異世界の管理者
「やあ! 気がついたかい? 君は交通事故に巻き込まれて死んだんだよ」
見知らぬ少年がミストに語りかける。
「……確かに事故で死んだ記憶があるな」
ミストは先ほどまでの記憶を確認して口に出す。
「僕のことはね……君がいた世界とは異なる世界を管理している者って言えば一番わかりやすいかな?」
「それで、異世界の管理者が何の用だ?」
「君のような条件が一致した死者を探して、僕の世界の困り事に対処してもらう代わりに、新たな命を授けているんだ」
「協力しなかったらどうなるんだ?」
「理に従って、記憶を失い、新たな命として誕生するだけだね」
「それなら考えるまでもない。協力する」
ミストは悩む様子を一切見せずに即決する。
「困り事の詳細を聞かずに決めてもいいのかい?」
「ああ。記憶がなければ、俺という存在ではないからな」
「じゃあ、詳細を説明するね」
――管理者の世界では、魔力というものが不足し、生物の生死や天変地異などに影響が出ているらしい。
その問題を解決するために、管理者は多くの生物を産み出すダンジョンという施設を作って生存競争を激化させ、魔力を持つ生物の成長を促している。
しかし、最初は効果があったけれど、最近は人間族などが対策を取り、ダンジョンの心臓に相当するダンジョンコアを奪われ、ダンジョンを消滅させられることが相次いでいる。
そこで、管理者はダンジョンマスターという不老で食事と睡眠の必要がない存在にダンジョンの管理を任せ、特徴の違うダンジョンを増やすことで対応した。
そして、そのダンジョンマスターに適した知識――ゲームなど――を多く身につけているミストのいた世界に目を付け、声をかけている。
「……なるほど。面白そうだ。今、何人のダンジョンマスターがいるんだ?」
ミストが管理者に尋ねる。
「だいたい1万人くらいかな。ダンジョンマスターはダンジョンコアを奪われると、ダンジョンを操作できなくなるから気をつけて。ダンジョンコアさえあれば、ダンジョンマスターは殺されても魔力を消費して復活できるよ。あとはサポーターに聞いてね」
「サポーターの指定はできるのか?」
「できるけど、生者はダメだし、故人は無理だよ」
「VRMMORPG《EWO》のメリルを指定したい」
管理者はメリルを探して、ミストに答える。
「…………いいよ。ただ、ゲーム内で使えた力は初期の状態になる」
「構わない」
管理者はダンジョンコアをミストに渡す。
「それじゃあ、君とメリルを僕の世界に送るよ。頑張ってね!」
管理者は微笑みながら、ミストたちを管理者の世界へと送った。




