺は先生が連れてきた数人の科学者を見る。
少し考えてから言った。
「先生、先生が連れてきた人たちと少し打ち合わせしてもらえますか?」
先生は笑いながら言った。
「ほかに何が必要だ?」
俺は、ある映画の主人公のセリフを真似して言った。
「Xylitol, lots of Xylitol。」
(The Matrix:Guns, lots of guns)しばらくして、科学者が皆に言った。
「今のところ、先には進まない。」
「皆、先に生化学防護服のフードを外していいぞ。」
「このほうが休みやすいからな。」
皆はすぐに言われた通り、フードを外した。ある者は息を整え、ある者は息を切らしていた。極地専門家は袋を何個か開封した。
皆に配ってから言った。
「これは極地環境向けのエネルギーパックだ。」
「少し甘いが、少し我慢してくれ。」
皆も特に考えず、すぐに飲んだ。
「うん。」
俺は言った。
「本当に。」
「俺には甘すぎる。」
先生は笑いながら言った。
「この環境だからな。」
「文句を言うな。」
俺は飲みながら提案した。
「皆がここで休むなら、俺は先にここを離れて、車両を運転して皆を迎えに来たほうがいいんじゃないですか?」
「どうせここは、ありえないくらい広いですし。」
先生は少し考え、科学者と考古学者を見て、同意するようにうなずいてから言った。
「それもいいな。」
「一人で戻って大丈夫か?」
「ボディーガードを一人つけるか?」
俺は心の中で思った。
いい先生だな。
結局、一人こっちに回してくるのか……俺も仕方なくうなずいて言った。
「分かった。」
「そうしましょう。」
Motherfucker。
こんなことなら、最初から賛成しなければよかった。よりによって、一番体格がよくて、いかにも強そうな奴を俺につけるとはどういうことだ?
俺の戦闘力を当てにするなよ?
俺たちが未知の宇宙船の入口まで戻った、その瞬間――
「ぐるるる……」
うん、俺じゃない。
体格のいいボディーガードの音だ。どうやらXylitolが効いてきたらしい。
しかも、効果抜群だ。
ほら、体格のいいボディーガードの顔色が崩れている。
もしお前が無実だったなら……
悪かったな。
笑。
俺は、いかにも状況をよく分かっているような顔で言った。
「あの大型移動休憩コンテナ車にはトイレがあります。」
「ただ、かなり狭いので、装備は脱いでくださいね。」
相手は青ざめた顔で言った。
「ありがとう。」
そう言った後、すぐに走っていった。
計画よりもずっと順調だった。
なぜか?
俺は暴力を使う必要がまったくなかったからだ。俺は軽くハンマーでトイレのドアを叩き、動かないようにした。念のため、さらにスコップを一本差し込み、揺れる隙間を塞いだ。彼の装備を開き、携帯電話と無線機の記録や周波数を調べる。
まず表向きの通常通信を除外し、暗号化された通信や隠しメッセージを確認する。
パスワードなし?
ありがとう。
親切だな~俺は慎重に調べて照合した後、確認した。
Oh my God。
これはまずい。
ボディーガード全員が……
表向きは先生の国。
裏では他国のために働いている……
先生のほうは大丈夫か?
俺はボディーガードのライフルと装備に手を伸ばした瞬間、首を横に振った。俺にできることは何なのか、俺自身がよく分かっている。
うまく利用しよう。
俺は顔を上げ、現場に置かれていた新品のハンヴィーを見る。先生視点これはかなりまずいことになった。
ヘルに一人つけようと思った。
こちらの負担を減らして、成功率を上げられると思った。ところが、相手はあっさり正体を隠すのをやめた。そのまま銃で俺たちを拘束した。おそらく、今の人数でも十分だと判断したんだろう。
それに、もし身体に異常が起きても、今の3人なら交代でトイレに行ける。
ヘルが言った通りだ。
最悪なのは、ボディーガード全員だった場合だ。
ヘルはどう対処するんだ?
車で轢くのか?
笑。
あいつ、本当にやりそうだな。
ヘルが無事であることを祈るしかない。ヘル視点俺はハンヴィーを運転して未知の宇宙船の内部へ入った。合流地点へ向かいながら、作戦を考える。最悪の場合、誰かが先生を人質にしていたら……そのまま車で突っ込んでもいいよな?
どうせ先生は、かなり頑丈そうだし……でも、人質が他の人だったら、さすがに突っ込むのは怖いな……先生視点
明かりが見えた。
だが逆光で、中にいるメンバーの姿は見えない。
しかし……
たぶんヘルだろう……
俺は俺を人質にしているボディーガードに声をかけた。
「結局、みんな金のために仕事をしているんだ。」
「こうなることも、理解できる。」
「金が足りないなら、話し合おうじゃないか。」
「ただ、先に言っておく。」
「お前たち4人のボディーガードの給料を合わせても、ヘルの4分の1にも満たないぞ。」
俺を人質にしているボディーガードは、俺の言葉を聞いて言った。
「だから何だ?」
「向こうのボディーガードも俺たちの仲間だ。」
「それに、ここにある情報と研究成果は、あんな微々たる給料よりもはるかに大きい。」
「俺はそこまで馬鹿じゃない。」
そう言い終えると、彼はハンヴィーに向かってライフルを上に掲げる仕草をした。たぶん、向こうのボディーガードに、もう演技をする必要はないと伝えたかったんだろう。
だが……
止まったハンヴィーからは、誰も降りてこなかった。ボディーガードたちが何かおかしいと感じたその時……ハンヴィーのエンジンが切れた。
ライトも消えた。
周囲が一瞬で暗闇になった。
かなり細い音が聞こえた。
「これは……」
「おい! やばい!」
俺は瞬間的に頭を低くした。
俺を人質にしていたボディーガードは、まだ何が起きたのか理解していなかった……
その頭が吹き飛ばされた。
幸い、頭は首につながったままだった。だが、後遺症はあるだろうな……残りの二人はまだ反応できていない。ただ、その細い音が、咆哮のように聞こえた。
しかも、とても速い。
すぐに次の標的を捉えた。
一瞬、赤い光が走った。
赤い光が美しい弧を描いた。
また一人のボディーガードが吹き飛ばされた。
かなり遠くまで飛んだな……
最後に残ったのは、一番馬鹿そうで、一番疲れて見えるボディーガードだった。そいつはライフルを持ち上げ、赤い光の位置を狙って撃った。
だが、何の成果もなかった。
赤い光はすぐに消えた。
再び、空気をあの細い音が切り裂いた。細い音なのに、どんどん近づいてくる。
赤い光が再び灯った時……
その一番馬鹿そうなボディーガードは、跳ね上がった車に直接轢き飛ばされた。
うわ。
胃液と鼻血が全部噴き出している……
現場が静かになった。
ライトが点いた。
そこにいたのは……
あのヘルだった。
運転していたのは、寒すぎたためハンヴィーの後方に置いていた電動オフロードバイクだった。ヘル視点科学者と極地専門家が、バイクに轢き飛ばされた被害者たちを調べた。
結果は、まあ大丈夫だった。
一番ひどかったのは、最初に先生を人質にしたボディーガードで、脳震盪と首の捻挫。
他の二人は普通の内傷と外傷。
一番軽かったのは、俺がトイレに閉じ込めたまま、まだ下痢をしていたボディーガードだった。
補足すると……
その下痢していたボディーガードは、最後には両手を上げて降参し、自分から手錠をかけてもらった。だが、俺たちと先生は素人じゃない。ボディーガード全員に手錠をかけ、その上から瞬間接着剤とテープで何重にも固定した。
後で外すのはかなり面倒だろうけど……その件は他の人たちに任せよう。先生も上層部に状況の変化を伝え、自分で新しいボディーガードを雇い、他の人員には秘密裏に送迎させることにした。同時に、補給物資と人員も追加された。
その後は、一連の大規模な作業が続いた。
残念なことに……
事態は終わっていなかった。
まだ探索されていない区域が、あまりにも多く、そして広すぎた。人数を元の3倍に増やしても、効率が少しスムーズになった程度だった。
丸々一ヶ月近くかかった。
俺たちは数日前になって、ようやく気づいた……この未知の宇宙船は、一層構造ではなかった。いくつもの異なる区域が存在していた。皆で分担して探索と研究を行った結果、徐々に範囲が絞られていき……残っているのは、おそらく最後の区画だけになった。
同時に、そこはこの宇宙船の最上部の区域でもある。しかも当時はあまりにも自然だったため、皆、気づいていなかった。俺たちは内部を、ごく自然に移動することができていた。
つまり……
単に「大きい」というだけではない。この未知の宇宙船は、内部の水平そのものを調整できる。
本当に後になって気づいた。
だが、ここまで来た以上、もう引き返せない。今さらあの奇妙な原理を研究し直すのも、俺の仕事じゃない。
専門家に任せよう。
俺は油圧ブレーカーを装着した油圧ショベルを運転し、最初に入口の大門を開けた時と同じ手順を、もう一度繰り返した。
大門は簡単に開いた。
先生が派遣したボディーガードが先に探索し、問題がないことを確認してから、先生が中へ入った。俺は門に異常があるかもしれないと心配だったので、まだ様子を見ていた。数人の研究員も先生について中へ入っていった。
俺は30分ほど観察し、問題なさそうだと思ったところで、油圧ショベルから飛び降り、自分も中を見てみることにした。
最初に見た印象は……
この区域は確かに、あの時より大きかった。だが、想像していたような観測窓のようなものは見当たらなかった。
ちょっと残念だ。
それとも……
俺が想像していた、観測窓のある宇宙船のほうがおかしいのか?
笑。
俺が足を踏み入れた瞬間――
地面が揺れ始めた。
俺と先生はすぐに反応し、皆に撤退するよう叫んだ。未知の宇宙船に異常が発生した時は、判断する前にまず逃げる。それが俺たちが決めた最大の共通認識だった。幸い、上層部に入っていた人数は少なく、撤退する速度も十分だった。
皆が未知の宇宙船の中段まで撤退したところで……
俺は気づいた。
扉が自動的に閉まり始めている。俺はすぐに振り返り、誰か取り残されていないか確認した。
Fuck。
先生がこの時、自分のふくらはぎを抱えていた。まさか、こむら返りを起こしている。
しかも、一声も出さない。
足手まといになりたくないのか?俺はすぐに戻り、先生を背負って、向きを変えて必死に走った。先生は歯を食いしばりながら言った。
「ヘル、お前……」
俺はすぐに言った。
「黙ってください。」
「呼吸が乱れます。」
先生は続けて言った。
「私の……孫娘……」
俺は最後まで聞かなかった。
全身の力を使い、先生を振り回すようにして、扉の外へ放り出した。そして先生に向かって中指を立てた。
「自分の孫娘は自分で面倒見てください。」
バタン。
閉まった扉には、何の反応もなかった。
俺は両手で壁に触れた。
全力で情報を受け取ろうとする。
いったい何が起きている?
受け取った情報はかなり混乱していた。だが、一つだけ理解できることがあった。この未知の宇宙船……
一隻じゃない。
分離式の宇宙船だ。
未知の宇宙船の中央部分が力を蓄えている。
氷層を突破しようとしている。
これはまずい。
俺に何ができる?
そう考えていた時、重力の変化を感じた。
違う。
この未知の宇宙船の水平が調整されているんだ。遠くから何かが落ちる音が聞こえた。しかも、ものすごく巨大な音だった。
まさか……
俺のほうへ落ちてきたのは……
さっき俺が扉を開けた油圧ブレーカーだった。俺は急いで、一番近くにある区画へ逃げ込んだ。
俺が身を隠した瞬間……
ものすごい衝撃音が響いた。
残念だ。
たぶん、廃車だな。
突然――
ものすごく強い下向きの力を感じた。
まさか?!
こんなに早く?!
しかも、この圧力は普通じゃないほど強い。吐き気がしても、吐くことすらできない。こういう感覚は経験したことがある……だが、ここまで暴力的なのは初めてだ。
押し潰されている俺は、全身を地面に密着させた状態で、この未知の宇宙船のとんでもない推力まで感じ取っていた。さらに、さまざまなノイズが一気に頭の中へ流れ込んでくる。今の俺の頭では、感じ取ることすらできない。ましてや考えることなど無理だ。
押し潰されている一秒一秒が、時間を引き延ばしているような錯覚を起こす。
まるで精神的な拷問だ。
何分経ったのか分からない……
明らかに……
重力が消えた。
俺は、さっき押し潰されて吐き出せなかった胃液を吐き出してから、周囲を見た。
俺のバッグが浮いている。
は。
こういう時は笑うしかないのか?俺は手を伸ばしてバッグを取ると、抱きしめた。
怖いからじゃない。
寒さを感じたからだ。
任務を受けた時よりも、さらに寒い……
まったく……
俺はその後……
行きたい……
ビーチ……
海辺……
バカンス……




