15.Successfully sneaking
「……あの新しい先生、見たか?」
「どの? お嬢様に数学を教えてるってあの?」
「他に誰がいるんだよ。あの日、旦那様が書斎に連れて行くとき、ちょうど廊下で銅器を磨いててな、一瞥したんだ――若すぎる。数学を教えるって言うから、てっきり馬丁の面接に来たのかと思ったぜ。」
「どれくらい若いんだ?」
「見た感じ……せいぜい十歳そこそこじゃねえか? 髪はぼさぼさで、服もサイズが合ってない。あの上着の袖、明らかに短かったぞ。古着屋で拾ってきたみたいだった。」
「ちっ、あの人よそ者だろ。まともな服を買う金なんてあるわけないさ。聞いた話じゃ、北の方から来たんだと――カトランドの方だって。いや、もっと遠くかもな――あの喋り方、変でしょうがないよ。あんた、あの人の話すの聞いたことあるか?」
「ちょっとだけな。何だっけ……名前も変で、喋り方もまるで口の中に熱い芋でも入ってるみたいにぼんやりしている。」
「そうそう! 午後にあいつが執事と話してる時、俺が茶を運んでたんだ――気が狂ってるんじゃないかって思ったよ! 突然詩を吟じ始めるんだぜ! まるで誰かの口調を真似してるみたいに。」
「もしかすると本物の外国人かもしれないな。エルファニアの連中はああいう喋り方をするって聞くぞ。」
「エルファニアは知ってるんだ。前に旦那様と一緒に港に荷物を取りに行った時、あの商人たちの口調はお前の言うのとはまるで違った。どっちかって言うと――」
「とにかく、今日お嬢様が授業を終えて出てきた時、なんか嬉しそうだったぞ。」
「お嬢様は数学が好きなんだよ。」
二人は同時に小さく笑った。その笑い声は池に石を投げ込んだように広がって、すぐに消えた。
暖炉の中から鈍い音がして、鉄の扉が緩んだ。
「来た来た。話はここまでにしよう。」
「でもそう言えば、今日の午後、旦那様が帰って来たって聞いたか?」
「どの旦那様だ?」
「他に誰がいるんだ。武術を教えてるあの旦那様だよ。もう六十に近いだろ? 髪は白くなってるし。噂じゃ、お嬢様の祖父なんだと。あの伝説の『逆戟鯨』ってやつだ。」
「ありえなくもないな! 奥様は確か鯨拳の継承者だって聞いたぞ。」
「そうだろうな。でも勇者様には勝てなかったそうだね。」
「皿! 皿!」
「持ってるっての!」
茶色い髪の女中が身をかがめ、厚手の布を手に当てて、黄金色のアップルパイが載った皿を鉄製のオーブンから慎重に引き出した。丸いパイの縁はこんがりと焼け、表面には細かい泡が浮かび、蜜色の果汁がひび割れから染み出して、皿の底に小さな飴色の溜まりを作っている。
二人は一瞬沈黙し、同時に深く息を吸い込んだ。
そして――左の女中が突然人差し指を立てて唇に当てた。
右の女中が一瞬固まり、そして同じように聞き取った。廊下の向こうから足音が聞こえる。速くもなく遅くもなく、靴底が石畳を叩く反響が澄んで規則的だ。
執事の足音だと、二人には分かった。
「しっ――」
「分かってる。」
二人は視線を交わし合い、同時にうつむいて、焼き立てのアップルパイの皿を見つめた。まるで何も話していなかったかのように。
「アップルパイができたか? 書斎に持っていけ。旦那様とお客様が待っておられる。」
「はい――すぐに。」
茶色い髪の女中が皿を手に取り、相方と一緒に扉の方へ歩いていく。
書斎の分厚いオーク材の扉は少しだけ開いていて、隙間から暖かなろうそくの灯りが漏れ、男二人の話し声がかすかに聞こえる。
二人は同時に扉の前で立ち止まった。
茶色い髪の女中は皿を左手に持ち替え、右手を上げてノックしようとした――半秒間のためらい。彼女は横にいる相方を一瞥し、相手が微かにうなずいた。
そして、指を伸ばして、扉を三回軽く叩いた。
「こん、こん、こん。」
「お入りください! お入りください! さあお二人とも! この問題の答えを聞かせてください!」
扉が開く――手を振り回しながら机の周りをくるくる回る男性、年下のオレンジ色の髪のハーピーの少女、そしてもう一人、少し年上の金髪で八重歯の貴族のお嬢様。
「私、解けた! 15だ!」
オレンジ色の髪のハーピー少女が紙に何か書き込んで、先に答えた。
「回――答――違―い!」
先生が少女の頭をこつんと叩いた。
「ははは! 風信子は大バカだな! 私が解いたぞ! 18だろ?!?!」
「回――答――正―解! その通り! 応用が利く! cosとsinの共演! 三角と三角の夢のような変化だ!」
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今日はアイゼンベルグ家に潜入して三日目……
とても順調だ!
アイゼンベルグ家が数学の先生を雇っていると聞き(街中に知れ渡っていた)、
まず八十ベトを使って自分と風信子にそれぞれ高級な洋服を一着ずつ買った。何せ人間は見た目が大事だ。それから採用試験に応募した。
試験三回、面接一回――俺にとっては問題なかった。何せもっと高度な現代社会から来ているからだ。
個人情報の部分では、俺はレナールに現代日本人の習慣を見抜かれるのが怖かったので、遠方から来た数学博士フータ・サンティグだと名乗ることにした。風信子はあまり賢くない弟子という設定で、演技は大げさに、熱狂的にやった。
「互いに対応し合う像! 決して1を超えられない!」
そして俺の獲物――まずはレナール。昔はチンピラだったらしいが、今は違う。でも俺から見るとまだその片鱗が残っている。大ざっぱで、酒が好きで、夜になるとベロベロに酔っ払う。
次にレナールの夫人、シーハイ・アイゼンベルグ。チンピラの頃に結婚し、子供も産んだ。レナールが冒険に出ている間は家計を切り盛りしていた。昔はレナールを愛していたが、その風紀には不満があったらしい。今は勇者様に更生されて、二人はより仲睦まじくなったそうだ。
レナールの娘、パルティ・アイゼンベルグ。見た目は十歳だが、実はもう十八歳で、俺より二つ年上だ。しかし何もできない大バカで、何も知らず、傲慢な小娘だ。
「嗔」のこともうまくごまかした。
「おいおいおい、フータ兄さん、その刀はどうしたんだ?」
「おお! レナールさん! その質問、嬉しいです! これはエル村の廃墟を通りかかった時に見つけた刀です! 私は持ち上げられませんが、数学的な美しさを最もよく体現した武器だと確信しています! この波打つ曲線をご覧ください! まるで冪関数が1より大きい場合と0より大きく1より小さい場合のグラフが交わる角度のようではありませんか! そしてこの鍔! まるで――」
「もういいもういい、お前の言ってることはさっぱり分からん。好きにしろよ~~~」
とにかく非常に扱いやすい一家だ。そのうち適当なタイミングで殺せばいい。ガス爆発とか、食中毒とか、何でも使える。
だが、噂のあの『逆戟鯨』――
「先生! 武術の授業に行ってきます! アップルパイは先生とおじいちゃんで食べてください!」
俺は風信子の翼が掴んでいたアップルパイを奪い取り、窓辺に立つ。
裏庭では、がっしりとした大柄な白髪の髭の老人が、パルティとしばらく笑い合った後、小娘に下がるよう合図し、馬歩を固める――
「Lv.3!! 戦鯨砲!!!」
巨大な掌から光が放たれ、向かいの五本の木が木屑と化して破壊される! 残骸が宙に舞う!
「ははは! 老夫またしても加減を間違えた! すまんすまん!」
沈鯨鉄浮。鯨系武学の集大成者。ソレン王国の海の守り人。シーハイの父。レナールの舅。パルティの祖父。そして何より――俺にとって最大の障壁だ。




