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8.進んだ先に待ち構えていたもの

 断続的に銃声が轟く。どうやら第二階層には一個中隊が警備に当たっていたようだ。

 今は何とか身を隠し、敵が警戒態勢に入ったところだが、油断は出来ない。居場所が出来るだけ割れないよう、ハンドガンは使っていない。ナイフだけで、既に10人以上は殺している。

 このまま隠れていても埒が明かないだろう。いずれ見つかるというのもあるが、この敵が狙っている物は、私たちと同じデータファイルだということを確信した。

 ならば、既に敵は最深部に到達しており、データファイルを探している所なのではないか。

 そう思うと、一気に飛び出したい衝動に駆られる。

 しかし、身体強化されているとはいえ、四方八方から無数に迫りくるライフル弾を捌ききることは不可能だ。

 ではどうするか。

 数秒ほど思考した末、私はあることを思い出す。

 人間が暮らすうえで、下水処理施設は無くてはならないものだ。処理施設は第三階層にあり、第四階層へ繋がるエレベーターがある建物のすぐ傍にある。

 下水道管だ、と思った時には既に動いていた。

 運がいいことに、10mほど離れた場所に下水道の整備を行うためのマンホールがあり、それを迷わず開けて中に入る。

 錆ついた梯子を使って下り、下水道へ到達する。長年使われていない為、臭いなどはさほど気にならない。非常用の照明が点いており、薄暗いが視界は確保されていた。

 ここからは向きだけを頼りに進んでいく。下水処理施設にも通気口があるため、そこから脱出すれば第四階層まではすぐだ。

 暫く真っ直ぐ進んでいくと、やがて太い下水道に出た。直径は7mほどか。音が良く響き、通路の下にある溝には汚水が流れている。

 この臭いが無ければ、とても雰囲気のいい場所だったろうに。と、考えていたが、直後に聞こえた複数の足音と怒号で、瞬時に身を屈めた。

 ライトを照らしながら捜索している男たちが5人。うち2人はサプレッサーを装着したアサルトライフル、残りの3人は独特の形状をしたサブマシンガンを携行していた。

 距離は50mほどか、やり過ごすことも一瞬考えたが、残念ながら進行方向だ。

 幸運なのは、敵がこちらへ向かって進んでいることだった。

 暫く待っていると、私の真下に敵が来た。

 先ず、飛び降りると同時にナイフを抜く。鋭い切先は着地寸前で、後方を警戒していたアサルトライフルを持つ兵士の首筋を勢いよく掻き切った。

 そして着地。ナイフを持っていない左手でアサルトライフルを奪い取ると、ナイフを薬指と小指で押さえながらグリップを握る。

 着地音に気が付いた4人が振り返るまでに、アルミ缶を潰すような、減音された銃声が連続で響き渡る。 射出された5発のライフル弾のうち2発は腕と肩に着弾したが、残りの3発はサブマシンガンを携行している男3人の頭部に1発ずつ着弾していた。

 残る1人は咄嗟にナイフを抜き、突き刺してくる。その動きは洗練されており、切先が恐ろしい速度で迫ってくる。

 だが、所詮は人間が繰り出す一突きだ。

 私はグリップから手を放すと、押さえていたナイフを握りなおして、突き出されたナイフを横から思い切り殴りつける。

 金属と金属がぶつかる音と同時に、相手の持っていたナイフが弾き飛ばされる。その隙を見逃すことは無い。

 常人では到達することすら出来ない、凄まじい速度で降り出された斬撃が、最後の1人の首筋を切り裂いた。


◇◆◇◆◇


 それから数分と経たずに、下水処理施設を抜けることに成功した。

 薄暗い通路の先には、固く閉ざされた鉄扉が見える。

 あそこが第四階層へ続くエレベーターへの入り口であり、恐らく敵の部隊も集結しているであろう。

 だが、ここでトラブルが発生した。

 薄高く積まれている木箱に隠れる。エレベーターから上がってきた敵が、わらわらと出てきたのだ。

 その数はざっと50以上、現状では見つかればまず勝ち目はない。

 アサルトライフル、サブマシンガン、ショットガンなどで武装した敵は、我先にと通路を走っていく。恐らくだが、第二階層へ向けての増援だろう。下水道内での戦闘に関しては、最後の1人を殺した後に全ての死体を下水が流れている場所に沈めて隠しておいたので、無線機などで頻繁に連絡を取り合っていなければ、暫くはばれることは無いだろう。

 5分と掛からずに辺りの敵が消える。思わず溜息が出たが、時間を無駄にするほどの余裕は一切無い。

 開きっ放しの鉄扉へ走り込み、何とかエレベーターへ乗り込んだ私は、エレベーターの出入り口付近の壁に寄り掛かったまま、敵から奪っていたアサルトライフルの残弾数を確認した。

 やがて、エレベーターが減速、停止する。

 重々しい音を立てて開いたエレベーターの扉の外には、やはりというか、まだ敵が残っていた。

 私は覚悟を決めると、エレベーターの作動音で気が付いた敵たちの懐に向けて踏み込んだ。

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