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n番煎じの脇役令嬢になった件について  作者: 此花サギリ


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第35話 北方開拓大作戦

 北方領の開拓都市は、城壁が完成し、逃亡農奴たちが流入してから三日が経過した。


 朝日が薄い霧を照らし、荒地に立つ小屋やテントを柔らかく染める。


 レスティーナは丘の上に立ち、全体を見渡していた。


「ググル先生、今日の作業計画は?」


『はい。資材搬入と宿舎整備を優先。耕作地の整地は天候次第ですが、午前中は晴天予報です』


 レスティーナは頷いた。


「では午前中に整地を進め、午後は倉庫の補修と小屋の建築を指示する」


 丘の下、農奴たちは忙しそうに働いていた。


 小屋の建築班は丸太を組み、簡易の屋根を設置する。子供たちは薪を運び、大人たちは土を運ぶ。水汲み班は井戸から水を運び、簡易の水場に流し込む。


 しかし順調に見えた都市計画にも、初めてのトラブルが訪れる。


「荷車が倒れた!」


 森から搬入された丸太と資材を運ぶ荷車が、ぬかるみに足を取られて横転したのだ。丸太が散乱し、農奴たちは急いで拾い集める。


 レスティーナはすぐに指示を出す。


「みんな落ち着いて。荷車は二人で押して、固定を強化する。資材の整理は班長に任せるわ」


 ググル先生が即座に計算を提示する。


『最適搬入順序は、荷車二台を連結させ、ぬかるみのある区間は手押しに変更。労働力の配分は、建築班五名、補助班三名、荷車操作班四名』


 レスティーナは手早く班を振り分け、作業は再開された。


 しかし天候も味方ではなかった。午後になると霧が濃くなり、冷たい風が北方領の荒野を吹き抜ける。


 小屋建設班は屋根の補修に苦戦する。木材が濡れて滑るのだ。


「滑ります!気を付けて!」


 叫び声が響く。レスティーナはすぐに防護策を考える。


「濡れた丸太は布で拭いてから使いなさい。足場には土嚢を敷く」


 ググル先生は脳内で解析を続ける。


『天候による作業効率低下率:三十パーセント。班の再配置で効率を七十パーセントまで回復可能』


 レスティーナは指示通りに班を再編成し、建設は無事進む。


 その間にも、城門の外から小さな人影が現れる。逃亡農奴の第二波だ。


「門を開けろ!」


 レスティーナは叫ぶ。農奴たちは雪の残る森を抜け、疲れ切った体で城門に飛び込む。


 子供は両親に抱かれ、大人は荷物を肩に担ぐ。


 到着者は七十人。総人口は四百二十人に達した。


 倉庫班は荷物の整理に追われる。小麦袋、種子、工具、衣類、水袋。全てネットショップで事前に手配された資材だ。


 レスティーナは脳内でググル先生に指示を出す。


「資材をすぐに宿舎に振り分ける。生活班、配給班、建築班に均等に振り分けて」


『了解。最短搬入ルートを計算中。三十分以内に全ての物資を配分可能』


 農奴たちは指示通りに動き、作業効率は驚くほど高かった。


 夕方、作業を終えた農奴たちは疲れ切って宿舎に倒れ込む。食料班が温かいスープを配り、子供たちは床に座って黙々と食べる。


 一人の少女が小さな手でレスティーナに向かって言った。


「ありがとうございます……ここで働けるなんて、夢のようです」


 レスティーナは笑った。


「まだまだ始まったばかりよ」


 ググル先生が脳内で解析する。


『明日の天候予報:雪混じりの雨。作業効率低下を見込む必要あり』


「了解、雪でも可能な作業を優先するわ」


 翌日、雪が降り始めた。農奴たちは雪に濡れながらも薪運び、井戸掃除、簡易道路整備を続ける。雪で滑る荷車を補助班が支え、資材は安全に配送される。


 レスティーナは丘の上から全体を見渡す。城壁の内側、整備された宿舎、整地された農地、雪の中で働く人々。


 初めての都市形成は混乱もあったが、着実に形を成していた。


 ググル先生が静かに囁く。


『農奴の移動効率、資材搬入効率、耕作効率を総合的に解析済み。目標人口五百人まではあと八十人、到着予測は三日後』


 レスティーナは笑った。


「なるほど、全て計算通りね」


 雪が舞う荒野の中、北方開拓都市は徐々に都市らしい機能を持ち始めていた。


 城壁に守られ、資材が揃い、農奴たちが働き、物流が回る。


 そして、逃亡農奴たちの笑い声や子供の歓声が、初めて都市に生気をもたらした。


 レスティーナは馬車に戻り、脳内でググル先生に次の指示を出す。


「次は道路の拡張と倉庫の増設ね。冬季でも作業可能な順序で」


『計算完了。全作業を三日以内に完了可能です』


 レスティーナは窓の外の雪景色を眺め、静かに呟いた。


「都市って……こうやってできるのね」


 雪の降る北方の荒野に、小さな都市の形が確実に根を下ろしていった。



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