6.鬼
カトランド公国、雪松の滝の森――
そこには、引き裂かれた四肢が、四肢が、また四肢が転がっていた!
血と切断された四肢が黒鋼傭兵団の仮設キャンプを埋め尽くしていた……いや、これらの四肢は敵のものではない。傭兵団自身のものだ!
百二十八人編成の軍団。平均レベルは三十三。勇者様から送られた最新装備に、聖女様の加護まで施されている。
それが今や、生き残りはたった一人。
団長、ペギハロ・ロット。種族はドワーフ、職業は狂戦士、Lv.70。
手にした槌剣「帰田」は、彼と共に百五回の死線をくぐり抜けてきた――無数の傷を負っており、その刃傷の半分は、今回の戦いで刻まれたものだ。
何者だ、この老兵をここまで追い詰めたのは?
赤く凶悪な鬼面と手甲。黒く長い長衣。黒い刃、黒い柄、黒い鍔――
向かうは、赤面鬼と呼ばれる剣士。……ある者は復讐の亡霊だと言い、ある者は魔王の残党だと言う。
刀剣を扱う戦士の前に現れては、無差別に殺戮を繰り返すという。
(「クソッ……」)
四年前、勇者様にこっぴどく叩きのめされて、かつての自分がどれほど邪悪だったかを思い知った。
あの日以来、ペギハロは勇者様を己の手本とし、ひたすら修練を積み、ひたすら善行を重ねてきた――それなのに……
(「こいつが……俺への報いってわけか……?」)
勇者様からの討伐要請を受けて、部下を連れてこの地に急行した。見事な待ち伏せ戦を仕掛けるつもりだったのだ。
ところが、罠すら仕掛け終わらぬうちに、これだ。
十五秒。
この男が他の全員を片付けるのに要した時間は、わずか十五秒だった。
唐竹、袈裟、逆袈裟、一文字、切上、薙、突き――それらが混ざり合った嵐の如き一閃だった。
だが、ペギハロに対してはただひたすらに受け流し、かわし、攻撃を仕掛けようとしない。
まるで、掌の上の鼠を弄ぶ猫のように。
そうして三分間見つめ合ったまま、赤面鬼は一向に攻撃せず、矮人の戦士の体力がゆっくりと回復するのを許していた。
侮辱だ。あまりに大きな侮辱だ!
呼吸を整えたペギハロは、猛然と飛びかかった!
「舐めるなよてめェ! Lv.70! 鬼惑天!」
刃のついた長棒が狂ったように振り回され、息つく暇も与えず容赦なく敵を殴りつける!
周囲の空気が圧縮され――解放され、熱量が増していく! 威力が増していく!
そうだ! これこそ無敵の奥義「鬼惑天」の原理にして魅力だ!
体力は減っていくが、攻撃は一撃ごとにより強く、より凶悪に――!
多い。そして強い。
……それが、何の役に立つ?
面の下の男は、避け、あるいは刀で受け流す――かちん、かちん、一撃すら当たらない!
黒い刀にすら、かすり傷一つついていない!
ダメだ。このままじゃダメなんだ!
「今だ!」
ペギハロは一撃をかわされたその勢いのまま、槌を地面に叩きつけた!
「Lv.70! 圧雷!」
瞬時に土煙が舞い上がり、岩が砕け、幾筋もの雷光が蛇のようにうねりながら鬼剣士へと襲いかかる!
だが、それでも通用しない。
赤面鬼は黒い武士刀を軽々と操り、雷を導き、円を描き、地面に刺し込んで――完全に無効化してみせた。
強い。
強すぎる。
自分に、まだチャンスはあるのか?
仲間たちの仇を討つチャンスは? 勇者様に恩返しするチャンスは? 生き延びるチャンスは?
今、この瞬間に、ありったけの手を尽くしたというのに?!
(「いや……まだ……まだ一つ……!」)
まだ一つ?!?!
そうだ。彼が自ら封印したあの技。
血にまみれた、邪悪に満ちたあの技。
(「クソッ……二度と使わないと誓ったのに……!」)
身を沈め、棒を構え、突撃の体勢を整え、気を集中する。
そして――突撃!
赤面鬼の心臓を目指して直進!
三メートル! 二メートル! 一メートル!
今だ!
「Lv.70! 攻城斬!」
残り一メートル――何を言っている?
いや、この技の真実を見なければ、そう言うのも無理はない。
槌刃の先端から、突如として巨大な青い虚影が溢れ出したのだ。槌刃自体は二メートル――虚影が加われば、その長さは四メートルに達する!
そして速度と貫通力は、さらに致命的だ。
ペギハロの突撃速度が秒速八メートルならば、その槌先が放たれる速度は秒速二十メートル!
かつて彼は、この卑劣な一撃で十五の村を瞬時に血に染め、三十人の名高い騎士を葬った。
まさに黒歴史そのもの、思い出したくもない技だ。
今の彼は、この技を自らの過去と共に葬り去った――
感嘆している場合ではない! 相手はまだ倒れてはいないからだ!
黒い影が両腕を胸に抱えて跳び上がり、水平軸を下の矮人に向けながら、冷たく言い放った。
「Lv.79。攻城斬。」
頭部がさらに巨大な攻城槌に叩き潰される直前、ペギハロは見た。
あの午後を。自分が救われたあの午後を。
勇者様が手を差し伸べ、倒れ伏した自分に微笑みかけていた、あの日を。




