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真面目ですが何か?  作者: 西園寺百合子


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04 一緒に寝たいですが何か?

第2の難関、新居探し。


ただし清子きよこも、高給ドリではない。

そのため、毎月使える生活費を考えると、家賃に当てられるお金も決まってくる。

予算内で借りられる部屋から、間取りなどを考慮して3つまで候補を絞った。


1つは正の勤め先の近く。

スーパーも近く、小学校も近くにある。

将来、子どもが生まれたときにいい立地だ。


2つ目は、清子の勤め先の近く。

こちらは近くに複合施設があり、病院が近い。

買い物に便利そうだ。


3つ目は、どちらの勤め先も近くはないが、築年数が1番新しい。

セキュリティも万全で安心感がある。

部屋の間取りは似たり寄ったりだ。


正は、清子の勤め先の近くがいいだろうと考えていた。

清子は、正の勤め先近くがいいという意見だった。


「正さんのほうが勤務時間が長いのですから、正さんの勤め先近くのほうがいいと考えます」


❤いつもお仕事頑張ってくれてる正さんに、これ以上無理をさせてはいけないわ。

 私の職場は正さんの職場より始業が30分遅いし、終業は1時間早いんだもの。


「いや。清子さんの勤め先に近い物件のほうが綺麗だし。帰り道のことを考えると、やっぱり清子さんの勤め先に近いところのほうがいいと俺は考えます」


♠清子さんは自転車で通っているから、職場から近いほうがいいに決まっている。

 清子さんになにかあったら大変じゃないか、大変じゃないか!


「ですが…」

清子が反論しようとすると、正がそれを制した。

「たしかに、こっちの物件のほうが俺の職場に近いですが、こちらの物件は俺の実家に近いのです。何かあって、俺が行けないときは清子さんに行ってもらいたいという甘えもあります」


❤甘え~!!正さんの甘え、いただきましたっ。

 そんなこと言われたら、断れない。


♠勢いで甘えとか言っちゃったよ。言っちゃったよ~。

 清子さんに引かれたらどうするんだよ俺。バカ!俺のバカッ!!


「そういうことでしたら、こちらの物件で」

清子が折れる形で、新居が決定した。

清子に引かれていないようだと、ホッとする正だった。


挙式の前に、新居でのルールも決めた。

家事は当番制、嘘はつかない、飲み会があるときは事前に連絡するなど、実に50項目のルールが定められた。

「他に、心配なことはありますか?」

「いえ、問題ありません」

「では、押印を」

「はい」

そう言って、山田と田中の印をそれぞれ押す。


「清子さんは、結婚しても職場で田中の姓を名乗りますか?」

ふと、気になって正が清子に尋ねた。

「姓は…」

清子が印鑑を見つめて考える。


❤山田がいい。山田にしたい。

 夫婦別姓を主張する女性がいるのも知ってるけど、私は正さんと同じ苗字がいい。

 でも、職場で苗字変えるの大変だな。

 名札、名刺、スタンプ、印鑑…でも、山田がいい。

 正さんの奥さんって感じでいい!


「山田に変えます」

清子がそう言って、正を見た。

「そうですか。では、印鑑も山田のものを購入して、押印しなおしましょう」

正は冷静にそう言って、書類を片付けた。


♠ひゃっほーい!清子さん、山田にしてくれるって。

 職場で山田さんって呼ばれるんだ。

 俺の、奥さんだぜーいっ!奥さん、山田さん、奥さん。


「正さん、大変です!」

清子が突然、思い出したように立ち上がった。

「どうしました?」

いつも冷静な清子の慌てように、正は戸惑う。


「家具はお互いのものを持ち寄る、ということですが。その…ベッドはどうしましょうか?」

新居の寝室は6畳で、正も清子もセミダブルのベッドを使っている。

クローゼットは備え付けのものがあるが、ベッドを2つ並べたらそれ以外は置けない。

いや、そもそも…


♠❤ベッド、2つ置くの?同じベッドで寝たい!


「・・・」

「・・・」

2人で見つめ合う。


「でもまあ、置けないこともありませんね」

清子が座りなおした。

「そうですね。まあ、ベッドについては、おいおい考えましょう」

正もそう言って座った。


♠❤一緒のベッドで寝たいって言えない。


2人とも本心が言えないまま、新居へと引っ越すことになった。

結婚式まで1か月のことである。


「本日から、同居させていただきます。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします」

床に正座して、2人で挨拶をした。

「まずは、引っ越し蕎麦ですね」

「そうですね」

そう言って、2人で蕎麦を食べた。


「蕎麦を食べたら、近隣の方に挨拶に伺いましょう」

「はい、正さん。タオルの準備はできています」

そうして、タオルを持ってマンションの住人に挨拶を済ませた。


寝室に入る。

狭い部屋に、ベッドが2つ並んでいた。


♠どうして離して置いていったんだ、引っ越し業者。


❤どうして東側が正さんなの?眩しいじゃない。朝、正さん、眩しいじゃないっ。


「リビングで、テレビでも見ましょうか」

「そうですね。そうしましょう」

寝室にずっといるのも変なので、とりあえずリビングに来てみた。

正がソファに座り、清子がソファに座る。


♠間違えた…どうしてお互い、ソファを持ってきてしまったんだろう。


❤どうしてこっちのソファに座っちゃったのかしら。正さんが座ってるソファに思い切って座ればよかったわ。


ニュースを見ながら、沈黙。


「ソファ、1個にしませんか?狭い、気もするので」

正が思い切って提案してみた。

「賛成です。少し…狭いなと私も感じていました」

嘘をつかないというルールを、さっそく破ってしまった。

狭くない。

ぜんぜん、リビングは狭くない。


でも、ときには嘘も必要なのだと理解した。

おかげで、2人は並んでテレビを観られるのだから。

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