第104話 あのときの失敗は無駄ではなかった
溶岩の中から現れた巨大なラヴァゴーレム。
腕を振り回すと、溶岩の塊が雨のようになって降り注いだ。
ドンドンドンドンドンドンッ!!
「うわあああっ!」
「ライルくんっ、大丈夫ですのっ!?」
「は、はい、何とか……っ!」
〈注意報〉のお陰もあって、どうにか直撃を避けることができた。
他のみんなも無事みたいだ。
だけどラヴァゴーレムは間髪入れず、今度は先ほどとは逆の腕を回して、再び溶岩の豪雨を放とうとしてくる。
「ま、またくるのだっ!?」
「……マジ死ねる……」
「一か八かっ……〈そよ風〉!」
再び降ってくる溶岩の雨と、僕が放った〈そよ風〉が激突する。
さすがに重たい塊を吹き飛ばすまでにはいかなかったけれど、それでも風が障壁となって僕たちのところまでは届かなかった。
「た、助かりましたわ」
「さすが少年なのだ!」
「っ、見て! 腕を溶岩に浸しているわ! 恐らくああやって腕に補充しているのよ!」
「つまり……無限に放てる……それなんてチート?」
「いえ、逆に言えば補充中は放てないということですわ!」
「なるほどなのだ! だったら今のうちに畳みかけるのだ! って、どうやって近づくのだあああああああっ!?」
アルテアさんが絶叫を響かせた通り、ラヴァゴーレムは溶岩の川の中にいるため、遠距離攻撃でなければ届かない。
アルテアさんの大剣はもちろん、ローザさんの鞭でも攻撃は難しいだろう。
「カーミラ、あんたのアンデッドならいけるでしょ?」
「無理……あの溶岩の川に入ったら……溶けてなくなる……」
「また新しいのを作ればいいでしょ? どうせいくらでも作れるんだから」
「それ本気で言ってんのかてめぇええええええええええええええええええええっ!?」
タティさんの言葉に、カーミラさんが激高した。
「てめぇはペットを亡くした飼い主にまた新しいペットを飼えばいいだろって言うタイプかごるああああああああああっ!?」
「か、カーミラさんっ、抑えて抑えて! 今は喧嘩してる場合じゃないですし!」
「うるせええええええっ! 今日という今日こそこのクソアマをぶち殺さねぇと気が済まねえええええええええっ、てめぇをアンデッドにしてやらああああああああっ!」
「〈気分転換〉!」
「はっ!? ……わたし……何を……?」
慌てて〈気分転換〉を使うと、我に返ってくれた。
だけどそんなことをしているうちに、ラヴァゴーレムの両腕が再び溶岩に覆われている。
「……こうなったら逃げるしかありませんわね」
「あっ、今ちょっとあることを思いつきました」
「少年、妙案が浮かんだのだ!?」
「はい。アルテアさんのお陰で」
「吾輩の?」
首を傾げるアルテアさんを余所に、僕はその生活魔法を準備する。
「できるだけ離れて、岩陰に隠れましょう!」
「っ、まさか」
「またアレをやるつもりなのだ!?」
「いきますっ! 〈水生成〉!」
大量の水が発生し、それがラヴァゴーレムのいる溶岩の川へと津波のごとく流れ込む。
次の瞬間、
ドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンッ!!
凄まじい爆発が巻き起こった。
なぜ溶岩と水が接触すると爆発が起こるのか。
あくまで推測だけれど、たぶん超高熱の溶岩に触れることで水が一瞬にして水蒸気と化し、体積が途轍もない速さで膨張するためだろう。
高熱の水蒸気が一帯を覆い尽くし、一瞬にして視界が奪われる。
――〈護身〉を習得しました。
あっ、新しい魔法を覚えたみたいだ。
まだ視界不良で確認できないけど、つまりラヴァゴーレムを倒すことができたということだね。
やがて水蒸気が晴れて辺りを見渡せるようになると、先ほどまでいた場所にラヴァゴーレムの姿はなかった。
代わりにぷかぷかと浮いている大きな岩の塊がいくつかあって、恐らくそれがラヴァゴーレムの残骸なのだろう。
「力技でしたけど、上手くいきましたね」
「吾輩のアイデアのお陰なのだ! あのときの失敗は無駄ではなかったのだ!」
アルテアさんがドヤ顔している。
「そうだ。せっかくですし、このゴーレムの岩を使って橋を作っちゃいましょう。進むルートはちょうどこの溶岩の川の向こう側なので。〈日曜大工〉」
溶岩の中に浮かんでいたゴーレムの残骸が動き出し、橋を形成していく。
気づけばそこに対岸まで続く橋ができあがっていた。
そうして橋を渡ろうとしたときだった。
「お、おい、お前さんたち、大丈夫か!? 今こっちからすごい爆発音が聞こえてきたぞ!?」
「あ、さっきの」
ダンジョン入り口の前で声をかけてきたドワーフが、仲間たちと一緒にやってきたのだ。
「見ての通り大丈夫です」
「そうか。それならよかった。しかしいつの間に儂らよりも先に……?」
僕たちは溶岩を飛び越えながら来たからね。
気が付かない間に抜いていたのだろう。
「何にしてもこの辺りは危険だぞ? ラヴァゴーレムの縄張りだからな。動きこそ鈍重だが、溶岩の雨を降らせてくる凶悪な魔物だ。やつに見つからないよう、できる限り迂回していくのがセオリーだ」
「あ、それなら倒しましたよ」
「は? ら、ラヴァゴーレムを倒しただとっ!?」
「はい。この橋がラヴァゴーレムの身体です」
「って、こんなところに橋ができてるだとおおおおおおおおおおおおおっ!?」
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