2話 お姉さんを訪ねて
舞踏会で憧れのお姉さん、クラリス・ベルモントさんと再会した僕の行動は早かった。
あの場ではゆっくり話すこともできず、ダンスが終わったらそのまま別れてしまった。
王都にあるアルヴェイン侯爵邸へと戻るや否や書斎にある地図を開きベルモント領を探す。聞き馴染みのない家名ではあったが、王家主催の舞踏会にいたということはこの国の貴族のはずだ。それと同時に貴族録も開きベルモント家を調べる。
「あった」
地図上のベルモント領を発見し自然と笑みが深まる。アルヴェイン領とそんなに離れていない。
貴族録のページもどんどん捲っていく。
「ベルモント男爵……。ベルモント領か」
王都であまり聞かないということは、普段から領地に住んでいるということだろう。アルヴェイン領からそう離れていないから、王都から馬車で半日もかからない距離。
「すぐにでも会いに行けるんだ!」
はやる気持ちを抑えきれず、書斎から自室までステップを踏みながら戻る僕をすれ違うメイドは不思議そうに見ていたが、ちっとも気にならなかった。
「さて、ここがベルモント家の屋敷がある町か」
馬車に揺られること半日足らず。賑わった街から離れ自然豊かな道へ。森の小道を抜け、川を渡り、見事なチューリップの丘を眺めながらやってきた。
領民たちは畑を耕し草木の世話をしている。奥にはマーケットも見えている。小さいがのどかないい町だ。
のんびりと町の中を見てまわっていると何やらざわざわと騒がしくなる。
「あの馬車、どこのお貴族様だ?」
「こんな町にどうして?」
「なにかベルモント様にあったのでは!?」
どうやらここに侯爵家の家紋のついた馬車で来たことで驚かせてしまっているらしい。そういえば初めからこちらを警戒している様子もあったような気もする。
「驚かせてすみません。僕は何か悪事を働きに来たわけではなくてですね……」
領民である彼らへの説明に戸惑っていると、人垣の間をかき分けるように一人の女性がこちらへ駆け寄ってくる。
まさか、と思った時には凛とした声が響いていた。
「ノエル様!このような場所までおいでになって、どうしたんですか?」
「クラリスさんに会いに来ました!」
予想外に早く会えたことで自分でも驚くほど声が大きくなってしまった。
クラリスさんは昨日のドレス姿と違ってシンプルな紺色のワンピースを着ている。そんな飾らない姿もとてもよく似合っていた。
「わ、私にですか?えっと、なぜです?」
昨日からクラリスさんを困らせてばかりだ。
でも、ずっと会いたかったのも、今日会いに来たかったのも僕の本当の気持ちだから。
「六年前のお礼をしにきました」




