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清楚系ヤンデレと天使な小悪魔と  作者: みゃゆ
一年 二学期 前半
63/87

第六十三話 ありえない光景

IFの物語を連載してみましたのでこちらもぜひご覧ください!

本編では書かれなかった展開ですので、お楽しみいただけるかと思います!

 月曜日、目覚まし時計の音で目覚める。外は暗く、雨が降っているようだ。雨は嫌いだ。


 隣には藍が寝ている。どうやら昨日も侵入したようだ。大会後の夜にも侵入されたのでこれで三日連続となる。初日以外はちゃんと服を着てくれているのだが、妹だとしてもかわいい女の子なのだ。何かあっては困る。


「藍、起きるんだ。朝だぞ」


 声を掛けると目を擦りゆっくりと目を開けベッドの上でうーんと背伸びをした。今日も世界で一番かわいい妹だ。なのだが、部屋に侵入して一緒に寝るのは困る。


「遼兄ぃ? おはようのキスは?」


「あほか。早く起きないと遅刻するぞ」


 姉さんに藍の件を相談したのだが、対策を立てているのだろうか。もしかしたら面白がっているかもしれない。姉さんならありえる。


 なかなか起きない藍の体を持ち上げ無理矢理立たせる。抱っこーと甘えてくるが朝ぐらいは自分で起きないといけないのでそのまま二人でリビングへ向かう。来年には高校生になるのに抱っこをせがんでくるとは思っていなかったんだけどね。


 母さんが準備してくれた朝食を食べ、雨が降っているので早めに学校へ向かうことにしようとしたのだが、珍しく母さんが送ってくれると言うことだったのでお願いすることにした。


 藍と二人で車の後部座席に乗り、母さんが車を運転する。姉さんが免許を取ってからは母さんが運転するのを見ていないのでかれこれ四年ぶりぐらいだろうか。いつもはバス通勤で帰りは父さんに迎えに来てもらっているみたいだから母さんの運転に不安を持ったが、会社の車をよく運転するらしいのでそれを聞いて安心した。


「藍、最近遼と一緒に寝てるみただけどヤったの?」


「なかなかヤらせてくれない」


「おい、親がする話じゃないだろ」


「あら、いいじゃない。あんたまだ童貞なんでしょ? こんなかわいい子に捧げるなんて滅多にできることではないわよ」


 そういう問題ではないのだ。やはりこの親、いろいろとおかしい。こんな親だから藍は兄妹の一線を越えようとしてくるのだと思った。


 今日の雨はそこまで強くはない。予報では昼から上がるらしいのだが、雨が降るだけで気分が憂鬱になる。雨が嫌いな理由は特にない。ただ単に嫌な気持ちになるだけなのだ。


 そう言えば花と外出する時はいつも雨が降るな。あの子は雨女なのかもしれない。いや、タイミングが悪いだけか。


「それで遼は誰に童貞を捧げるのかしら?」


 ……その話まだ続くのかよ。


 ―――――――――――――――――――――


 いつもより早く来たせいか、雨のせいか、学園にはまだ生徒が少なかった。だが教室に向かう最中に電気が付いているのが見えたので誰か着ているのだろうと思い、教室に入るとありえない光景を目にすることになった。


 そこにいたのは姉さんと花、なのだが、姉さんが布巾を持って花と一緒にみんなの机を拭いているではないか。家ではダラダラして家事を絶対にやらない姉さんが教室の掃除をしているのだ。いくら教育実習で来ているからと言って姉さんがそんなことをするはずがない。


 口をパクパクさせ、持っていたかばんを床に落とすと二人が俺が来たことに気づいた。掃除しているところを見られた姉さんの顔はなぜか恥ずかしそうだ。


「遼さん、おはようございます」


「あ、あぁ、おはよう。で、姉さんはなんで掃除しているんだ?家では絶対にやらないくせに」


「……少し懐かしくなったんだ。……悪いか?」


 悪いなんてことはないのだが、珍しいと言うか天地がひっくり返るような光景に頭が追いつかない。明日は雪が降るのかな。


「初先生は私よりも早く着て掃除をしていましたよ」


「ばっ、言うな花! それと先生はまだ少し恥ずかしいからいつもみたいにお姉さんでいいぞ」


「それだとみんなが真似してしまうのでは?」


「……そうだな。ならせめて篠崎先生にしてくれ」


「このクラスだと篠崎は遼さんもいますから被ってしまいます」


「あぁもうわかった! 呼びたいようにしてくれ!」


「わかりました。初先生」


 花がにこやかな微笑みを姉さんに投げかける。姉さんはもうどうにでもなれという表情をしながら机を再び拭きだした。


 ありえない。姉さんが押し負けただと。ありえない光景だ。あの暴君を打ち負かせた花は一体何者なのだ。何か弱みでも握っているのか? もしかしたら花は姉さんに対抗できる唯一の存在なのかもしれない。


「おい遼! 見てないでお前も手伝え!」


 そのセリフ覚えておけよ。家でそっくりそのまま返してやるからな。この状況を弱みとすればもしかしたら絶対不動の姉さんを動かすことができるかもしれない。失敗したらボコられるけどね。


 やれやれと言った表情で机にかばんを置き、二人の掃除に付き合うはめになってしまう。早く着いたんだし特にやることもなかったので断る理由が無いので付き合うことにする。こんな姉さんに付き合うのも悪くないと思い掃除道具を手にした。


 ―――――――――――――――――――――


 いつも通りの授業を終えた放課後、今日の部活は三年が抜けた今後のことと学園祭の話し合い。


 基本的に副部長は部長補佐であり、部長と会議に参加したり、部長のいないときの代わりになるらしいので部長の仕事を把握する必要があるそうだ。これって次期部長の育成みたいなもんだよな。


 今後の予定はクリスマス前に大会があるので今後はそれに向けて各チーム練習をすることとなった。


 その後の話し合いでは学園祭での出し物の案をみんなで出し、チーム分けをした結果、学年ごとのチームでフリースタイルを踊ることになった。一年メンバーと踊るのはこれが初めてなので楽しみである。


 後夜祭は現メンバーが全員出ることとなり、こちらはジャンル毎に大会で踊ったものを披露することにした。抜けた三年のソロの部分は各チームで話し合って補うことになった。大会で見た生徒もいるとは思うが少数なので、一から考えるよりは練習量も少なくて済む。


 そういうことで学園祭までの約一ヶ月は各チームに分かれてフリースタイルの振り付けを覚えることになるのだが、一年は振り付けを考えたことがあるメンバーがいないことに焦りを覚える。


 石田先輩に相談するも、


「副部長になったんだし、一年チームのリーダーはお前だ。自分で考えてみろ。これもいい経験だ」


 と丸投げされてしまった。とりあえず一人では経験不足なのでメンバーと相談することにした。


「ポッピンのこの動きは使えそうだよ」


「ブレイキンの動きはロッキンに似ているから取り入れられそう」


「アクロバットは篠崎の担当な」


 等、五人で様々な意見を出し合うのだが、振り付け全体の形が見えてこない。どんな曲を使えばいいのかが不鮮明だ。まずは曲を決めるべきだろうか。


 そもそもフリースタイルダンスとは何なのか。簡単に言うと形に囚われない、何でもありのダンスだ。ブレイキンやロッキン、ハウス、ヒップホップ等、様々な動きを取り入れても何の問題にもならない。それだから難しいと言われている。


 そんな難しいと言われているフリースタイルをこれからやろうとしている。石田先輩も言っていたがいい経験になるに違いないのだが、ダンス暦約半年も満たないメンバーでこれを考えるのは至難の技だ。


「うまくまとまらないから今日話し合ったことを参考にしながら帰ったら各自フリースタイルの動画を見て勉強しつつ、使う曲を何個か選定しよう」


 そう言うとメンバーは誰も文句を言わずに頷き解散となった。何してもいいと言われると何をしたらいいかわからなくなるのが普通だ。こういうのは経験しか頼りにならないと判断したことをみんなもわかってくれたようだ。


 家に帰り動画を見るもやはりわからない。ジャンルに囚われないというのは見ててわかるのだが、決まった動きがまるでない。自由な発想が足りないのかもしれない。 


 花ならもしかするとフリースタイルも詳しいかもしれないから明日聞いてみよう。



 しかしこの考えは間違いだった。翌日ダンスに詳しい花に聞いてみるも、フリースタイルが先ほどの説明以外のことは何も言えないということだったのだ。フリースタイル恐るべし。

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