1幕 第3話 「始まり」
ミーラン教官の話が終わり、少し時間が経つ。さきほどの空気も和らぎ、みんなはそれぞれまた会話を始めていた。アイラもフレットと会話を再開している。ラクロはそんなアイラを木の下で座りながら眺めている。
(ふぁ〜、暇だなぁ。)
欠伸をかいていると、女の人が走ってくる。
「新入兵の皆さん!全兵行進を始める為、速やかに門の前に集まりトリル教官の指示を聞いて並んでください!!」
教官の1人だろう。指示の声を聞き、皆はゾロゾロと
門の元へと走っていく。アイラはフレットとの会話をやめて別れ、ラクロのいる木へと駆け寄ってくる。
「ほらラクロ。さっきの女の人の指示聞こえたでしょ?早く行くわよ。」
「あぁ、分かってるよ。おっちゃんに良い姿を見せないとな。」
「えぇ、もちろんよ!」
笑顔でアイラが答える。そして2人で門へ歩いていく。
◇
門の前へ着くと、先輩兵らしき大勢の人達が武器を構えて整列していた。そんな大勢の前で金髪の長髪で凛々しそうな女の人が新入兵の整列をしていた。きっと彼女が先程言われていたトリル教官だろう。
「あなたは先に来たから前に並んで。あなたは後から来ていたわね。なら後ろに並んで。」
次々と並ばせ、最後にラクロととアイラを見る。
「あなた達で最後ね。一番後ろに並びなさい。」
「はい!」 「は〜い。」
指示された通りにすぐに後ろへと並びに行く。
「全員いるわね。まずは自己紹介をしましょう。私はトリル。プリル・トリル。詳細は後で、君たちには今から国を全員で行進してもらう。距離はそこまで長くないから安心しなさい。以上。質問があるなら今の内にしなさい。」
みんなは黙っている。質問は無いのだろう。
「そうだ、注意してほしいことがあったわ。あなた達、市民の前で情けない顔はしないで。ちょうだい。笑顔でいること。分かったわね。」
「「「「「はい!!!」」」」」
トリルが腕に付けている時計をチラッと見て前へ向き直す。
「それでは、今から全兵行進を始める!」
◇◇
全兵行進が始まった。新入兵は一番前を歩き、その後ろを先輩兵たちが並んで歩いてる。国全体は笑顔、喜びの歓声、拍手に包まれて幸せそうだ。ロイア兵も笑顔で民衆に手を振りながら行進を続ける。そんな中、新入兵列の最後尾でラクロとアイラはウルフォを探している。
「なぁなぁ、そっちいたか?」
「うぅん。見つんない。」
「もしかして、なんかあったか?」
落ち込みそうになった時、
「おおおおぉぉぉ〜〜〜〜〜〜いいぃぃ!!」
聞きなれた野太い声が聞こえ、2人同時に顔を上げる。
「アイラァ!ラクロォォォ!がんばれよぉ!」
声は上から聞こえる。見上げてみると、大きな緑色の旗を屋根の上で振り回しながらウルフォは叫んでいた。周りからクスクスと笑い声が聞こえる。
「もう、ウルフォおじさんったら、恥ずかしい。」
「ははは、おっちゃんってやっぱ面白いな。」
アイラは赤面、ラクロは大笑い。ウルフォは真剣な顔。ラクロとアイラが通り過ぎてもウルフォはずっと旗を振っていた。
◇◇◇
全兵行進が始まってから6時間で終了した。全兵は基地へ帰り、新入兵は外でミーランの話を聞いている。
「皆、今日はお疲れ様だ。足も疲れただろう。寮へ戻り、飯を食らい、風呂へ入り、そして良く寝なさい。服や下着などは兵団から支給する。明日からの訓練を頑張りなさい。では、これにて入隊式を終わる。解散ッ!!」
◇
若い教官に寮を案内される。寮は男子寮、女子寮で
分かれており、それぞれ5部屋ずつあった。ラクロは
他の3人と共に〈103〉と書かれた部屋に案内される。中に入ると2段ベットが二つ置かれており、ベットの
上には白い服が置いてある。早速、どこで寝ようか
悩んでいると、
「俺の名前はオルク・バレット。よろしく」
「ぼ、僕はメレー・グレンズ。よろしく。」
「ぼくはぁ、ブルド・ゴメタだよぉ。よろしくねぇ。」
赤髪のオルクが名前を言った後に今度は眼鏡をかけたメレーが自己紹介をした。そして流れるように太っているブルドが自分の名前を言う。最後に、と3人は
ラクロを見る。
「オレはラクロ・ストロークって言うんだ。これからよろしくな!」
ラクロも流れに乗って自己紹介をし、一人一人に力強く握手していく。
「なぁなぁ、ところでお前らはどこで寝る?オレはどこでも良いぜ。」
2段ベットを指差し、全員に聞く。
「僕は下が良いな。上で寝たら落ちそうだし。」
「俺は上だな。高いところが好きだからな。」
「ぼくもぉ上が良いなぁ。こういうのって憧れてたんだな。」
メレーは下、オルクは上。ブルドも上、、、
「ねぇ。オルク君の下で寝ても良いかな?」
メレーがラクロに聞いてくる。
「良いぜ。言っただろ、オレはどこでも良いって。」
「ありがとぉ!!」
メレーは笑みを浮かべて感謝を伝える。すると、
グゥ〜〜〜〜〜〜という音が部屋に響く。
「ぼくぅ、お腹減ったんだな。はやくみんなでご飯食べに行こぉ。」
とブルドがお腹をさすりながら提案する。
「確かになぁ。よし、食堂に行こうぜ。」
メレーとオルクの手を引っ張り、ブルドを体で押しながら食堂へと全速力で向かう。こうして、ラクロの兵団生活が始まるのだった。




