第36話 北方開拓都市
北方開拓都市は、雪混じりの天候の中でも着実に成長を続けていた。城壁が完成してから数日、逃亡農奴たちの到着は止まらず、総人口はついに五百人を超えた。
レスティーナは丘の上から町を見下ろし、微笑んだ。
「やっと……五百人ね」
脳内のググル先生が即座に解析する。
『総人口:五百三十二人。住宅は不足なし。ただし井戸と水供給の拡張が必要。』
「なるほど、次は生活の基盤を整えましょう」
丘の下では、農奴たちが新たな区画に次々と入居していく。男女問わず、子供から大人まで、それぞれ割り当てられた小屋に荷物を運ぶ。子供たちは初めての学校建設予定地で、雪を踏み固めながら遊ぶ。
レスティーナは指示を出す。
「建築班は倉庫の増設と市場用小屋を作り、道路班は主要通りを拡張してね。生活班は水路と井戸の整備を優先」
ググル先生が脳内で即時にシミュレーション。
『最適班配置:建築班十五名、生活班十名、道路班五名、補助班五名。作業効率:八十五パーセント維持可能』
レスティーナは各班に作業指示を飛ばす。
市場建設班は丸太で区画を組み、屋根を設置。雪でぬかるむ道に杭を打ち、滑り止めを施す。
「滑るから注意!」
子供たちも簡単な荷運びや整理を手伝い、笑顔が町に広がる。
一方で資材搬入は相変わらず一筋縄ではいかない。雪やぬかるみで荷車が何度も転倒し、丸太や食料袋が散乱する。
レスティーナは即座にググル先生に相談。
「滑りやすい区間の補助方法は?」
『荷車二台を交互に押し、補助人員を四名追加。滑り止め用の土嚢を設置すれば搬入速度は維持可能です』
レスティーナは班を再編成し、作業は滞りなく進む。
午後になると、初めての初期市場が完成した。
木造の屋台が十軒並び、食料、衣類、工具、薪などが並べられる。農奴たちは自分たちが必要とする物資を自由に交換でき、笑顔があふれる。
レスティーナは丘から市場を眺め、指を鳴らす。
「各商人は登録制。物資の公平分配を忘れないでね」
ググル先生が即座に統計を計算。
『市場運営に必要な労働力:八名。現在の市場班人数:十分確保済み』
さらに初期商業施設として、木造の工房も建設された。鍛冶屋、木工所、布織り場の三つだ。工房には工具や原料が搬入され、初めての交易システムが町に息を吹き込む。
子供たちの教育も開始された。小屋の一部を学校として改装し、教壇と机を設置。教師は村人の中から適任を選出した。文字の読み書き、計算、農業知識、手工芸などを教える予定だ。
レスティーナは脳内でググル先生に作業順序を相談。
「学校と工房、どちらを先に稼働させる?」
『工房を先行させるべきです。経済基盤の安定が先に必要』
レスティーナはうなずき、工房班の進行を優先させる。
その日の夕方、丘の上から町全体を見渡す。
城壁に守られた都市。
屋台が並ぶ市場。
小屋が整然と並ぶ住宅街。
工房の煙突からは薄く煙が上がる。
子供たちは学校で机に向かい、初めての授業を受ける。
人口五百超えの都市は、まだ未完成だが、確実に都市としての機能を持ち始めていた。
レスティーナは笑った。
「これで都市の基礎は整ったわ」
ググル先生が脳内で解析を続ける。
『人口:五百三十二人。生活基盤:安定。市場稼働:開始済み。工房稼働:順調。学校準備完了。』
レスティーナは雪が舞う北方の荒野を見つめる。
「まだまだ人口は増えるわ」
門の外では、次の逃亡農奴たちの影がちらりと見えた。
「よし、次は水路の整備と耕作地の拡張ね」
都市の中心で、レスティーナはググル先生と会話を続けながら、効率的な都市拡張を計画する。
こうして北方開拓都市は、都市計画・人口誘導・市場整備・初期商業施設・教育施設を全て揃え、真の都市として動き始めたのだった。
雪の降る荒野に、笑い声と作業音が絶え間なく響く。
ググル先生が静かに解析を終えた。
『北方開拓都市、初期都市機能完成。今後の人口増加予測:一週間で六百人突破可能』
レスティーナはほほ笑み、雪に光る城壁を見つめた。
「都市って……こうやってできるのね」
北方開拓都市は、まだ始まったばかりの物語を刻み始めていた。




