表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
n番煎じの脇役令嬢になった件について  作者: 此花サギリ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/107

第62話 三年後の繁栄

 北方の空は、今日も澄み渡っていた。


 春の柔らかな陽光が、石畳の大通りを照らしている。


 道の両側には木造と石造りが混ざった家屋が立ち並び、商店の看板が風に揺れていた。


 焼きたてのパンの匂い。

 香辛料の香り。

 遠くでは鍛冶屋の槌音。


 市場通りは人で溢れていた。


 農民が野菜を並べ、商人が布を広げ、子供たちが走り回る。


 旅人も多い。


 北方のこの町は――


 今や**都市**と呼ばれていた。


 人口は二千を越えた。


 石畳の道路は町の中心から四方へ伸び、水路は家々の間を流れている。


 広い市場。


 学校。


 倉庫街。


 商業通り。


 さらには小さな劇場まで作られていた。


 北方開拓が始まってから三年。


 この地は、かつての荒野とは別の場所のように変わっていた。


 その中心にいるのが――


 レスティーナ・フォン・グランテである。


 領主館の執務室。


 窓からは町全体が見渡せる。


 レスティーナはその景色を眺めながら、小さく息を吐いた。


「……三年か」


 机の上には都市の地図が広げられている。


 初期の開拓図と比べると、別物のようだ。


 道路が増え、建物が増え、区画が広がっている。


(ググル先生)


『はい』


(最初の計画と比べてどれくらい成長した?)


『人口は約四倍。経済規模は推定八倍です』


「うん」


 レスティーナは苦笑した。


「自分でもびっくり」


 この三年間。


 彼女は二つの力を使ってきた。


 **ググル先生。**


 そして――


 **ネットショップ。**


 ググル先生は知識をくれる。


 都市計画。


 農業。


 物流。


 建築。


 衛生。


 学校制度。


 様々な情報を教えてくれる存在だ。


 そしてネットショップ。


 これは物資を手に入れる手段だった。


 釘。


 工具。


 ガラス。


 種子。


 紙。


 そして本。


 この世界ではまだ貴重な物資を、少量ずつ手に入れることができる。


 もちろん無制限ではない。


 金は必要だし、大量購入もできない。


 だが都市の発展に必要な**初期技術**を導入するには十分だった。


 最初の頃は小さなことから始めた。


 井戸の整備。


 衛生の改善。


 農地の区画整理。


 作物の輪作。


 水路。


 そして――


 **物流。**


 レスティーナは机の地図を指でなぞる。


 町の中心から放射状に伸びる石畳道路。


 その周りに倉庫街。


 さらに外側に農地。


 この配置は、ググル先生の助言だった。


『物流効率を考えた都市配置です』


 最初は半信半疑だった。


 だが実際にやってみると――


 驚くほど効率が良かった。


 農産物は倉庫に集まり、そこから市場へ。


 商人の荷車も動きやすい。


 結果として交易が活発になった。


 そして商会メモワール。


 レスティーナが作った商会だ。


 帝都にも支店がある。


 布。


 紙。


 本。


 そして食堂。


 北方の料理は評判になり、旅人も増えた。


 レスティーナは窓の外を見た。


 市場の人波。


 遠くの農地。


 さらにその外側には新しい開拓地。


「ここまで来たんだ」


 その時、扉がノックされた。


「領主様」


 エルガルトだった。


「どうぞ」


 扉が開く。


「商会メモワールから報告です」


「何?」


「帝都との交易量が、去年の二倍になりました」


 レスティーナは目を瞬いた。


「もう?」


「はい」


 エルガルトは笑った。


「北方の都市としては異例の成長です」


 その後ろから別の声がした。


「当然です」


 入ってきたのはジェイだった。


 黒髪の青年。


 もう十五歳の少年ではない。


 十八歳になった青年だ。


 三年前、帝都からこの町に来た少年従僕。


 今では領主館の重要な補佐役になっていた。


「物流を整えましたから」


 ジェイは言う。


「道路、水路、倉庫」


「すべて繋がっています」


 レスティーナは笑った。


「ジェイもすっかり仕事人ね」


「レスティーナ様のおかげです」


 ジェイは答える。


 レスティーナは窓の外を見た。


 三年前。


 ここは荒野だった。


 今は違う。


 人が集まり、商売が生まれ、生活がある。


 都市が生きている。


(ググル先生)


『はい』


(都市作り成功って言っていい?)


『はい。十分成功例です』


 レスティーナは笑った。


「そう」


 だがまだ終わりではない。


 都市は完成するものではない。


 成長し続けるものだ。


 レスティーナは地図の空白部分を見る。


 まだ広い。


「次はここね」


 ジェイが聞いた。


「新しい区画ですか?」


「うん」


 レスティーナは頷く。


「工房街」


「学校の拡張」


「あと図書館」


 エルガルトが驚く。


「図書館ですか」


「知識は力だから」


 レスティーナは笑った。


 ググル先生とネットショップ。


 その二つの力で始まった都市作り。


 そして三年。


 北方の荒野に、ひとつの都市が生まれた。


 だが――


 レスティーナの物語は、まだ終わらない。


 むしろここからが本当の始まりだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ