8.In to jail
大もうけだ! この二日間、本当に大もうけだ!
確かに俺は別に労働したわけじゃないが、ただ、より賢い現代人だっただけだ!
四日目の朝、俺とヒヤシンスは二時間ほど魚を捕った(昼前には他の村人も来るので、早朝のうちにやった)。
彼女の効率の悪さに物足りなく思った俺は、網で川を塞いで、何度もすくい上げる方法に切り替えた(彼女は止めたけど、俺は緊急措置だと言い訳した)。
全部で七十四匹。タマ井魚、白青、ブルートラウト。
このまま売りに出しても大した値段にはならないと思った。何せ魚を売ってるのは俺たちだけじゃない。
それに、ここは西洋風の社会だ。和風の食べ物なんて見たことがないはずだ。
魚を使う。
和風の料理。
…………
……
寿司以外、すぐに思いつかなかった……
…………ヒヤシンスに聞くわけにはいかない。一目で何も知らないのが分かる。
サンマって魚の種類であって料理名じゃないよな?
………………
結局俺たちは――いや、俺は――二つに分けることにした。
一つは魚のすり身にして、胡椒と塩をまぶして先に漬けておく。もう一つは家で焼き、焼き終わったら村外れに臨時で出した露店に持っていき、ヒヤシンスに売らせることにした(移動式の焼き台が買えなかったからだ)。
彼女にどうやって呼び込みをするのか聞かれたけど、俺も正直分からなかった。彼女に任せたのは、少しはできると思ったからだ。
最後に言ったのは、「勇者様が一番好きだったもの」「常青村の特産品」「勇者様を知ってる」って言えと。
値段はまず高めに設定して、相手が渋ったら値引きして妥協する。演技は多めに。
初日で四百六十三ナッシュを稼いだ。ヒヤシンスの話だと二十三ベトに相当するらしい。何だその換算率。普通のRPGなら金貨一枚が銀貨十枚とか、そういうのじゃないのか? こんな設計は一体……
それで五十ナッシュで壺を五十個買って、漬けた魚のすり身を小分けにして、翌日は村の入り口で売った。
相変わらず「勇者様が一番好きだったもの」「常青村の特産品」「勇者様を知ってる」を謳い文句に。
「昨日は勇者様が一番好きなのは焼き魚って言ってなかった? 今日はなんですり身なんだ?」と聞かれた時は、
「それがですね、一番本格的な食べ方は、このすり身を焼き魚の上にのせるんですよ。ただここ二日間は工程の都合で別々に売ってるだけで、今買っていただければ壺もおまけでつけます!」
「お買い得ですよ!」
こうして俺とヒヤシンスはまた人を騙し……いや、七百ナッシュを稼ぎ出した。大成功だ。中には「また売ってくれれば買う」と言ってくれる人まで出てきた。
へへへ、現代人の知恵ってやつだな!
そしたら俺たちは捕まった。村の牢屋に三日間ぶち込まれ、収入はすべて没収された。
そして今に至る。
「牢屋」――それは太い木の柱で囲まれた粗末な小屋で、床には乾いた藁が敷かれ、隅っこには割れた壺が何個か転がっているだけだ。
唯一の光源は廊下の突き当たりにあるランプで、その薄暗い光が柱の隙間から差し込み、藁の上に細長い影を落としている。
ヒヤシンスは反対側の隅にしゃがみ込み、翼をぎゅっとたたんで、頭を膝にうずめている。
「おい。」
返事がない。
「ヒヤシンス。」
翼がぴくりと動いたけど、顔は上げない。
俺はため息をついた。
どうやら「人を慰める」ってやつも、ある程度はできないとダメなのかもしれない。
でも俺はちっとも優しくない。シグマ男だからな。
「……悪かったな。」
小声で言った。
そのせいで、静まり返った後には藁の擦れる音がやけに耳についた。
「怒ってるのは分かってる。俺を責めても仕方ない……確かにあれは俺の考えたことだ。認める。」
返事はない。
彼女の体がかすかに震え始めた。振動は小さいけど、翼の羽毛の先がぷるぷるしているのが分かる。
かなり怒ってるな。
ああもう……
「次からは魚は売らない。代わりにお前の羽を売ろうかと思ってるんだ……そうだよな、お前が普段落としてる羽、あれを集めて……ハタキとかにして売ろうかって……」
彼女が急に顔を上げた。
ランプの光が彼女の顔を照らす。ようやくその表情がはっきり見えた――小さな顔がくしゃくしゃに歪んで、鼻の頭は赤く、目の下にはうっすら涙の光が浮かび、唇は真っ白に引き結ばれている。
泣きそうな顔だった。
え? 何か変なこと言ったか?
「違う違う! 嫌なら売らなくていいけど――」
「……しゃべらないで。」
声がやけに小さくて、少し震えていた。
足の指がぎゅっと一緒に丸まっている(繰り返し言うけど俺は足フェチじゃない……っていうか彼女の足、なんで鳥の爪じゃないんだ?)。
「トイレ……行きたかったんだ……店じまいしたときから……ずっと……」
ああ、トイレか。人間だものな。
そういえばこの世界で美少女の聖水って売れるのか?
いや、何考えてんだ俺。
あたりを見回す。
桶がない。
鉢がない。
トイレに使えるものが何もない。
「……なんで早く言わなかったんだ?」
「だ、だって……我慢すれば出られると思ってたから……」
「三日分? 三日分も我慢するつもりだったのか?」
彼女はまた顔を膝に埋め、翼の先でオーバーオールの裾をぎゅっと握りしめた。
「……はあ、本当にお前には手を焼くよ。」
俺は立ち上がって、木の柱の隙間から廊下に向かって、息を大きく吸い込んだ――
「衛兵さーん! 誰かいますかー! こっちの人がトイレに行きたいんですけどー! 急いでますー! 本当に急いでますー!」
廊下の突き当たりの壁が爆発した――木片、土煙、石の破片が混ざり合って俺の方に飛んでくる。本能的にしゃがみ込み、両手で後頭部を覆った。
炎。
悲鳴。
衛兵の悲鳴。
老若男女の悲鳴。
ランプが消えた。暗闇の中で、廊下の向こうの破れた穴から差し込むオレンジ色の炎の光だけが、廊下全体を明滅させ、影が地面で激しく揺れている。
……何が起きてるんだ?
牢屋の太い木の柱が、鈍い音とともに外側へ倒れ、地面に叩きつけられて土煙が舞い上がった。
……とにかく脱獄だ。
俺は一歩踏み出して、砕けた木片の上を歩く。足の裏がぎしぎしと音を立てる。そして――
振り返る。
「何ぼーっとしてんだ! 走るぞ!」
「あ、あ、あたし――」
ああ、そうか。
「――足、動かないんだな?」
返事はない。
外からまた悲鳴が聞こえ、金属のぶつかる音、誰かが「門を閉めろ!」と叫び、続いて別の爆発音がさっきよりは遠くで響いたけど、地面が震えるほどだった。
迷ってる暇はない。
彼女を抱き上げた――片手で背中を支え、片手で膝の裏を支える――思ったよりずっと軽くて、三十キロちょっとくらいだ。骨格が細くて、まるで鳥のようだ(当たり前か)。
彼女はびくっと縮こまり、翼が反射的に俺の顔に向かって叩きつけられそうになったけど、ひょいと避けた。
「もし俺に小便かけようものなら、殺すからな。」
「……お、おお……大便だよ。」
「知りたくもない!」
彼女を抱えたまま廊下の出口に向かって走る。足元には割れた木や石が散らばっていて、一歩ごとにぎしぎしと音がする。
彼女の体は弦のように張りつめ、翼の先が俺の襟をぎゅっと掴んでいる。正直ちょっと気持ちいい。
受付の傾いた木の机を通り過ぎる時、視界の端に何かが映った――汚れた革の財布だ。ぱんぱんに膨らんで、半分が机の縁からはみ出している。さっきの混乱で櫃台から落ちたんだろう。
迷わず片手で掴み、ズボンのポケットにねじ込んだ。
大通りに飛び出した瞬間、外の光景に全身が凍りついた。
火。
多くの火。
村の入り口の大木の下が燃え上がっていて、炎が土道を真っ赤に照らし、黒煙が空へと立ち上っている。空気は木と茅葺きの焦げた匂いで満ちていた。地面には三、四人が倒れている――全員、微動だにしない。
そして彼らは、炎の中に立っていた。ざっと二、三十人。背丈も体型もばらばらで、それぞれが武器を手にしている――錆びた鉄剣、釘のついた木の棍棒、よく磨かれた鉈、さらには農具から外したらしい鎌まで。
盗賊だ。正真正銘の。モヒカンのチンピラじゃない。
適当に決めつけてるわけじゃない。だって彼らは実際にこう叫んでいるからだ。
「――男は皆殺し! 女は連れ去れ! 金目のものは全部奪え! 俺たちは盗賊だ! 分かったか! 盗賊だ!」
哄笑と叫び声が入り混じり、狂った野犬の群れみたいだった。
俺は一歩下がった。
そして二歩目。
炎の光が彼らの顔を照らす。笑っている者もいれば、無表情な者もいる。地面の衛兵の死体を刃先でつついて、本当に死んでいるか確認している者もいる。
ヒヤシンスが俺の腕の中で震えている。翼の羽毛が首に硬く張りつき、彼女の荒い息が俺の顎のラインに当たるのを感じる。
「……なあ。」
「うん。」
「……逃げよう。」
俺は振り返り、彼女を抱えたまま、炎の光が届かない方向へと走り出した。




