09 私の旦那ですが何か?
ぽちっと、スマホのアラームが鳴る前に止めてしまう。
正が上半身を起こして清子を見ると、清子も起きていた。
「あ…おはようございます。早いですね」
今日は水族館デートの日だ。
そのため、いつもより3時間も早く起きてしまった。
「おはようございます。正さんも早いですね」
清子もまた、4時間前に起きていた。
水族館のオープンは10時。
そして、今は6時。
早すぎたと2人とも感じていたが、もう目が冴えてしまっている。
「少し早いですが、朝食にしましょうか」
正がそう言ってベッドから出る。
休みの日の食事当番は、正が担当しているからだ。
「あ、正さん。少し早く起きてしまいましたし、カフェで朝食を食べませんか?近くのカフェは7時オープンですから」
提案してから、はしゃぎすぎだろうかと清子は内心ドキドキだった。
「それはいい案ですね。では、カフェでゆっくり食事をして、そのまま水族館へ行きましょう」
正がそう言ってベッドから出た。
♥よかったぁ。…それにしても、正さんとカフェ!カフェで朝食って、何かのドラマかっ!
♠清子さんとカフェで朝食って、ティファニーか?そこはティファニーなのか?
各々、興奮を抑えながら出かける準備をした。
♥正さんとデートだし、伊達メガネは外して行こうかな。
♠清子さんとデートだし、伊達メガネは外して行くか。
準備が終わった2人が玄関で集合する。
♥ネイビーとのボタンダウンシャツに、グレーのスラックス。
誠実な雰囲気が素敵…
♠ふんわりとした白いトップスに、ベージュのスカート。
女神な清子さんらしい優しい雰囲気が素敵だ…
♠♥好き!
「今日は雨が降るかもしれないそうなので、傘も持っていこうと思います」
「それがいいですね」
正と清子は順番に靴を履き、家の外に出た。
あらためてだが、2人は伊達メガネをはずすと、美男美女である。
曇り空ではあったが、2人が並んで歩くと華やかな街並みを思わせる雰囲気があった。
2人のコーディネートはお店の人が選んでくれたもの、おまかせで全身コーディネートしてもらっている。
つまり、2人に超似合っているのである。
「いらっしゃいませ~」
カフェに入ると正と清子に視線が集まった。
そして、ざわつく。
♠やっぱり清子さんは注目されるよな、俺の女神だもんな~。
今日のコーディネートもとても素敵だし。
清子さんを狙うやつが現れたらどうしよう…俺の女神が、どうしよう!!
♥やっぱり正さんは注目されるわ。こんなにかっこいいんだもの。
今日のコーディネートも素敵だし。
正さんを見ないでっ、私の正さんが減るっ!
「お二人とも、素敵ですね」
カウンターで愛想のいいスタッフが2人に話しかけた。
こういうとき、どう答えたらいいのか2人は知らない。
無表情で見つめ返した。
「あ…ご注文は、何になさいますか?」
沈黙に困ったスタッフが注文を尋ねる。
「朝食セットを2つと…」
正はそこまで言って悩んだ。
♠早まった…俺はコーヒーだけど、清子さんは何を飲むんだ?
どうする?清子さんに自然に聞くには…どうしたら?
「俺はコーヒーにしますが、清子さんは飲み物どうしますか?」って言ったら、飲み物を頼むなと言ってるように聞こえないか?
「清子さんもコーヒーでいいですか?」って言ったら、コーヒーでいいよなって押しつけてるみたいだし。
何て言うのが正解?どう言ったらいいのか、わからないぞっ??
「朝食セット2つですね。飲み物はどうされますか?」
愛想のいいスタッフがそう言う。
「じゃあ、私は紅茶を」
「…俺はコーヒーを」
♠スタッフ、ぐっじょぶ!!
スタッフの対応に、正は心の中でガッツポーズした。
「清子さんは紅茶のほうがお好きなんですか?」
「いえ、いつもはコーヒーなんですが。せっかくなので、少し変わったものを飲んでみたくて」
清子は少し戸惑いながらそう言った。
♥やだ、やだっ!はしゃいでるってバレちゃった?
正さんとカフェで朝食食べるの、超うれしいってはしゃいでるのバレてる?
「そうでしたか…そうですね。俺も違うのを注文してみてもよかったですね。次の機会ではそうします」
「次の機会…はい」
♠♥次の機会!?!!
♠しまったぁっ!!勢い余って次の機会とか言ってしまったー!!
次って?また一緒にお出かけしたいよって言ってるようなものじゃないかっ!
清子さんに引かれたらどうするんだ、俺っ!オレっ!オーレッ!
♥次の機会って言った?また、正さんとカフェで朝食?
いや、次にカフェに行ったときという意味かも。
えー、次も私とカフェに行って~!!
「お待たせしました。朝食セット2つと、コーヒーと紅茶ですっ」
愛想のいいスタッフがカウンターに商品を並べた。
正がトレーに商品をのせて席まで運んでくれる。
「ありがとうございます」
「いえいえ、これくらい」
そう言って席の前で2人で頭を下げた。
ひそひそと近くの席から話す声が聞こえる。
「…初デートかな。初々しいね」
「っていうか、超イケメンじゃない?」
清子にその声ははっきり届いている。
♥正さんは私の旦那さまですけどっ!色目使わないでいただけマスカッ!!
清子は耳に髪の毛をかけながら、結婚指輪を強調してみた。




