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【コンテニュー】  作者: ふがほ
第1章 「殺した未来」
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1幕7話「エーテル」

「それじゃあ、実践訓練の説明を始めるわ。」


 気を取り直してラクロ達は列を組み、トリルの話を聞いていた。風も今は止んでいる。


(それにしても後ろからの視線が痛い。)


 不機嫌そうなウェートの視線がラクロの背中に刺さっている。トリルに注意されたからだろう。


「ラクロ、大丈夫?その傷。」


 頬の傷を心配するアイラ。


「あぁ、これくらいなんてことないぜ!」


 心配させまいと笑顔で答える。


「ちょうどいいわ。ラクロ君、その傷治すからこっちに来てちょうだい。」


「治す?包帯を巻いたりですか?」


 ラクロが首を傾げると、トリルは小さく笑う。


「包帯とかじゃなくて、そのまんまの意味。授業も兼ねて治すのよ。早くこっちに来なさい。」


 前に出てトリルの横に立つ。


「良い?生物の体の中にはエーテルっていうエネルギーが流れているの。私達、ロイア兵団の一般兵達は2つの用途で使うの、一つ目が。」


 トリルはラクロの頬にそっと手をかざす。次の瞬間、傷口が淡い光に包まれる。


「……っ!?」


 ラクロ含め、ここにいる皆が動揺する。


(なんだこれ、熱くも、痛くもないし、不思議な感覚。)


 少しずつ傷が閉じていき、最後に細い傷跡が残る。


「すげえ。」


 傷口があった所を手でさすり、思わず感嘆の息を漏らす。傷口をトリルは不思議そうに見つめる。


「あら?傷跡が残っちゃった。うーん、傷跡は普通、 残らないと思ったんだけどなぁ。ごめんなさい。」


 謝罪の言葉は今のラクロには届かなかった。


「トリル教官!トリル教官は能力者なんですか?!」


 アイラが一歩前に出る。目は輝いていた。トリルは誇らしげに胸を張る。 


「まぁ、待ちなさい。今から説明するわよ。」


 全員を見渡すと一度咳き込み、続ける。


「さっきのはエーテルの応用、『修復』よ。体の中に流れるエーテルを操作して、損なわれた部分を元の状態に戻したってわけ。」


 アイラはさらに一歩前で出る。


「そ、それって私もできますか?」


「えぇ、できるわ。訓練を頑張れば。でも、他人の傷を『修復』するのは本当に技術がいるわ。それじゃ、次の応用を教えるわ。その前にもっとエーテルとの関係を説明しないといけないわね。」


 トリルはラクロに戻るよう目で合図し、ラクロも意図を汲み取って戻る。


「エーテルは、そうね......水みたいなものよ。」


 自身の体を指でなぞる。


「普通の人は流れるだけ。でも能力者は、それを容器に「溜めて」「動かして」「形」にできる。」


 不機嫌そうなウェートを見る。


「能力者によって能力が違うのはその容器の形がそれぞれ違うから。伝わった?」


 ウェートは静かに頷く。それを確認し、また話へ戻る。


「でもね、3年前にどっかの頭良い人が研究で普通の人でもエーテルを操れる方法を見つけたの。見せてあげる。」

  

 そう言うと、腰に携帯していた剣を抜き、強く握りしめる。すると『修復』の時と同じ、淡い光が剣を包んでいく。


「これが『流』よ。」


 剣を一振り、空気が鋭く震える。


「『流』は自分のエーテルを物体に流し込む事で強化できる。簡単に言うと、新たな流れ道を作ってあげるっていうことね。『流』から優先的に習得するわ。」


 またもや歓声があがる。


「かっけぇ!これを俺達は覚えれば良いって事か!」


 興奮気味なオルクを見てトリルはまた得意気になる。


「これを覚えなきゃ、カルクスには傷一つすら付けれないわよ。」


 今までに見たことない真剣な目つきになる。


「死ぬ気で習得しなさい。」


 説明が終わると周囲はやる気に満ち溢れていた。


「あ、ちなみに――」


 トリルは思い出したように付け加える。


「能力者は『修復』と『流』、どっちも使えないからね。」


 一瞬、場が静まる。


「え……?」


 誰かの間の抜けた声が漏れる。


「能力者は自分のエーテルを形にすることに特化してるの。だから逆に流すことができないのよ。」


 その言葉にラクロの表情が固まる。


「無理に使おうとすると能力が使えなくなるから。」


 一拍の沈黙。


「.......え?」


 瞬間、ラクロは膝から崩れ落ちる。オルク、メレー、ブルドが無言で肩に手を置く。かける言葉が見つからず、こうするしかなかった。ラクロの顔にはうっすらと涙が浮かんでいた。


「お前ら、『修復』と『流』の訓練頑張れよ。」


 その顔は、笑っていた。


          ◇


 トリルの監督の下、皆はナイフを握り締め、力を込めていた。トリル曰く、『流』は最初は小さい物から始め、段々と慣れさせるらしい。やる事のないラクロは腕立て伏せをしていた。


(ん?あれは。)


 ウェートがトリルに近づき、何かを話している。その視線が、一瞬だけラクロへ向いた。


「ラクロ君!!こっちに来なさーい!!」


「はーーーい!!」


 腕立て伏せを止め、走ってトリルの元へ行く。近づくにつれ、ウェートと目が合う。明らかに、機嫌が悪い。


「なんですか?トリル教官。」


「忘れたの?ウェート君と戦う約束でしょ?」


「えっと、そうでしたっけ?」


 首を傾げて見せる。


「逃げないでくれよ。」


 凄い迫力の睨み。忘れたフリを見抜いている。


「はぁ、いつやるんですか?」


 日時を聞く。


「今からに決まっているでしょ。」

 

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