7.地下シェルター
長く、入り組んだ地下道だった。
地図を見ていなければ、間違いなく迷っただろう。
15kmほど歩き、ようやく目的の場所へ辿り着いた私は、携帯端末を取りだした。
「こちら紅咲、"扉"に到着した」
地上からおよそ200m下、特殊合金製の巨大な扉が、目の前にある。
『了解。ここから先は通信が出来ない。何かあった場合は自己判断で頼む……よし、右側にある読み取り機にその端末を翳してくれ。幸運を』
言われたとおりに端末を翳すと、数秒ほどで扉が重い音を立てて開き始めた。
ここは、第六防衛都市地下シェルターの第二階層へ通ずる連絡通路だ。
◇◆◇◆◇
どの防衛都市にも、地下シェルターは備わっている。形などに違いはあれど、基本的な構造は変わらない。
第一階層は第一軍事区。軍施設と隣接していることもあるが、シェルターへ入るためのゲートを防衛する目的もある。
第二階層は居住区。最も広く、防衛都市内の住人全員を収容できるように設計されている。また、備蓄用の区画や商業区もここに入っており、一般人はこの第二階層で暮らすこととなる。
第三階層は開発区。通称"畑"と呼ばれており、この区画の半分以上は遺伝子を組み替えた食用植物の栽培施設となっている。
そして、第四区画は第二軍事区と呼ばれている。が、そもそも存在を知っている者がほとんど居らず、軍内部でも実態を把握しているのはごく僅かに限られる。
第二階層にある連絡通路は、第一階層にある"正規の入り口"が使用不可能になった場合に、外部からの物資輸送や要人護送等で利用される。本来であれば常時見張りの兵士が立っており、非常時以外は近づいただけでも射殺されかねない場所であったが、今では人の気配すら無く、妙な静寂が周囲一帯を支配していた。
第三階層に入るためのゲートはここから4kmほど先にある。第二階層を分断するように走っている大通りを進んでいけば辿り着くので、迷うことはまず無い。
だが、私は既に気付いている。
すぐ傍に、敵がいるということを。
右に跳躍。直後に銃声が轟き、元いた場所に数発のライフル弾が撃ち込まれる。
着地するまでに状況を把握する。敵の数は3人、全員アサルトライフルで武装しており、顔をバラクラバで覆っている。腰にはハンドガンとグレネード。更にはナイフまで持っている。だが、全て大陸連合国軍のものだ。
一方で、私は必要最低限の武装しかしていない。近接戦闘用にカスタムをしたハンドガンに、普段から愛用しているカスタムメイドのコンバットナイフ。だが、この程度であれば切り抜ける自信があった。
機械化しているのは腕のみだが、私はとある事情で、身体能力が常人の数倍以上に引き上げられている。
故に、着地と同時に勢いよく踏み込み、固まっている3人の首筋を掻き切ることなどは容易だった。
◇◆◇◆◇
「……"身体強化兵"、噂には聞いていましたが、やはり強いですね」
モニターで紅咲の様子を観ていた壬生は、驚きの声を上げた。
「助けないんですか?」
「本当はそうしてやりたいが、逆に言えばこのくらいは上手く切り抜けてもらわなければ困る。それに、我々にもやらなければならないことがある」
赤城は顔を顰めたが、渋々それを認める。
「目標地点まであと1分です。降下準備を」
壬生がそういうと、機内にいた全員が立ち上がった。
蒼鷺も含め、全員が重武装をしていた。
「作戦目標は"奴ら"の前線基地の破壊、及び戦闘員の撃滅だ。一人も生かすなよ」
闇夜を切り裂く一機の支援機は、一種の殺気に包まれていた。




