エピソード33 特別任務
アレス視点
貧乏揺すりが酷い。
常に笑って誤魔化しているけどイライラをしている様に見える。
レミリアさんとエリオットは上手くいっているのに何でだろう?
もしかして僕が邪魔?
確かにエリオットはレミリア王女と二人で居たほうが機嫌が良いのは最近の行動を見れば分かるけど。
エリオット自身も僕の前でデレデレする訳には行かないしストレスを溜めているかも…
もしかしたらレミリア王女も僕を家族として優しく接してくれているが本当は邪魔だと思っているか?
でも家はここしかないし、僕はどうすれば…
アレスは精神的に大人に近づき、敬語も扱えるぐらい成長した。しかしそれと同時に悩みも抱える様になった。精神の成長は時に不安を与え、悩みを提供する。
「アレス、こっちに来て?」
「どうしました?バーバラさんとの手合せでクタクタなんですけど?」
アレスは訓練でバーバラと手合せする機会が多い。
アレスはスピード面ではバーバラと遜色ないレベルまで成長を遂げたが、まだ体力面と経験値の差で負ける回数が多い。しかし同じリヒト人のバーバラから着実に学び強くなっていた。
「ん〜なんて言えば分かるかな…凄く複雑な話なんだけどね…」
エリオットは言葉を選んでいる様に見えたのでアレスは口を挟む。
「昨日は雄しべと雌しべの話をしましたよ、てか僕も大体の知識はあるので無理して話さなくて下さい、こっちも恥ずかしいです」
エリオットは父の代わりとしてアレスに性教育を行っていた。
教科書などはないが、基本的な知識をアレスに授ける。
難点としてエリオットは普段は堂々としているが、性の話題になると恥ずかしそうに話すのでアレスにとってはその時間が気まずく苦痛だった。最近だと勉強より苦手な時間である。
「あ、いやそれとは別の話で…続きは明日教えるから問題ないよ」
「問題大アリです、しないで下さい」
「駄目だね、明日は絶対に避妊方法について解説するよ!これは今のアレスにとって一番大事な勉強だからね」
(聞きたくないなぁ)
父同然、兄同然の様なエリオットから聞く性教育は、アレスからしたら地獄だった。
「それで複雑な話は何ですか?」
「アレスにはこれからクライフ学校に行ってもらうよ」
「クライフ学校?僕って学校行くんですか?二番隊は?」
アレスはひたむきに訓練を重ねており、12歳の時から二番隊の戦力になっていた。
先週はライブプレスト王国の南西にタイガーボルトという魔物討伐任務に出ている。
「もちろん、学校に行くのは二番隊の任務でね、特別任務だよ」
「学校に行くのが特別任務?」
「そう、ズバリ、レイナ・ライブ王女の護衛任務さ!」
エリオットが勢い良く言うが
「わ、分かり…ん?」
アレスは微妙な反応をして、イマイチ理解出来ていない。
「簡単に言えばクライフ学校に通うレイナ王女を護衛したり、従者としてサポートしてするのが仕事かな」
本来であれば名誉でやり甲斐のある任務だがアレスは渋い反応をする。
数年前まで奴隷だった子供が今では隊の中で欠かせない存在になった。その事実にアレスは嬉しく感じ誇りを持ちはじめている、それが故に…
(なんか行きたくないかも、しかもクライフ学校って全寮制だったよな?二番隊から離れるのか?)
「うーん、それって僕じゃなきゃ駄目ですか?」
「駄目だね、昨日学校に手続きしたし、アレスにとってもいい経験になると思うよ、後の詳しい話は明日レイナ王女に会ってからだね」
(いつもだけど今日はやたら強引に話を進めるな、僕じゃなきゃ駄目な理由があるのか?)
「分かりましたよ、もう夜も遅いので先に寝ますね」
「そうだね、明日は早いし、おやすみ〜」
アレスは目を擦りながら部屋に戻り明日に備える。
第一印象は衝撃的で鮮烈だった。
「なんでこの私が奴隷と一緒に学校に行かないといけないの!?」
「レイナ、この子は奴隷ではなく奴隷上がりなだけだよ、余りワガママを言わず我慢しなさい」
(王子もナチュラルに酷いな)
レイナ王女は、太陽にチカチカ照らされると光るぐらいの金髪で整った顔している。将来は美人に育つだろうが性格は最悪だった。
文句が絶えないレイナ王女をレオタード王子が宥めようとしているが上手くいっている様に見えない。一方的に嫌われている状況を打破しようとアレスは勇気を振り絞る。
「こんにちは、僕はアレス、これからよろしくね」
「ふん、奴隷が気安く話し掛けないで」
アレスは初めて同年代に話しかけたが撃沈した。
やっぱり面と向かって言われると想像以上に傷つく。アレスの目に涙が溜まり、奴隷だった時の記憶がフラッシュバックして記憶が途切れた。
その日の夜…
「もう、もう僕には無理ですよ!!レイナ王女の護衛なんかやりたくありません!」
「まだ会ったばかりなんだからこれから、これから」
「レイナ王女と話そうとしても奴隷、奴隷ってそれしか言わないですもん」
「それは事実だし、何も間違っていないよ」
巣立ちの時だと思いエリオットは敢えて厳しく接する。
本当だったらまだ家にいて欲しいが、それを要求すると首が飛びそうである、勿論物理的な意味で。
「僕は奴隷じゃない、王国軍二番隊です」
「違うね、世間の評価は、奴隷、良くても奴隷上がりの兵士としか見られていない」
「でも…」
アレスは、自分が奴隷だった過去をコンプレックスにしていた。二番隊はアレスの実力を知っているので普通に接するが、城の外は違う。
現在奴隷又は過去に一度でも奴隷だった者は世間から差別される。
奴隷になった時点で人ではなく、道具と認識され、社会の風当たりが冷たくなる。
普通なら詰みである、逆転の一発は存在しない。しかしアレスは普通ではない才能を持っている。
「前にも言ったが、私もアレスと同じ奴隷だった、ある人に助けられイチから成り上がって今がある」
「成り上がるってどうすれば?」
「結果だ!世間は結果しか見ていない、過程を評価してくれない!今目の前にあるのは大チャンスだ。仮にレイナ王女を無事に卒業させた場合アレスは大きく名を上げることになる、そしたら誰も奴隷上がりとバカにはしなくなるさ、現に私は奴隷上がりと言われず王国軍二番隊隊長という名誉ある名前で呼ばれているのはアレスも知っている筈だよね」
「それでもあんな態度取るレイナ王女を護れる自信がありません」
エリオットなりに励ましたがアレスは納得いかない顔つきである。
エリオットはここまで弱気なアレスを初めてみた。しかしエリオットが言える言葉はもうない。
「とにかくレイナ王女の信頼を掴むしかないね、ハハハハハ」
エリオットは、アレスの不安を余所に笑い飛ばした。後は時の流れに全てを任せる。
次の話はラインハルト目線から進めます。評価、ブックマークしてもらえると嬉しいです!!




