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第2話 首塚らしきもの





「鶴木ちゃーん、起きてー」





母の声で私は混濁した意識の中目を覚ました。


真っ白な天井...あぁ、もうここは福岡じゃないんだ。


私の新しい家の天井だ。





ガバッ...





「...起きよ...」




私はベッドから降り立ち上がった。





「ぶづぁっ...!!づるぎぢゃんッ...!!」




ギリギリ...





「......」





窓に...窓に華奈ちゃんが顔をはっつけてる。


いや......ここ2階だけど。それどうやってやってるの?





「..ふ...ふぬ"....ふご...ぐぉづるぎぢゃんッッ!!」


「学校いごッッ!!」





「....お、おぁ...すごか気迫ばい...!」


「ちょっど待ってて...!今用意するから!」




_______________________





ダダダダダダ______________ッ





「うにゃぁぁあああ今の私はキリアン・エンバペじゃぁあいッ!!」


「うぉおおおごりゃぁあああああッッ!!!」





「は、は...はぁ...ちょっと...かな...ちゃん...速すぎ...」





晴天の中、土埃を散らしながら全力で道路を駆け抜ける華奈ちゃんの背中を必死に追いかける。


もう歩いて15分と言うだけの距離なのに、全身滝のような汗をかいている。




「鶴ちゃん頑張ってッ!もうすぐ校門だからッ!」





「も、もう無理ばいぃ...」





白須賀高校の...建物が見えてくる。


コンクリートの白塗りの校舎に、息を切らしながら走る私を後ろから後押しする涼しく心地よい風。


スダジイの青い匂いが疲れを吹き飛ばす。





「はぁ...はぁ...はぁ...」


「あれ...?ふっ...でも誰もおらん...」





「そうだよ?今日土曜日だから」





「...え!!??」





「部活、やるんでしょ?」


「ならもうこの生活にも慣れないとね!」




彼女の透明な汗が伝う笑顔を見て、すっかりため息をついてしまった。




_______________________





ドガッ!




「ノロ〜、鶴木ちゃん連れてきたよ〜!!」





「扉は丁寧に開けろやぁああああッッ!!」





「グブェッ!!」





引き戸を勢いよく開けた華奈に部長の全体重のかかったドロップキックが突き刺さる。


葦野さん文学少女のような見た目で華奈ちゃんには凄いことするなぁ。





「ぐ...づぇ...」


「肺が...」




クワッ




「肺が潰れたらどうするッッ!!」





「うっさい!華奈、あんた丁寧に迎えに行けって言ったのに鶴木ちゃん走らせてきたんでしょ!」


「ほんとごめんね?絶対無理やりだったよね?」





「いえ、大丈夫です。ただちょっと疲れただけで...」





「ほんとごめんねぇ。これ汗ふきシート。華奈がいつも汗まみれになってるから常備してるの」


「はい、ちょっと動かないで」




野呂さんが小さな手で私の顔を拭いていく。





「(葦野さん...前から思ってたけどちっちゃくていい匂いだしかわいいぃ...こ、これは女の子同士でもドキドキする...っ)」




ぎゅっ





「えぇ...っ!ちょっと鶴木ちゃん?どうしたの...?」





「部長...わたし、わだし...!」


「あなたが好きですッッ!!」





「鶴木ちゃんッ!?」





コツンッ




「こら、新入部員。入ってそうそううちの部長に告白とは生意気だぞ」





「あだっ」


「あれ...あなたは確か...」





「同じクラスの颯だ。煮干しつけ麺の博多ちゃん」





タレ目のもったりとした喋り方。


それでいて声が高くて、また小柄な女子である。


私は164だけど、頭半分ほど小さい。


彼女は青と緑のメッシュの髪色でジャージを着用している。





「あ、その節はどうも」





「ふん。ぎゅーなんて私がいくらでもしてやる」


「それが、授業中だろうとねっ」





「なんで誇らしげ...あ、あと、そこに座ってるのが1年生の桃花(ももか)ちゃん。優しくしてあげてね」





整然と佇む黒髪の少女。


その一つ一つの長い艶(つや)が、開かれた窓から流れた風に靡(なび)いて解(ほど)けた。


その上スタイルが良くて、私より年下なのに端正な顔立ちに私は少し惚(ほう)けた。





「き...綺麗ばい...」





「私は桜木桃花。どうぞ、よろしくお願いします」


「それより部長。そろそろ活動を」





「そうだね。じゃあお茶でも飲みながら話そっか」




私は席に座り、もう既に用意されていた都伝部のお茶を片手に部長の方を向く。


彼女はホワイトボードの前に立った。





「さて、今日も都市伝説研究部をやっていきます。今回から鶴木ちゃんも参加することになるけど、最初は見てた方がいいね」


「まずは今日研究、調査する主題(テーマ)を考えるの。それぞれみんなで出し合って、全会一致すればその主題(テーマ)に決定」


「ま、緩い部活だから、絶対にこのテーマは譲れないって喧嘩になったりすることもないし、気楽に見ててよ」




桜木桃花がその細い手を挙げる。




「はい、私は"やまがみ"を希望します。ここの裏山の夜中、誰もいないはずなのに気配がして、何やら不審な鳴き声も聞こえるらしいのです」


「今日の夜調査を希望します」





「私は特になし。みんなに合わせよう」





「じゃあ颯ちゃんは意見出てから選ぶってことで...華奈は何かある?」





「私はね..."楠町(くすのきちょう)のシロワニ"。隣町のとある下水道に大きな白いワニが生息してるんだって。だから今日そこのマンホールこじ開けて...」





「あんたね...面白そうだけどマンホールこじ開けちゃダメでしょ。却下」





「んえぇ...」





「私はねぇ...そう、"首塚(くびづか)らしきもの"かなぁ。ここから南に1キロ歩いたところに小さな祠みたいなものがあるんだけど、それがお墓なのか謎のオブジェがあって、そこにいって正体を明かしてみたいかなぁ」





「あの....どれも危なそうなんですが...」





「じゃあいちばん危なくなさそうな"首塚らしきもの"でどうかな。昼から活動すれば危なくないでしょ?」





「まぁ、昼からなら...」





「みんなはどう?もちろん無理にとは言わないから、参加できない人は辞退できるよ」





「私は賛成です。以前私のテーマを通してもらったので」




桜木桃花、賛成。





「私もいいよー」





志麻颯(しまはやて)、賛成。





「首塚もどきへ...レッツゴー!」





和田華奈(わだかな)、賛成。





「よし、じゃあ今から"首塚らしきもの"へ出発します。全員離れないで集団行動を心がけましょう」





然(しか)り、葦野野呂、曽根鶴木賛成。


令和X年7月2日9時23分。白須賀町郊外森林地帯へ都市伝説研究部、出発開始。



































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