第三十一話 浴衣
女の子の浴衣っていいですよね。特にうなじにそそられます。
最近のだとチャイナドレスみたいなスリットが入ってる浴衣もありますね。あれだと脚にそそられます。脚のきれいな女の子っていいですよね。
今日は夕方から桜とお祭りに行く約束をしている日だ。時間があったので教習所で最後の講習をうけることにした。今日は卒業検定前の最終確認のみだったのですんなり終わった。
「はい、篠崎さん。これで講習は全部終わりだね。来週に卒業検定受けてね」
教習所での講習が終わった。講習を受けたらすぐ免許が取れると思っていたが、卒業検定を受けて合格し、さらに免許を取るための試験を受けに行かなければならないらしい。
「君は操作がうまいから大丈夫だと思うけど気を抜かないように頑張ってきなさい」
「はい、ありがとうございます」
「卒業検定は月曜日の朝だから早ければ火曜日には免許が取れるよ」
ってことは月曜日と火曜日の部活は休まないといけないな。メッセージで部長に連絡しておかないと。大会まで一ヶ月切っているからあまり休みたくはなかったけど仕方ないよね。
講師の方と受付係のおばさんのところまで行き卒業検定の受付を行う。少し待っててとのことだったのでロビーの椅子に腰をかけておく。
「ねえねえ君~」
デジャブを感じる。声を掛けられたほうに目を向けるとあの化粧の濃い人だ。前よりも化粧の濃さがレベルアップしている。すっぴんの顔が気になる。とりあえず返事をするか。
「なんでしょうか?」
「君さ~今日ヒマ? これからお姉さんと神社のお祭りに一緒に行かな~い?」
またナンパか。今日はこの後桜と待ち合わせをしている。断るしかない。むしろ予定がなくてもこの人とは行きたくない。
「いえ、一緒に行く人がいるので」
「あら~ざんね~ん。じゃあまたね~」
もう教習所に来るのは来週で最後だからまたはないと思います。あの人俺に断られた後も他の人を誘っている。これが噂の肉食系女子なるものなのか。
「篠崎さーん、受付終わったから今日は帰っていいわよ。来週の卒業検定頑張ってね」
俺は腰をあげ、受付のおばさんにお礼を告げて教習所から出る。時間は午後三時、桜との待ち合わせの時間までまだ早い。一旦帰って風呂でも入ろうかな。
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家に帰るとリビングに姉さんがいた。ここ最近は朝から夜まで家にいないから珍しい。
「姉さん今日は帰りが早いね」
「あぁ今日はお祭りだからな」
「えっ、姉さんも行くの?」
「私も祭りぐらい行くぞ」
行くと言っても大学の友達とだろう。姉さんに彼氏はいないんだし女同士の集まりなのかな。とりあえず風呂に入ろう。
脱衣所に行くとちょうど藍が出てくるところだった。ちゃんと服を着ている。全裸じゃなくてよかった。妹に対してラッキースケベはいらないと思う。
「あ、遼兄ぃ。帰ってきたんだ。お風呂?」
「うん。待ち合わせの時間まではまだあるから風呂に入って行こうと思ったんだ」
「それがいい。不潔男子は嫌われる。今日いい匂いする香水借りる?」
香水か。そういえば使ったことないな。女の子と遊ぶようになったのは最近からだから今まで気にしていなかった。ここは藍の厚意を受け取っておこう。
「ありがとう。風呂から上がったら借りるよ」
服を脱ぎ、風呂に入る。シャワーで軽く体を流してお湯に浸かる。
この前花に俺の気持ちを伝えたんだ。今日は桜にもしっかり伝えなきゃ。桜怒るかな?怒るだろうなぁ。話し出すタイミングが重要だな。ここは間違えたらいけないと思う。
風呂から上がり体を拭く。着替えを手にした時ふと思う。
そういえば今日は神社でのお祭りだし浴衣が多そうだな。俺も浴衣を着て行こうかな。確か前に買ったのがあるはず。部屋で探してみるか。
そう思いリビングに向かうと姉さんと藍が浴衣の着付けをしていた。今日は二人とも髪を一つにまとめている。こうして見ると姉さんが少し目がキリっとしているがやはり二人は似ている。美女と美少女だ。浴衣もとても似合っている。
「二人とも似合っているよ」
「お前に言われてもうれしくねえよ」
「遼兄ぃ。かわいい?」
「あぁ。すごくかわいいよ。さすが俺の妹だ」
姉さんはたぶん照れ隠しだろう。そう思いたい。藍は何を着てもかわいいな。いつものツインテールではないので少し大人になった感じがする。この子抱きしめていいかな?
「遼の分の浴衣も準備しているわよ」
母さんが俺の浴衣を持ってくる。今年用にと新しいものを買ってきたそうだ。黒の生地に白のラインが入ったデザインだ。父さんが選んだみたいだからセンスは問題ない。
「今日は桜ちゃんと行くんですってね。楽しんでいらっしゃい」
そう言って母さんは俺の浴衣の着付けを手伝ってくれる。自分でできるといいんだけどそんな何度も着ないので着け方がわからない。母さんの協力でなんとか着付けを終わらせた俺は藍に香水の準備を頼むとこくりと頷いて部屋に向かった。
「そういえば、藍は誰と行くのかしら?初は小田さんのお兄さんと行くのでしょ?」
「母さん!」
「あらあら。付き合っているのですからいいじゃないの」
ん? 姉さんが一成のお兄さんと付き合っているだって? 初耳だぞ。
「姉さん一成のお兄さんと付き合っているの?」
「……そうだよ。大学入る前ぐらいからだからもう四年ぐらいだ」
知らなかった。姉さん俺には隠していたな。おそらく藍は知っているだろう。家族で知らなかったのは俺だけなのかも。
藍が部屋から戻ってきたので、香水を付ける。あまり付けすぎると匂いが強くなるのでワンプッシュ手首に付けて馴染ませる。うん、これはいい匂いだ。バニラの香りかな? 姉さんのタバコの匂いを良くした感じだ。
「藍、あなたは誰と祭りに行くのかしら? もしかして彼氏でもできたの?」
なんだと!? 藍に彼氏ができただって!? そいつを俺の前に出せ。藍に相応しいかどうか判断してやる。俺の藍を汚したりしてたらただじゃおかない。藍は結婚するまで純潔を保っていなければならない! 変な男だったときは俺が成敗してやる!
「遼兄ぃ、顔が怖い」
「藍、彼氏とやらを俺の目の前まで連れて来い。そいつには天罰を与える」
「今日は友達と行くの。彼氏はいない。遼兄ぃみたいにかっこよくて優しい人じゃないと嫌」
俺のプリティーリトルシスターはなんてかわいいんだ。俺が兄でごめんな。藍をもらってあげることはできないんだ。俺も藍は好きだよ。家族としてだけどね。でも彼氏ができた時は連れて来い。そいつには俺監修の藍検定を受けてもらって満点じゃないと付き合うことは許可できない。
「おい遼、桜との約束の時間は大丈夫なのか?」
姉さんに言われ時計を見ると待ち合わせの時間の三十分前だった。祭りは学園近くの神社で行われるから学園前のバス停で待ち合わせをしている。時間的にはちょうどいいかな。
「ちょうどいい時間だから俺は先に出るね」
「遼、中田さんには私が伝えておくから今日は帰って来なくていいわよ。楽しんでいらっしゃい」
なんて事をいう親だ。うちの親が許しても桜の親が許さないだろ。いや、桜の家に泊まった件がある。ちょっと不安だな。
外に出て待ち合わせ場所へ向かう。今日の天気は晴れだ。花火大会のような雨は降らないだろう。今日はトラブルとか何事もなく楽しめますように。
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待ち合わせ場所が見えてくると浴衣を着た桜が待っていた。淡いピンク、まるで桜の花のような色で桜にぴったりな浴衣だ。少し子供っぽい気もするがそこは桜のいい部分でもある。小柄な桜は花のような大人な感じがないものの桜にしかない魅力をたくさん持っている。
桜がこちらに気づき小走りで向かってくる。おいおい、浴衣だから走ると危ないよ。
「久しぶり、遼」
桜は天使スマイルで微笑む。いや、少し顔が赤いからいつもの天使スマイルより五割増しぐらいでかわいく見える。
「久しぶりって言っても二週間振りぐらいだぞ?」
「私にとってはすごく長い二週間だったのよ?」
「そんなもんか?」
「そんなもんよ」
俺達は微笑み合う。このかわいい天使な小悪魔ちゃんが今日はずっと天使でいれくれると俺はすごい楽なんだけどな。それも俺の行動次第なのかな。
「じゃあ行こうか」
ここからお祭りが行われている神社までは歩いていく。というより学園のすぐそこにあるから五分も歩かないうちにつくだろう。
「ねえ遼、人が多いから手を繋いでもいい?」
バス停には人が少なかったが神社に向かうに連れて人と屋台が増えていく。花火大会の会場ほど広くはないがはぐれると合流するのが難しいだろう。
「そうだね。はぐれるとまずいから手を繋ごうか」
「うん!」
天使スマイルで元気に頷き俺の左腕に抱きついてくる。小柄な桜が俺のひじ辺りを自分の腕で抱いているのだ。手を繋ぐんじゃなかったのか?
「桜、手を繋ぐんじゃないのか?」
「人が多くなると歩きにくくなるからこっちのほうがはぐれにくいと思うの」
桜さん、これではもうすでに歩きにくいです。周りが俺達を見ているよ。羨ましそうな目だ。こんなかわいい子と一緒に歩いているんだし仕方のないことだ。一昔前まで俺もそっち側にいたんだ。お前らも頑張れよ。そして桜よ、花ほどではないものの柔らかいその胸が当たっています。いや、もしかして当ててるのか?
「当ててるのよ♪」
また心を読まれた!? だがここは平常心を保つのだ。でもこれ少し手を動かすと触ってしまうかもしれない位置だよ。桜さん、小悪魔スマイルになってるよ。もしかしてそれ狙っているの!? 天使の桜に戻ってきて!
「今日はたくさん楽しもうね!」
もう気疲れしそうな感じがする。まあでも折角のお祭りだ、楽しまなきゃもったいない。
桜に腕を抱かれたまま神社へと向かう。これ花にでも見られたらまずい気がすると思いながら足を進めるのであった。
私も学生時代に浴衣を着てデートしてみたかった!




