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VRMMORPGプレイヤーがダンジョンマスターになった  作者: minaira


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ダンジョンの構想

 湖の上に沈まずに立っている青髪の少女――メリルは水を変幻自在に操っていた。

 湖から巨大な水球が空中に現れ、破裂し、広範囲にわたって水が飛び散る。

 そして、生まれた膨大な数の水飛沫は加速しながら湖へと突き刺さり、轟音を断続的に響かせる。

 その音は、水飛沫によって引き起こされたとは思えないほどの威力を物語る。

 メリルは空高くまで水の柱を一つ発生させると、次に上部の水柱から雲へと変化させていく。1階層の大森林全体に薄く雲を広げると、その雲から雨を降らせる。

 1階層の大森林には太陽のような光源があるが、あまり雨が降らないため、メリルが鍛錬のついでに雨を作り出している。大森林の水やりみたいなものだろうか。

 ダンジョンを作った日から一月経ったが、ミストはスライムを一匹《創造》してから、何もダンジョンに変更を加えていなかった。

 しかし、最初は一匹しかいなかったスライムが大繁殖して、1階層の大森林はスライムだらけになっていた。

 どこに居ても見渡せば、スライムが数百匹はいるような状態だ。

 ダンジョンという特殊な空間は、全ての生物の成長が速くなる。

 植物の成長も速いため、消化の遅いスライムが大繁殖してもまだ大森林に影響はない。

 この一ヶ月で、ダンジョンの成長促進効果もあり、ミストとメリルの最大魔力量が70sまで増えた。

 ダンジョンコアには、1758sの魔力が蓄えられている。






 鍛錬と大森林の水やりを終えたメリルは、ミストが鍛錬場として使っている《コアルーム》の一つ前の小部屋を訪れる。

 そして、素振りをしているミストに声をかけた。 

「今日の水やりは終わりました。まだ素振りを続けていますか?」

「……もう終わりだ。この後、1階層に手を加える。ついてくるか?」

「はい」

 ミストは鉄製の剣を鞘に収めて、メリルと共に《コアルーム》に向かった。


 《コアルーム》に着くと、ミストは椅子の上に置いていたタブレットを手に取る。

 そして、1階層に小魚や小動物などに相当する魔物を250種、雌雄の組み合わせで放った。

 全て繁殖しやすい小型の魔物だ。

 一匹当たりの魔力消費が少ない魔物を選んだため、多くの魔物を《創造》することができた。

 しかし、それ相応の魔物である。

 子供ならともかく、戦いを生業としていない一般人にも負けるような魔物だ。

 ミストとメリルが一ヶ月かけてダンジョンコアに貯めた魔力は消費され、残り258sとなった。

「……まだ戦力になるような強い魔物は《創造》できないな」

「そうですね。弱い魔物は1階層の草木やスライムが餌になるので十分養えますが、肉食の強い魔物には餌となる物がありません」

「魔物の餌には他のダンジョンマスターも困っているようだ。竜が一匹いただけで、ダンジョンの魔物を根こそぎ喰われた所もある。《創造》で賄うとしても膨大な魔力を消費してしまうから、魔物をダンジョン外に放出して好き勝手に食べさせるらしい。問題なのは、ダンジョン周囲の環境を荒らしてしまうことで近辺の生物に恨みを持たれ、魔物の移動でダンジョンの位置が特定されることだ」

 ミストは《交流》で調べたことをメリルに話した。

「ダンジョンの戦力なので、口減らしで魔物を殺すのは最低限にしているダンジョンマスターが多いようですね」

「ダンジョンの魔物を殺しても、殺した生物が微妙に強くなるだけで、ダンジョンコアに魔力は貯まらないからな。侵入者を片付けるついでに不要な魔物を処分するくらいはやっているだろう」

 日々消費される魔物の餌を《創造》しても終わりがない。

 とはいえ、外に魔物を放出すればダンジョンの位置を人間族などに把握される。

 だから、ミストはダンジョン内で完結する魔物の生態系を構築することにした。

 これには、餌の確保とダンジョン位置の隠蔽以外にも魔物が成長するというメリットがあった。

 本来、《創造》された魔物は、ダンジョンの戦力低下に繋がる争いを起こさずに侵入者だけと戦うので、戦闘などで身体的な成長をすることはあっても、ダンジョンの魔物を殺して魂が成長し、種の限界を超えて強くなることはない。

 だが、ダンジョンマスターの命令で魔物が争うようにすれば、自然に生存競争が起き、魔物は弱肉強食の世界で生きることになる。

 それによって、魔物は成長が速くなるダンジョンという環境に加え、他の魔物を殺すことでも強くなっていく。

 さらに食物連鎖の上位層は、強化された下位層を喰うことでより強くなる。

 ダンジョンの階層ごとに、そんな生態系の異なる魔境を完成させるのがミストの目標だ。

 今は魔力が足りないため、下位層の魔物を250種類《創造》しただけである。

 ミストのダンジョンは、侵入者を殺して魔力を集めていないため、他のダンジョンと比べて魔力の集まりが遅い。

 先日、ミストが《交流》で確認した《ダンジョンの魔力量ランキング》では、9943位中9921位だった。

 ダンジョンの魔力量とは、ダンジョンの階層や魔物など全てを魔力に換算した場合の魔力量である。

 ダンジョンの数が10000でないのは、侵入者にダンジョンコアを破壊、または奪われ、ダンジョンが減った数の方が、管理者が補充している数よりも多いからだ。

 ミストのダンジョンが最下位でないのは、その現れたばかりの新しいダンジョンのおかげだ。

「また魔力が貯まるまで時間があるし、メリルも剣を使ってみるか?」 

「はい。使ってみたいです」

 水の精霊であるメリルは、付近に水があれば魔力を消費せずに自由に水を操ることができるが、なければ魔力を消費して水を生み出さなければならない。

 しかし、《EWO》で上げた能力をリセットされたことで、メリルも最大魔力量が少なくなっており、水を生み出すとすぐに魔力が尽きてしまう状態だ。

 水場と魔力がないと何もできなくなるため、メリルは剣を習うことを決めた。

「まずは、上から下に振り下ろす素振りをする際の剣の握り方だ」

 ミストは木を材料に設定し、1sの魔力を消費してメリルの木剣を《創造》する。

 その木剣を使って、ミストはメリルの手を取りながら、《EWO》で培ったミスト流の剣の握り方を教えていった。

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