第4話 スパイラル・ゲーム
________ドクドクドク________
...なんだろう。
水の中にいるような...ボコボコした音が聞こえる。
目の前は見えなくて、私は先行き不透明な暗黒をただ彷徨っている。
光のない世界で私は思い出した。
_______数時間前、私は殺されたと。
事実、桃花ちゃんに首を刺されて、出血多量で死んだのだ。
一般的な16歳の女子高生は、森の中で同級生にナイフで殺され...発狂して、死んだ。
でもなんで私は発狂したのだろうか。
まるで気でも狂わされたかのような。
...考えても理由はわからない。
考えれば考えるほど頭が混乱していく。
でももういいじゃないか。
_______だって私、もう死んじゃったんだし。
「________るき______ちゃん」
...光が見える。
それと私の名を呼ぶ声。
これは私を天国へと導く主の声なのだろうか。
「鶴木ちゃん______鶴木ちゃん______」
否、それは聞いたことのある若い女の子の声である。
「坂木さん....?」
姿は見えない。しかし彼女の存在を感じる。
目の前の暗闇から人型の光が突如現れたから。
「迷える鶴木ちゃんにひとつアドバイス」
「これってぇ..."スパイラル・ゲーム"だよ?」
「スパイラル...ゲーム...」
「わからない...よ...私は死んじゃったし...もう終わったことだよ...」
「終わったこと...?ぜんっぜん終わってないよ?」
「...え...?」
「あの桜木桃花って女...私の可愛い後輩達を全員ぶち殺しておいて許せるはずもないもの。しかも畜生以下の派手な殺害方法で」
「彼女だけじゃない。そのバックで金儲けをしている連中も同様許せない。そしてあなたは私の後輩達を守らなければいけない」
「それがあなたに課された使命。私からあなたに贈るスパイラル・ゲーム」
「▅▅▅▅クリアするまで、終わらせない▅▅▅▅」
「...」
「さぁ行って。私の可愛い鶴木ちゃん」
「都伝部の全員を助けて、カス共を抹殺するルートを探し出してね」
「▅▅▅▅それまで、帰って来ないで▅▅▅▅▅」
「___________」
あぁ...彼女は
とてつもなく怒っている。
_______________________
「___________ッッ」
「はぁ...はぁ...はぁ...ッ」
時刻は8時30分。引越しした時から持ってきたデジタル式の目覚まし時計がそう告げている。
カレンダーには...7月4日土曜日。
この光景は見たことがある。
無論土曜日には学校はない。
であるとすれば、間もなく華奈ちゃんが私の家に来る。
「お"、お""ぇぇぁあああ"ああ"ッッ!!」
吐いた。
腹を何回も刺され、泡を吹いて倒れた華奈ちゃんのあの表情を思い出して。
「(なん...で...あれって夢なんじゃ...)」
「__________鶴木ちゃーん!!」
「....ッッ!!」
私は血の気が引いた。
▅▅あの▅日が▅▅▅繰り返さ▅れる▅▅▅
「あれ、鶴木ぢゃん、づるきちゃーーーん!!!」
華奈は2階の窓に張り付いて私を探している。
昨日と一緒だ。
怖くて私は思わず部屋の隅に逃げた。
息を殺して、華奈ちゃんに見つからないために。
見つかったらその時______私は殺される。
「あれ...いないや....仕方ないかあ...」
「.....っ」
私はその後も隠れ続けた。
母さんが朝食に呼んでも、昼食も摂らず、夕食も摂らず風呂にも入らなかった。
ずっと布団にくるまって、汗ばんでも震えてくるまってた。
...しかし__________
好奇心というのは妙なもので
午後11時25分を回った時に、私はふと禁忌を犯してしまった。
全員が寝静まった深夜に、リビングにてテレビをつけてしまったのだ。
地上波の最後のニュースを、気になってしまった。
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今日午後16時に、白須賀高校付近の首塚にて女子高生4人が殺害された事件について、殺害された時間は12時頃であったことが判明しました。
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「あ...」
やってる。ニュースで。
ビデオカメラでは現場の様子が鮮明に映されている。
ほとんどブルーシートで覆われているが、あの首塚で間違いがない。
「死因について、司法解剖によりますと体内から微量の濃縮された合成麻薬が発見されたことから集団服薬自殺の疑いが持たれています」
「微量の...合成麻薬...ッ?」
「しかし刃物による刺し傷により他殺の疑いも浮上しているようです」
「ははっ_____はっ______嘘だ____」
「そんなもの、いつ________」
額から無数の汗が流れ落ちてくる。
だってそんなもの、私はいつ___________
「...」
「...チョコ...?」
「(あのチョコだ.....ッッ!!!)」
事実、泡を吹いて倒れたのは私と颯ちゃん、そして華奈ちゃんの3人。
部長はチョコを貰っていないから、野呂さんは刺殺されたんだ。
「(や...やばい)」
「(ここから...桜木桃花から逃げなくちゃ...ッ)」
ジジ_______ジ______ザザザザ____
突如、画面が砂嵐に切り替わる。
その後、画面はとある少女の姿を鮮明に映し出した。
「ご明察。よくわかったね、鶴木ちゃん」
「____________」
坂木ゆり。
そいつが画面から私に向かって語りかけた瞬間、私は死という概念を感知した。
「うん。とりあえず自分の死亡理由がわかってよかったね。これで様々な分岐点を辿ることが出来るってわけ」
「ただまぁ、あなた今日ずっと部屋に引きこもってたよね?」
「_______都伝部のみんなを見殺しにして」
「い、いや...違う...ッ!!」
「私は、私は...ッッ!!!!」
座っていたはずのソファーから転げ落ち、テレビから逃げようとしたが、あまりの恐怖で腰が抜けて動けなかった。
「私ってね?言い訳とか、結果を出してない人間が言っても無意味だと思ってるの。この意味、わかるよね」
坂木は私に向けて人差し指を突き出す。
「今回は頑張ったで賞をあげるから、次はしくじらないでね?」
バシュッ
「ごげゃ...ッッ!!!」
喉を...貫かれた。
私が視界を落とす前に見たもの、それは坂木ゆりの人差し指から禍々しい職種のような槍が出てきて、それを現実世界の私の喉を貫通する様子。
体が痙攣するほどの激痛は一瞬で消え失せ、私は涙を流しながらきっと絶命した。
その先は再び、暗い水の中へと潜っていってしまったのだから。




