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重姫駆動  作者: 樹下繪本
PR
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005

現在、俺は新しいアパートのロビーで朝食を食べている。

いつもの軍用食の中にある、豆腐プリンみたいな合成物(?)だ。

今のところ、選べるものが少ないから仕方ない。

というより、

今の自分が一体何を食べられるのか、まだよく分かっていない。

今も少しずつ探っているところだ。

テーブルの前に座っているソフィアは、

トーストのようなものとブラックコーヒーの組み合わせを食べている。

以前、彼女の部屋で見かけたあの「重姫専用スマホ」は、

今もまだ製作中らしい。

手に持ったまま、ずっと操作している。

隣のベローナは、

栄養バーをつまみにビールを飲んでいる。

ノンアルコールだよな?

少なくとも、

顔に赤みらしきものは見えない(?)。

そして、俺の隣に座っているセフィは……

満足そうな顔で、

ロールパンとジュース(?)を口にしている。

顔には、何やら艶まであるように見える。

昨日の慰めが、かなり効いたのだろうか?

それとも……

ハグで分泌されたオキシトシンが効いた?

初日の朝としては、なんだか変な感じだけど、

まあ普通はこんなものだろう。

こういう共同生活は、

しばらく経てば、みんなで仕事を分担し始めるものだ。

俺も一緒に協力したいとは思っている。

残念ながら、

俺の Size はこの通りだ。

何か方法を考えないとな。

具体的に言えば、

今の俺たちには、まだ数日の休暇がある。

一つは、

こういう遠征任務を終えて帰還した後は、

当然ながら休暇も多めになるから。

もう一つは……

女王重姫からも、

しばらくは目立ちすぎないようにと言われている。

彼女が今もっとも望んでいるのは、

まず「俺が重姫と組める」という情報を抑えておくことだ。

どうせ有給休暇だ。

それに俺も、

入職ボーナスと契約金を受け取っている……

実際いくらなのか、

まったく知らないけど。

だから、

俺はソフィアと少し話し合ってみた。

するとソフィアは、あっさり言った。

「それなら、買い物に行きましょう」

うん。

確かに、

それも悪くない。

新しい国に着くたび、

俺はだいたい初日は休んで、

二日目に街へ出る。

現地の状況を素早く知りたいなら。

そして、

自分の給料で一体どの程度の生活ができるのか知りたいなら。

実際に一度歩いてみるのが、

やっぱり一番早い。

それにしても……

この少女たちと一緒に買い物か?

はは。

羨ましいだろ?

諸君~~

前言撤回。

俺は今……

セフィに胸の前で抱かれたまま、

買い物をしている。

何?

羨ましい?

No!No!No!No!No!

勘違いするな。

今の俺の姿は、

ただのぬいぐるみだ。

正真正銘のぬいぐるみ!

なぜかと言えば……

今の俺は、

ぬいぐるみ風のマスコットスーツを着ているからだ。

ソフィアは徹底していた。

目立たないようにするのなら、と。

彼女はセフィに、

大量のぬいぐるみの中から一つ選ばせて。

その中に俺を突っ込んだ。

……

これは Cosplay に入るのか?

それにしても……

これ、

逆に目立たないか?

うーん……

結果から言えば、

確かに目立たなかった。

ここは地球じゃない。

しかも、

他にもさまざまな種族が存在している。

マスコットが一匹(?)増えたところで、

どうということもない。

俺たちは地下鉄に乗り、

買い物専用の浮遊プラットフォームへやって来た。

ここの交通は、

呆れるほど便利だ。

地下鉄の路線は、

浮遊プラットフォームの位置変化に合わせて、

自動的に最適化調整される。

時間とエネルギーを節約するためだ。

これは陸上では、

なかなか難しい。

そして、

このショッピング用浮遊プラットフォームは……

便利なスーパーマーケットというより、

日本の商店街に近い並び方をしている。

それぞれに専門区域がある。

小さな専門売り場がバラバラにあるのではなく、

むしろ一つの系列ごとに専門店がまとまっている。

ここには、

異常に高い建物もない。

たぶん、

こういう浮遊プラットフォームの上に高層ビルを建てると、

構造や重心が不安定になりやすいからだろう。

俺の予想だけど。

正直、

これはこれで悪くない。

何しろ、

種族が多い。

上下移動を繰り返さなければならない巨大建築は、

小柄な種族にはあまり優しくないだろう。

ただ……

今のところ、

俺より小さい種族はまだ見ていないけど。

俺があちこち見回していると、

ソフィアがそばにやって来て、

何かを差し出した。

「スマホ、返すわ」

「おお、ありがとう」

ソフィアは続けて言った。

「なかなか新鮮な装置だったわ。

そこから色々学ばせてもらった」

俺は手を伸ばして受け取りながら言った。

「マジで?

中の技術格差が大きすぎるとか思わなかったのか……」

……

え?!

俺は手の中の装置を見下ろし、

心の中に一つの疑問が浮かんだ。

これ……

俺のスマホか?

なんか元より、

ほんの少し大きくなってないか?

いや。

待て。

これ、

ほんの少し大きくなったとかいう問題か?!

違いすぎるだろ!

完全に大変身してる!

アルカディアのテクノロジー風に、

完全に変わってるじゃないか?!

ソフィアは俺の驚いた表情を見て、

悪戯が成功した子供みたいに笑っている。

……

この表情、

けっこう彼女に似合ってるな。

続いて、

ソフィアは俺のスマホに一体何をしたのか説明し始めた。

……

What?

環境 RF 充電?

地球にマイクロ波充電ってものがあるのは知ってるけど……

でも環境 RF……

なんだそりゃ?

低消費電力状態なら、

稼働時間を大幅に延ばせるらしい。

つまり……

環境中の電波みたいなものまで、

充電に使うのか?

これはいい。

特にコンセントが見つからない時には。

そういえば……

俺、

今までまだコンセントを見つけてない。

笑。

次は、

アルカディアの全周波数帯ネットワーク。

これは分かりやすい。

地磁気ナビゲーション測位。

それから、

アルカディア浮遊プラットフォームのリアルタイム変動マップ。

これも分かる。

地磁気……

まあいい。

このレベルの最高峰技術なら、

地球にもまったく存在しないわけじゃない。

でもデカいんだよ!

これら全部が、

俺のスマホの中に詰め込まれていると思うと……

俺のスマホ、

黒すぎて光ってる。

物理的な意味でのブラックテクノロジー。

中には、

アルカディアでの俺のデジタル身分証まで入っている。

それに決済 APP も。

……

うん。

紙のやつはないの?

俺、

今になって急にこのスマホを失くすのが超怖くなってきた。

念のため、

俺はソフィアに聞いた。

「コピーはないのか?」

海外にいる時は、

必ずコピーを用意しておくこと。

ソフィアは言った。

「まったく必要ないわ。

本人でなければ使えないし、

落としても私が見つけられるから」

「それに、

あなたの生命兆候とも紐づけてあるわ」

……

What?!

いつ紐づけた?!

俺、

知らないんだけど?!

生命兆候と紐づけるって、

どういうことだよ?!

俺が質問する間もなく、

ソフィアは続けた。

「だって、

一つ一つ手続きするのは面倒だったから、

あなたが前に隔離室で残したデータを盗……」

「うん」

「借りて手続きしたの」

……

おい。

今、

「盗んだ」って言いかけなかったか?

「ついでに健康診断もしておいたわよ」

ソフィアは親指を立てた。

「問題なし」

……

問題あるだろ?!

俺から、

覚えちゃいけない話術を覚えたのか?!

ソフィアはさらに続けた。

「それと、

地球人の消化器系がアルカディアの食べ物に適応できるかどうかも、

結果が出たわ」

「おめでとう。

大きな問題はないわ」

「暴飲暴食さえしなければ大丈夫」

……

おお。

これは重要だ。

これでようやく、

食事の問題を心配しなくて済む。

バイバイ。

合成食品。

よっしゃ!

……

暴飲……

暴食……

うん……

俺、

さっき何を聞こうとしてたんだっけ?

思い出した。

まずは、

自分が使うものをいくつか買わないとな。

俺は、

かつて世界中を飛び回っていた自分が、

普段どう準備していたか思い返し始めた。

まず……

現地の宿泊環境を確保する。

これは飛ばしていい。

次は、

充電器と延長コード。

……

俺、

今までまだコンセントがどこにあるのか見つけてない。

というか、

ここにそんなものあるのか?

後で聞いてみるか。

それに、

今の俺のスマホはもうワイヤレス充電できる。

そこまで急ぐ必要もない。

だから……

飛ばす。

食事面。

ソフィアによると、

すでにフードプロセッサーを購入したらしい。

たぶん大きな問題はない。

水については、

海水を逆浸透膜と多重濾過に通して使っているらしい。

風呂の水まで含めて。

……

それ、

贅沢すぎないか?

でもまあ、

解決してるなら。

飛ばす。

入浴用品。

ここには全自動洗浄装置がある。

ウォシュレットまである。

……

人類 Size。

飛ばす。

うーん……

よく考えてみると。

本当に買う必要がある必需品って、

あまり多くない気がする。

こんな状況、

俺も初めてだ。

こういう特殊な状況なら、

無理に自分だけで考えない方がいい。

現地の人間に直接聞くのが一番早い。

これも経験の一つだ。

そこで、

俺はソフィアとベローナ、

それからセフィに聞いた。

「お前たちから見て、

俺が絶対に買っておいた方がいいものって何かあるか?」

ただ……

まさか。

彼女たちの答えが、

俺の想像していた範囲と少し違うとは思わなかった。

ソフィアは言った。

「ハイテク装置、パソコン、オーディオ、イヤホン、

それから各種デジタル機器」

……

アルカディア版?

ベローナは言った。

「小口径エネルギー銃、エネルギー弾薬、

閃光弾、スタングレネード、

それから防護装甲」

……

うん。

セフィは言った。

「お菓子とスイーツのパック、

気持ちいい布団と毛布、

それから簡単なトレーニング器具」

……

あのさ。

お前たち、

一体どういう角度から選んでるんだ?

待て。

まだツッコむな。

よく考えてみると……

確かに、

俺にも必要なものはある。

過去に戦地で仕事をしていた俺も、

実際に九ミリ拳銃を携帯していたことがある。

……

まあいい。

どうせ俺たちは買い物に来たんだ。

なら順番に、

一つずつ見ていこう。

まずは、

ソフィアが勧めた店から。

非常に残念だ。

まさか、

俺みたいな種族の Size だと、

一軒目からいきなりアウトとは。

携帯音楽プレイヤー、

イヤホン、

腕時計みたいな製品……

全部、

俺に合うサイズがない。

パソコンとオーディオ機器については、

いわゆる最小 Size がある。

俺にとっては……

まあ、

なんとか使えるか。

俺が少し残念に思っていると、

ソフィアは隣で大量の部品を買い込んでいた。

彼女はただ言った。

「こんなの小さな問題よ」

……

うん。

何をするつもりなのか、

だいたい分かった。

ありがたく受け取るよ。

ただし……

法律には気をつけろよ。

「ベベ、あんたか」

「俺はもう目をつけられてる。

次の店に行きな」

……

「ベロちゃんか」

「最近こっちはちょっと危ないんだ。

次を当たってくれ」

……

「ベロか」

「最近ちょっと都合が悪くてな。

また今度にしてくれ」

……

俺たちはすでに、

ベローナが勧めた武器店を三軒連続で回っていた。

どの店員もベローナを見るなり、

だいたい同じようなことを言う。

ソフィアは無言で、

横目にベローナを見る。

ベローナは黙って視線を逸らした。

……

うん。

俺が注意すべき相手って……

ソフィアじゃなくて。

ベローナの方なんじゃないか?

ようやく。

たぶん本当に、

他に選択肢がなくなったのだろう。

ベローナは仕方なさそうに、

一軒の店を紹介した。

見るからに、

客が一番多そうな店だ。

たぶん、

大衆市場向けのタイプだろう。

結果……

「申し訳ありません」

「当店には、

こちらの種族の体格に合う武器と防具はございません」

店員は俺を見て、

続けて言った。

「オーダーメイドをお勧めします」

……

まあいい。

予想通りだ。

続いて、

俺たちはセフィが勧めた店へ向かった。

まず一軒目……

意外にも、

どこか懐かしい感じがする。

雰囲気としては、

地球の駄菓子屋にかなり近い。

うん……

実際、

お菓子屋なんだけど。

俺はいくつか買ってみた。

全部、

ものすごく小さい量だ。

でも値段は、

普通の商品と比べても、

そこまで安くない。

俺は少し疑問に思い、

ソフィアに聞いた。

「なんで?」

「量の問題じゃないのか?」

ソフィアの説明を聞いて、

ようやく分かった。

なるほど。

こういう食品は、

種族ごとの体格と代謝に合わせて、

改めて計算しなければならない。

場合によっては、

希釈まで必要になる。

だから、

同じ物質を使っていたとしても……

重量、

濃度、

配合比率は、

やはり変わってくる。

そういえば。

俺が前に食べていた軍用食は、

俺みたいな Size 前後の種族向けに用意されたものだった。

野菜については、

そこまで大きな問題はない。

でも、

お菓子や飲み物、

スイーツには注意が必要だ。

ほどほどに。

何しろ……

俺は他の小型種族より、

さらに小さい。

続いて、

俺たちはセフィが勧めた二軒目の店へやって来た。

寝具店。

これはかなり実用的だ。

昨日、

俺が寝たのは支給されたベッドだった。

別に寝心地が悪いわけじゃない……

でもデカすぎる。

感覚としては、

オリンピックプール規格の超大型スプリングベッドに寝転がっているようなものだ。

まあ、

けっこう面白くはあるけど。

でも、

ベッドから降りるだけでも歩かなきゃならない。

これで、

どれだけ面倒か分かるだろ?

結果……

「反対!」

「絶対反対!」

セフィがそう抗議した。

……

Why?

セフィは、

俺が選んだベッドを指差して言った。

「これじゃ小さすぎるよ!」

「私が寝られないじゃない!」

……

うん。

お嬢さん。

俺は、

俺が寝るベッドを選んでるんだ。

お前のベッドじゃないぞ。

俺はソフィアとベローナの方を振り返った。

結果……

二人とも黙って遠くを見る。

……

うん。

無視か?

結局、

俺はセフィに押し切られた。

俺が気に入った、

無地でシンプルなデザインのベッドを買った。

ただし……

それは、

重姫 XXL クラスの大型ベッドだった。

オリンピックプールから……

正式に、

多目的競技トレーニングプール規模へと進化した。

「ありがとうございました……」

店員は力なく、

そう別れを告げた。

それも当然だ。

何しろ……

俺は何も買っていない。

確かに、

ここはトレーニング器具の店だ。

でも、

わざわざ細かく検討する必要すらない。

最小サイズのトレーニング器具でさえ、

一歩間違えば俺をバラバラに引き裂きかねない。

ダンベル?

あれは俺には持ち上げられない凶器だ。

ランニングマシン?

冗談じゃない。

俺のこの Size を見て……

まだ走る量が足りないと思うか?

「ベロ姉じゃないっすか?!」

「姉御、お疲れっす!」

「いい物ありますよ!」

突然、

道端から声が聞こえてきた。

一人の重姫……?

なのか?

分からない。

何しろ相手は、

全身をマントで覆っている。

しかも背中まで丸めている。

マントの下の顔は、

まったく見えない。

それより重要なのは……

路地裏から、

俺たちに声をかけてきたことだ。

……

教えてくれ。

こいつのどこが怪しくないんだ?

ベローナは、

少し気まずそうに見えた。

彼女は手を上げ、

相手に挨拶する。

「今日は都合が悪い」

続いて、

頭をソフィアの方へ少し振った。

……

動きが露骨すぎる!

ベローナ。

お前、

本当に交渉に向いてないぞ。

でも……

俺は直接口を開いた。

「ベローナ、いいんだ」

「俺たちにはまだ時間がある」

「ゆ~~っくり~~やっていいぞ~~」

ベローナは驚いた目で、

俺を見る。

その顔には、

はっきりこう書かれているようだった。

ハメやがったな!

そしてベローナは、

再びソフィアを見る。

ソフィアは、

ただ笑って何も言わない。

……

はは。

俺は見物させてもらおう。

「はは」

「この小さなお客さん、

ずいぶん珍しいね」

マントの下から、

笑い声が聞こえてきた。

「ベロ姉のよしみで、

あたしからいい物を買っていかないかい?」

……

おや。

相手も俺に目をつけたか?

俺は笑って答えた。

「それは、

あんたの品物次第だな」

「俺の興味を引けるなら~~」

……

後ろでソフィアが、

手で額を押さえた。

怪しいマント姿の猫背重姫(?)は、

マントの前をめくった。

中には、

さまざまな器材がぶら下がっている。

ただ……

大部分は、

俺には何なのか分からない。

彼女はその器材の中から、

非常に小さな物体を一つ取り出した。

……

いや。

あれは?!

見た目が、

俺が以前博物館で見たことのある……

いわゆる「パームピストル」に似ている。

相手は言った。

「ベロ姉の仲間なら、

当然こっち方面の人間なんだろ?」

「ちょうど、

戦争時代から残ってるミニ武器が一本ある」

「あたしたちには小さすぎて、

コレクションにしかならないけどね」

「でも……」

「あんたくらいの大きさの種族なら、

ちょうどいいんじゃないか?」

次の瞬間。

ベローナが左手を伸ばし、

俺の前を遮った。

右手でそのパームピストルを持ち上げ、

じっくりと確認する。

そして……

そのまま握り潰した。

……

ソフィアもすぐに、

俺のそばへやって来た。

セフィも空気がおかしいことに気づいたらしく、

警戒しながら周囲を見回し始める。

続いて。

ベローナは片手で相手のマントを掴み、

そのまま丸ごと持ち上げた。

冷たく問いかける。

「誰の差し金だ?」

マントの下から、

笑い声が聞こえてきた。

ねっとりしている。

……

あの女の声が、

本当に気持ち悪いほどねっとりしているからだ。

しかも、

どこか……

精神状態がおかしいような感じまである。

続いて、

相手は自分のマントを脱いだ。

目の前に現れたのは、

一人の女性重姫だった。

そもそも彼女は、

猫背ですらなかった。

演技だったのだ。

相手の素顔を見た瞬間、

ベローナとソフィアは一気に安堵した。

……

うん。

知り合いだな?

そういえば……

俺もこの重姫を見たことがあるような?

俺の記憶では……

確か、

どこかでこの重姫を見たはずだ。

確か……

……

俺は試しに聞いてみた。

「あのファーンっていう男性重姫……

あいつのチームのメンバーの一人だろ?」

それを聞いた相手は――

「カッ、カッ、カッ、カッ……」

あまり心地よくない笑い声を上げた。

「これは光栄と言うべきでしょうか?」

「あなた様に覚えていただけるなんて、

この上ない光栄です」

「今夜はこの記憶を抱いて……

じっくり味わわせていただきます」

「その通り」

「私の名はモイラ」

彼女は笑みを浮かべた。

「どうか私を、

あなた様の心の奥深くに置いてください」

……

うわぁ。

なんで俺、

鳥肌立ってるんだ……

モイラはベローナの方を向き、

文句を言い始めた。

「せっかく私がヘル様にあげようと思ったのに」

「無料だよ」

「感謝だよ」

「ファーン死ねだよ」

「ベローナ悪い悪い~~」

……

ベローナは、

何か気持ち悪いものを見たような顔をした。

「よく言う」

「中に絶対、

余計なもんを山ほど仕込んでただろ」

「気持ち悪いんだよ」

「私が握り潰したのは、

環境衛生のためだ」

……

ベローナ。

俺、

中に何が入ってたのか少し気になる。

でも……

ちょっと怖くもある。

ソフィアがモイラに近づく。

ただし……

実際には、

ほんの少しだけ距離を保っている。

……

分かる。

この気持ち悪さとの距離感、

本当に難しいよな。

ソフィアが聞いた。

「ファーンに言われて来たの?」

モイラは再び背中を丸め、

答えた。

「違うよ」

「残念」

「ファーンはまだ死んでないよ」

「ヘル様がもう少し頑張ればよかったのに」

「もっと感謝するよ」

「もっと頑張ってお返しするよ」

「だから私は……」

「ゆっくり感謝する」

「ヘル様を怖がらせないように、

私すごく頑張ってるよ」

モイラは笑みを浮かべた。

「褒めて」

俺としては……

悪戯にしても、

十分すぎるほど怖かったと思うけどな。

でも。

俺はモイラの前まで歩いていった。

彼女は今、

背中を丸めている。

だから俺でも、

簡単に彼女と顔を合わせられる。

俺は笑って言った。

「だったら、

顔を合わせて話せばいい」

「でも、

あんたの感謝は受け取らない」

「何しろ、

あれは俺が自分でやりたくてやったことだ」

「誰かのためじゃない」

「ただ俺が気持ちよかったからやっただけだ」

俺はモイラを見ながら、

続けた。

「ファーンの奴が無事なら、

俺から伝えておいてくれ」

「俺はもう、

自分の価値をあいつに証明した」

「まだ異議があるなら……」

「俺たちはいつでも相手になる」

……

悪いな。

俺一人で出るつもりはないぞ~~

モイラは聞き終えると、

顔からゆっくり笑みを消した。

俺を見つめる。

「意外」

「安定してる」

「珍しい」

「希少」

「頑固」

「カチカチ」

……

待て。

最後、

何言った?!

モイラは右手を伸ばした。

俺の顎を撫でる。

そして……

さっき俺の顎を触った指を、

口で舐め始めた。

いや。

違う。

そのまま指を口の中に入れて、

舐め回している。

そして、

笑いながら。

ゆっくりと後ろへ下がっていく。

最後は路地裏へ戻り……

消えた。

……

ここで先に言っておく。

俺が頑固だから、

立ったまま動かなかったわけじゃない。

俺はただ……

あいつがあんな動きをするなんて、

まったく思ってなかっただけだ!

その場で漏らさなかっただけでもギリギリだった。

「ぎゃあああああああ――!!」

俺たちは悲鳴を上げた。

俺が叫んだのは……

自分が侵されたように感じたからだ。

実際には、

たぶん何もされてない。

でも精神的には……

全身を舐め回されたような感覚がある。

ソフィアとベローナは、

単純に気持ち悪すぎて叫んだ。

そしてセフィは――

「フギャ――!」

猫が毛を逆立てたような、

変な叫び声を上げた。

次の瞬間。

俺は三人に引きずられ、

近くのホテルへ連れて行かれた。

そのまま全自動洗浄装置を呼び出し、

全身洗浄。

三回。

きっちり三回。

……

ここにはセクハラ防止法とかないのか?!

……

顎を触っただけ……

成立しにくい?!

ホテルを出た後。

俺は再び、

セフィに胸の前で抱かれたまま連れ出された。

……

これで二回目だ。

一回目は、

女王との精神耐久レベルの面接。

そして今……

俺の頭の上には、

きっとまた表示されている。

精神的トラウマ Debuff。

……

俺、

精神的にはかなり打たれ強いはずなんだけどな。

ここに来てまだ数日しか経っていないのに、

次から次へと精神攻撃を食らっている。

今の俺がぬいぐるみスーツを着ているとしても。

さっきは、

顎を触られただけだとしても。

でも……

全身を舐め回されたような侵害感がある。

セフィもたぶん、

危機感を覚えたのだろう。

前回より、

さらに強く抱きしめている。

……

あの。

俺、

もう精神が傷ついてるんだ。

身体まで一緒に苦しめないでくれ。

俺は手を伸ばし、

セフィの腕を軽く叩いた。

少し力を抜くよう合図する。

ある意味では……

ここに買い物に来たことは、

確かに心身への癒やしになっているのかもしれない。

今、

俺たちは家具店に来ている。

最小 Size に分類されたエリアへ入る。

オフィスデスク。

オフィスチェア。

収納用のワードローブやキャビネットまである。

比率としては、

俺にはまだ少しだけ大きい。

でも……

使えないわけじゃない。

そしてセフィは。

一気に機嫌がよくなった。

ソフィアとベローナも、

笑みを浮かべている。

……

どうやら、

こういう小型家具は彼女たちにとって。

ミニチュア玩具みたいに、

可愛く見えるらしい。

家具を選び終えた後。

最後に、

俺たちは服屋へやって来た。

残念ながら……

やっぱり服は、

オーダーメイドするしかなさそうだ。

確かにここには、

小型種族向けの子供服がある。

でも……

勘弁してくれ。

俺には装甲を着て街を歩く趣味なんてない。

男性の子供重姫用装甲は、

特撮番組の変身スーツみたいに見える。

俺の羞恥心は、

そこまで捨ててない。

水棲族と獣人族については……

露出度、

高すぎないか?

布を節約するにしても、

限度ってものがあるだろ?

布は大事なんだぞ?

分かってる?

結局。

俺たちは服屋を出た。

セフィは少し意外そうに言った。

「ヘルって、

思ったよりこだわるんだね」

……

いや。

違うから!

布こそが俺の外装なんだ!

俺に装甲を着ろって……

立つどころか。

下手したら、

歩くことすらできないぞ。

でも……

まあいい。

無理はしない。

今日の一番の目的は、

買い物を通して、

アルカディアのことをしっかり知ることだった。

幸い。

俺の必要なものは、

今でもオーダーメイドで解決できる。

たぶん、

自分の服をスマホで撮影して。

そのデータを、

関連するタイプの工房へアップロードすればいいだけだ。

値段については……

素材を直接転写したり、

接合したり、

さらにはプリントして製作することもできる。

だから、

異常に高い値段にはならない。

ソフィアから、

こういう方法もあると聞いて。

俺もほっとした。

少なくとも……

完全に方法がないわけじゃない。

ちなみに。

こういう業種が存在する理由は。

アルカディアがすでに、

種族ごとに各種物資を分類していたとしても……

それでも、

網から漏れるものは存在するからだ。

あるいは。

単純に、

自分専用のオーダーメイド品を欲しがる種族もいる。

だからこそ、

こういう産業が少しずつ形成されていった。

今日の買い物のお返しとして。

俺はみんなに食事を奢ることにした。

今回は、

ベローナにおすすめの店を聞いた。

重要なのは――

安い。

負担がない。

そして気軽。

結果……

俺たちは一軒のチェーン系ファストフード店にやって来た。

看板には、

黄色い「M」の文字。

そして……

赤地に白文字。

……

俺はものすごく疑っている。

まさか、

頭がデカくて目もデカい、

あの古典的宇宙人の誰かが。

地球の牛肉だけじゃ足りないと思って……

ついでに、

ファストフード店のセットごと丸ごと持ち帰ったんじゃないだろうな?

でも……

この店の名前は。

Manna Manna。

……

What the hell?

偶然か?

それとも翻訳がおかしいのか?

……

まさか……

ここで売ってるの、

本当に地球産牛肉じゃないだろうな。

ソフィアの勧めで。

念のため、

俺はキッズセットを注文した。

食事については、

もう少しずつ解禁していいとしても。

いきなり高難度の食品へ挑戦する必要はない。

まずは子供レベルから。

順番に慣らしていく。

ソフィアの言うことにも、

確かに筋は通っている。

俺も特に文句はない。

セフィは本日のセットを持ちながら。

俺の手元にあるキッズセットを見て、

なんだか楽しそうにしている。

……

そんなに面白いか?

ソフィアが注文したのは、

シーフードセット。

そしてベローナは……

まったく遠慮しない。

いきなり大盛り豪華セットを注文した。

正直。

俺はベローナの、

こういう気ままで遠慮しないところがけっこう好きだ。

そして俺のキッズセットは……

中には、

何の品種か分からない果物。

前にも見た野菜。

それから、

乳製品みたいな飲み物。

さらに、

合成肉が数個。

……

この合成肉を、

地球のチキンナゲットだと思えば……

これ、

完全に丸パクリじゃないか?

前にも食べた野菜。

特に問題はない。

気になるのは、

果物みたいに見えるあの球状のもの……

白い。

ほんのり香りがある。

しかも……

妙に馴染みがある。

ただ、

すぐには思い出せない。

俺は試しに一口かじってみた。

……

これ、

リンゴじゃないか?

味は、

まったく同じと言っていい。

白化したリンゴ?

もしかしたら地球にも、

似たような品種があるのかもしれない。

俺が知らないだけで。

……

まあいい。

考えすぎるな。

突然。

俺の目の前に、

ハンバーガー(?)が置かれた。

続いて、

後ろから声が聞こえてきた。

「もっと食べないとダメだぞ」

「ただでさえ、

そんなに小さいんだから」

「もっと大きくならないと……」

「どうやって私と戦うんだ?」

……

俺は振り返った。

そこにいたのは、

ファーンのチームにいる。

以前、

俺たちと試合をしたことのある――

マエラ。

俺は笑って彼女に言った。

「ありがとう」

「気持ちは受け取っておく」

「ただ、

今の俺はその……」

……

どう言えばいい?

ソフィアが代わりに続けた。

「彼は今、

まだ食物適応期間中なの」

「今のところ、

完全に通常食へ戻すことはできないわ」

それを聞いたマエラは、

納得したような表情を浮かべた。

「おお!」

「珍しいな」

「こういう状況って、

入境隔離適応プラットフォームの方でしか起きないと思ってた」

「悪かったな」

そう言って。

マエラはそのままハンバーガーを取り戻した。

そして――

一口で飲み込んだ。

……

豪快だな。

ベローナとは、

まったく違う方向性だ。

ベローナは笑いながら、

マエラに言った。

「さっきモイラに会ったぞ」

「お前ら、

一体どうなってるんだ?」

「いくらなんでも偶然すぎるだろ?」

それを聞いたマエラは……

「ご愁傷さま」とでも言いたげな表情を浮かべた。

「偶然だよ、偶然」

続いて、

頭を掻いた。

「モイラの奴な……」

「昔から変だったけど」

「でも、

あの人間がファーンに一泡吹かせてから、

もっとひどくなったっていうか、

もっと変になった」

「まあ、

実力もかなり強いんだけど……」

「私もあんまり近づきたくない」

……

俺は即座に手を上げた。

「ここで先に、

自己弁護させてもらう」

「現在この場にいる唯一の人類として……」

「言っておく」

「俺のせいじゃない」

俺の発言を聞いて。

マエラはすぐに大笑いした。

「ははははは!」

「お前って人間、

間の取り方が上手いな!」

そう言いながら。

彼女は手を上げた。

……

くそ!

まさか?!

ここにも、

ツッコミの後に背中を叩く習慣があるのか?!

Fuck you!

俺、

叩き殺されるぞ!

死因は、

背中を叩かれた後の内出血!

次の瞬間――

パン!

……

ぼよ~~ん。

……

ん?

俺は叩かれてない。

でも……

背中から伝わる感触には、

かなり覚えがある。

特に、

あの二つ。

……

セフィだ。

助かった。

どうやらセフィが突然やって来て、

俺を抱きしめたらしい。

自分の背中で、

マエラが振り下ろした手を受け止めた。

……

もしこれが、

何かの映画だったなら。

たぶんこれは、

誰かの代わりに銃弾を受け止めるような。

ものすごく感動的な場面になるんだろう。

でもここでは……

ただの背中叩き。

しかも残念ながら。

俺は背中を叩かれただけでも、

そのまま退場しかねない……

セフィは振り返り、

マエラに文句を言った。

「ダメだよ!」

「ヘルは大事に扱わないと」

「雑にしたら、

怪我しちゃうんだから」

ソフィアも続けて言った。

「その通り」

「彼は私たちのチームの壊れ物よ」

……

いや。

間違ってはいないけど。

俺の身体には、

あと一歩でこう書かれるところだ。

取扱注意。

最後にベローナが一言付け加えた。

「こいつで壊れないのは、

その口だけだ」

……

あの。

ベローナ。

お前、

実は俺にかなり不満あるだろ?

もう少し言い方を柔らかくできない?

俺だって傷つくんだぞ。

色んな意味で。

それを聞いたマエラは、

少し驚いたように言った。

「この人間、

もうお前たちのチームメンバーなのか?」

続いて、

笑みを浮かべた。

「羨ましいな~~」

ベローナは、

意味が分からないという顔をした。

「どういう意味だ?」

マエラは胸を張り、

当然のように言った。

「守る必要がある存在がいた方が、

面白いし、

やる気も出るし、

難易度も上がるだろ~~」

……

それを聞いたベローナは。

反論しなかった。

ただ、

考え込んだ。

……

まあな。

何しろベローナは、

公私の区別について少し堅い。

この辺は……

俺も余計な口を挟むつもりはない。

俺が答えを教えるより。

ベローナ自身が、

自分で納得できる考え方を見つけた方が。

むしろ大事だと思う。

だから。

俺は話題を変え、

マエラに聞いた。

「あのファーンって奴……」

「あれから、

どうなった?」

マエラは後頭部を掻きながら言った。

「ファーンの奴な……」

「かなりショックだったみたいだ」

「そのまま家に引きこもって、

まったく外に出てこない」

「おかげで、

私たちはようやく有給休暇を取れた」

……

おい。

お前、

ちょっと嬉しそうに言ってないか?

マエラは続けた。

「実際のところ、

ファーンがどうなってるのか、

私もよく分からない」

「それにしても……」

「あいつの身体には、

傷らしい傷すら見当たらなかった」

そう言い終えると。

マエラは俺の方を向いた。

「実は……」

「お前、

手加減しただろ?」

……

俺は笑みを浮かべた。

「俺は、

そこまで徹底的にやるほど馬鹿じゃない」

実は。

ファーンが攻撃を受ける直前。

俺はすでに彼の身体を操作し、

攻撃方向に沿って滑らせていた。

高性能自律型機の攻撃を……

確実に命中したように見せる。

実際には、

ただ掠めただけ。

つまり――

Selling。

簡単に言えば。

技の効果をしっかり見せて、

観客にその一撃が本当に重かったと信じさせることだ。

もちろん。

途中で、

少しだけ小細工もした。

ファーン本人にも……

本当に攻撃を受けたと思わせるために。

実際には。

俺はただ、

衝突音と衝撃感を作り出しただけだ。

だから厳密に言えば……

ファーンは、

驚いて気絶しただけだ。

俺はマエラに言った。

「どうせ実際には、

大した怪我をしてないんだろ?」

「なら、

それでいい」

俺は少し間を置いた。

「自尊心が回復するかどうかは……」

「俺の管轄外だ」

……

それを聞いたマエラは。

犬歯を見せた。

笑った。

「お前、

化け物だな」

「次に機会があったら、

もう少し頭を使う」

「またもっと気持ちよく戦おうぜ!」

……

俺は即座に答えた。

「え?

嫌だよ」

「まさか、

先に会場を吹き飛ばすつもりか?」

マエラは一瞬で、

驚いた表情を浮かべた。

「お前、

読心術まで使えるのか?!」

……

いや。

お嬢さん。

そんな反応されたら……

俺、

ツッコミにくいんだけど。

買い物を終えて、

家に戻った時。

まだアルカディアの午後だった。

しかも……

俺が買ったものは、

それほど多くない。

本当に多くない。

強いて言えば。

今日一番、

金を使った価値があったのは。

たぶん、

みんなに食事を奢ったことくらいだ。

無理に買った家具や器材も、

その日のうちに返品した。

何しろ。

実際にはどうにか使えるだけのものを、

買って帰っても無駄になる。

だから俺は決めた。

全部、

オーダーメイドにする。

……

そうだ。

ベッドだけは返品していない。

なぜか?

……

セフィに抱かれたまま買い物している状態では。

俺に選択肢は、

あまりない。

突然ケチャップになるのが怖かったからじゃない。

正直……

ただ甘やかしただけだ。

それにしても。

アルカディアの配送速度には、

本当に驚かされた。

家に戻った時。

俺はすでに気づいた……

古いベッドが回収されている。

しかも、

さっき注文した新しいベッドへの交換まで終わっている。

……

どこで「いいね」を押せばいい?

……

って、

ふざけんな!

これ、

不法侵入にならないのか?!

それとも……

ここの物流サービスと信用、

品質は。

そこまで驚異的なレベルなのか?

あるいは。

これが完全デジタル証明社会の運用方式?

……

まあいい。

俺は専門家じゃない。

考えすぎるな。

俺は、

重姫 XXL 専用大型ベッドによじ登った。

そう。

疑う必要はない。

俺が言ったのは――

よじ登る。

だ。

ようやくベッドの上まで登った後。

俺は中央まで歩いていき、

そのまま寝転がった。

……

Holy……

ベッドの角が、

まったく見えない。

この広さ……

なんか不気味だな。

その時。

足音が聞こえた。

……

セフィだろ?

ノックもしない。

そのまま入ってきた。

新しいベッドを見た彼女は、

ものすごく嬉しそうだった。

そして身体を屈め、

そのまま――

……

Shit!

結果から言えば。

助かった。

俺はちょうど、

セフィの双峰の間に埋まった。

……

これは Triangle of Life なのか?

そして。

セフィはそのまま、

ベッドの上をゴロゴロ転がり始めた。

そして俺は……

双峰の間に挟まれたまま。

強制的に、

彼女と一緒に回転させられる。

……

ようやく彼女が止まるまで。

俺の存在には気づかなかった。

次の瞬間。

セフィはものすごく驚いた。

身体全体を、

一気に小さく丸めた。

あまりにも縮こまったから……

俺は一瞬。

こいつら、

変形能力まであるんじゃないかと思った。

結果。

また少し時間をかけて、

彼女を慰めることになった。

……

まあ、

考えたことがないわけじゃない。

地球のハムスターみたいに。

ハムスターボールでも用意して、

自分を中に閉じ込めるとか。

でもよく考えると……

それはあまりにも馬鹿すぎる。

俺は、

昔の共同生活を思い出した。

あの頃は。

生活費を減らすために、

みんな順番に料理を作っていた。

だから俺も、

多少は料理ができる。

まあ……

気づいていなかったわけじゃない。

好き嫌いの多いルームメイトの中には。

特定の日になると、

必ず外食を選ぶ奴がいた。

理由は……

簡単だ。

逆に、

俺が料理する番になると。

全員揃う。

……

まったく。

お前ら、

仕方ないな。

俺のほんの少しの料理で、

満足できるなら。

笑。

そして今……

同じことをするのは、

たぶん無理だ。

何しろ俺は、

ここの食材をまったく知らない。

香辛料すら分からない。

それに……

目の前にある、

いわゆる「フードプロセッサー」は。

完璧に、

一人一人の好みに合わせて料理している。

もちろん。

俺の分も含めて。

……

俺が残念に思うと思うか?

違~~~う。

よく考えてみろ。

体格差だけでも。

俺、

一体どれだけ料理を作らなきゃならないんだ?!

しかも俺の料理は、

主に炒め物寄りだ。

腱鞘炎と手根管症候群は……

パイロットの天敵なんだぞ!

ハイテク料理万歳!

夕食を食べ終えた後。

俺たちはダイニングテーブルのそばに座って休んでいた。

ちなみに。

俺もダイニングテーブルのそばに座っている。

ただし……

俺の椅子は、

子供用のブースターシートに近い。

……

仕方ないだろ?

ちょうどサイズが合うんだから。

もうこれでいいことにしよう。

それに、

俺は自分で登ってきたんだ。

そういえば。

逆に考えれば……

海辺のライフガードがよく使う、

監視台の椅子だと思えばいい。

……

うん。

そう考えると、

かなりマシになった。

俺はてっきり。

ソフィアは食事を終えた後、

どこかへ行ったと思っていた。

ところが、

しばらくもしないうちに……

彼女は嬉々として、

大量の装置を抱えて戻ってきた。

しかも。

その中には、

見覚えのあるものがいくつかあった。

彼女はその装置を全部、

テーブルの上に置いた。

重姫サイズの大型スマホに見えるものが三台。

そして、

非常に小さなデジタル装置が数台。

……

あれ、

まさかノートパソコンか?

ソフィアは胸を張り、

得意げに言った。

「これが私の成果よ」

続いて、

ベローナとセフィを見る。

「さあ」

「一台ずつ持っていって」

ベローナはそのうち一台のスマホを手に取り、

じっくり見た。

「これ……」

「ヘルのあの装置に、

かなり似てるな」

「まさか、

同じものか?」

セフィも、

とても大事そうに一台を手に取った。

「見た目、

まったく同じだね」

ソフィアは再び胸を張り、

得意げに言った。

「まったく同じと言っていいわ」

「ただし、

私たちのバージョンはさらに頑丈」

「重姫専用の通信ネットワークにも対応しているわ」

「操作インターフェースについては、

私たちが使い慣れているバージョン」

「すぐに慣れるわ」

「それに操作速度は、

普段使っている投影インターフェースより速い」

ソフィアは笑って言った。

「みんな、

まず使ってみて」

「改善してほしいところがあったら、

また教えて」

続いて。

彼女は自分のスマホを手に取り、

支払い画面を表示した。

ベローナとセフィに見せる。

……

ベローナはその場で固まった。

「タダでくれるんじゃないのか?」

ソフィアは笑って答えた。

「タダなのは手間賃よ」

「原価は別」

……

姉妹でも金の勘定は別ってか。

ベローナとセフィが支払いを終えた後。

ベローナは思わず言った。

「それにしても……」

「財閥のお嬢様のくせに、

ずいぶん金銭感覚がしっかりしてるんだな~~」

……

どうやら皮肉らしい。

でもソフィアは、

ただ笑っただけ。

まったく気にしていない。

「私に何人の姉妹がいると思ってるの?」

「それに」

「自分のお金を使えば、

後になって他人にあれこれ言われることもないわ」

……

この言葉を聞いて。

俺は心の中で、

静かに拍手した。

同時に。

俺には分かっていた……

次は俺だ。

ソフィアが俺の前に押し出したものは……

十六インチくらいのノートパソコンだった。

……

お前、

なんでこんなもの知ってるんだ?

俺はソフィアを見る。

「ソフィア」

「これ、

まさか……?」

ソフィアはすぐに答えた。

「あなたのスマホの中のデータを見たの」

「他にも面白いものがたくさんあったわ」

「だから、

そのまま真似して作った」

「システムについては、

あなたのスマホのシステムとアルカディア技術を融合したバージョンよ」

……

なるほど。

でも。

ということは……

……

俺は冷静に口を開いた。

「ソフィア」

「俺のスマホの中で……」

「一体何を見た?」

ソフィアは目を細めた。

「隠しフォルダが一つあったわ」

「名前は D ドライブ」

「中には人類の雌がたくさん……」

俺は即座にスマホを掲げた。

「いくらだ?!」

ソフィアは一瞬で、

嬉しそうな笑みを浮かべた。

支払い画面を俺の前に差し出す。

「毎度あり~~」

……

こうして。

高いのか安いのか……

俺には分からない。

でも。

一つだけ分かることがある。

この値段には……

絶対に口止め料が入ってるだろ。

夜になった。

俺のスマホには、

九時半と表示されている。

ただし正確に言えば……

それは地球時間に換算した、

夜の九時半だ。

このスマホには、

二つの時間表示がある。

一つはアルカディア時間。

もう一つは、

俺が理解できる地球時間。

二十四時間制を使って、

直接見比べることができる。

俺が知る限り。

アルカディアの一日は、

地球時間とはわずかな違いがある。

同じように、

ほぼ二十四時間ではある。

でも、

やはり差は存在する。

だから……

分けて見た方がいい。

仕事が始まれば。

時間合わせは、

アルカディア版を基準にする。

……

少し複雑?

実は簡単だ。

海外へ行った後……

現地時間と母国時間に時差があると思えばいい~~

俺は自分の部屋で、

あぐらをかいて座っていた。

あの馬鹿みたいにデカい、

重姫 XXL 専用ベッドの上で。

さっき受け取ったノートパソコンを使っている。

まあ……

慣れるには、

まだ少し時間が必要だ。

俺は翻訳機を何度も外したり、

つけたりしながら。

このパソコンに慣れていく。

ついでに。

服や家具。

それから、

その他の生活用品をオーダーメイドできる工房も探している。

……

そんなことして疲れないか?

慣れればいい。

昔、

海外へ行っていた頃。

もっと厳しい状況に遭遇したこともある。

特に、

ネットがない場所では。

それと比べれば。

今手元にある翻訳機は、

すでに相当なブラックテクノロジーだ。

生活に関わることなら。

人間は、

自分自身を急速に適応させる。

しかも……

経験した回数が増えるほど。

自然と、

そのコツも掴めるようになる。

気がついた時には。

外はすでに深夜になっていた。

……

そろそろ寝るか。

先に言っておく。

俺は何かの気配を感じたわけじゃない。

中二病でもない。

超能力もない。

でも……

俺は部屋のドアに向かって言った。

「鍵はかかってない」

「入ってこい」

……

しばらくして。

本当にドアが、

ゆっくり開いた。

入口に立っていたのは……

おどおどしているセフィだった。

セフィは小さな声で聞いた。

「どうして分かったの……?」

「足の裏の肉球で、

音を消してたのに……」

……

お前、

肉球あるのか?!

まあいい。

今度、

じっくり見てみよう。

俺は笑って言った。

「ただ、

もしかしたら……」

「お前、

入りづらくて困ってるんじゃないかと思っただけだ」

「そしたら本当に、

そこに立ってた」

「何しろ今日、

ここでかなり怖い思いをしたからな」

……

それを聞いたセフィは。

すぐに頭を抱えて、

その場にしゃがみ込んだ。

身体全体を丸める。

「わうわうわうわう~~」

俺はパソコンを片づけた。

立ち上がる。

そしてベッドの端へ行き、

セフィのために少し場所を空けた。

「セフィ」

「悪いけど、

電気を消してくれ」

「俺があそこまで歩くには遠すぎる」

……

それを聞いたセフィは。

すぐに嬉しそうに走って、

電気を消しに行った。

続いて。

抜き足差し足で、

ベッドのそばへ戻ってくる。

ゆっくり……

ゆっくり……

横になった。

……

なんだ?

そこまで怖いのか?

笑。

見ると。

セフィは身体全体を、

ロボットみたいに硬直させている。

まっすぐ。

直立したみたいに、

ベッドの上に寝ている。

カチカチだ。

……

俺、

もう笑いを堪えきれそうにない。

俺は、

吹き出しかけた笑いを無理やり飲み込んだ。

まあいい。

いっそ、

さっさとやるか。

俺はセフィの身体によじ登った。

そのまま、

彼女の胸の上に寝転がる。

両手を広げる。

……

うん。

セフィの双峰の間……

確かに、

けっこう気持ちいい。

でも。

やっぱり欠点はある。

俺は口を開いた。

「セフィ」

「少し力を抜け」

「硬すぎて、

気持ちよくない」

……

分かりやすいよな?

これで分からないなら。

もっと直接的に言わなきゃならない。

セフィはゆっくりと、

身体の力を抜いた。

そして……

おや。

小さく鼻をすする音が聞こえる。

……

振り返って見るのは、

やめておこう。

俺は一人で勝手に話し始めた。

「俺、

まだ注文してないものがたくさんあるんだ」

「明日、

暇なら一緒に探してくれるか?」

……

感じる。

セフィの身体が、

ほんの少し動いた。

彼女は小さな声で答えた。

「うん……」

……

返事がある。

それでいいだろ。

「おやすみ」


P.S.

ファイン視点

ファイン一族の屋敷の中。

ファインは一人で部屋に座っていた。

非常に礼儀正しい姿勢で、豪華な木製の椅子にきちんと腰掛けている。

……

考え込む。

……

あいつ……

ヘルという名の下等炭素生命体は、

確かに自分の価値を証明した。

しかも。

俺の体を使って。

まるで玩具のように好き勝手に扱いやがって。

そのせいで……

あれほど大恥をかいた。

本来なら。

あいつの無礼を追及して、

俺を傷つけた代償を払わせるつもりだった。

結果は……

何もなかった。

俺は……

まったく怪我をしていなかった。

……

くそ。

それじゃあ……

俺は驚いて気絶しただけってことか!?

しかし……

本当に理解できないのは……

……

あれはいったい何だったんだ?

目を覚まして間もなく……

突然。

何とも言えない感覚が押し寄せてきた。

鼓動が速くなり始めた。

しかも……

全身に痺れるような感覚が走った。

あの感覚は……

まるで……

……

いや。

認めない。

そんなはずがあるか?

おかしいだろ!

俺は正常な男性重姫だぞ!

女性の重姫にしか反応しないはずだ!

自分の後宮の女性たちと交流したことだってある!

なのに……

いったいどういうことなんだ!?

あの人間の男……

俺に何をしたんだあああああ――!!!


P.S. P.S.

女王重姫の官邸

女王重姫は、ファインのそばに潜ませていた密偵から報告を受け、副作用は性別を問わないと知ると、笑いすぎて腹筋がつり、半日休むことになった。



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