第1話 福岡からの転校生
_______a.m.7:25 白須賀高校 2年Bクラス
キーンコーンカーンコーン__________
朝のホームルームを告げるチャイムが鳴る。
それと同時に、Bクラスの担任の加藤澄子がザワついたクラス内に静止をかける。
「はーい静かに、し・ず・か・に!」
「今日は皆さんに転校生を紹介します。じゃあ自己紹介をしてくれる?」
ガラララッ
カツ カツ カツ カツ___________
教室に入ってきたのは紺色の髪に白いセーラー服を着た血色の良い少女。
サイドテールで、鼻息をふすふすと気合いを入れて教壇前に直立する。
「すぅ...はあ...」
「...六根清浄六根清浄...すぅ、ふぅ...」
「よし...よかと」
「ん...博多弁」
机に突っ伏して寝ていたのんびり屋の颯は彼女の声を聞いて目を覚ました。
「福岡から来ました、曽根鶴木です!好きな物は太麺の煮干しつけ麺!」
「今日から皆さん、よろしくお願いします!」
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自己紹介とホームルームを終え、鶴木は1番後ろの左隅の席に座った。
すると、緑髪のタレ目の同じクラスメイトの女の子が、私の席に向かって歩いてきた。
「ねぇねぇ、曽根さん...だよね?」
「そのサイドテール可愛いね!」
「おぁ...ありがとう!」
「あの、私鶴木。よろしくね」
「うんうん、よろしくね」
「私は坂木ゆり。福岡から来たんだって、随分遠いところからきたね〜」
「この白須賀高校、森の中の田舎だよ?」
「やはは...親の仕事の都合で」
「そっかぁ。ま、それなら仕方ないよねー」
「ところで鶴木ちゃん。もう入る部活決めた?」
「ううん。私高校入ってからは勉強に集中したくて_________」
「________都市伝説研究部」
「...へ?」
「ここの高校、有名な部活があってね」
「都市伝説研究部。この世に伝わる都市伝説を現地調査、次いで研究、考察を主に活動する楽しい部活」
「____________」
私は口をぽかんと開けた。
突然ゆりちゃんが、人形みたいな生気のない顔でそんなことを言い出すものだから、少し驚いた。
少し怖かった...かも。
パサッ
「これ、勧誘の紙ね。勉強に集中したかったら、幽霊部員でも構わないから」
「それじゃ鶴木ちゃん。よろしくね」
カツ カツ カツ カツ...
ゆりちゃんは歩いて前側の、私とは反対側の席に座って、またあの人形みたいな顔をしている。
なんというか...変わった子だった。
そういう印象を受けた。
キーンコーンカーンコーン________
そして、1時限目が始まる。
_______________________
キーンコーンカーンコーンッ
「...」
「...来ちゃった」
時刻は16時30分。最早太陽は西へ沈みかけ、窓越しの廊下一面はオレンジ色に染め上げられる。
そんなカラスが鳴いている中で、私は地下1階の空き教室3の目の前に立ち尽くす。
「...」
私は意を決して、扉を叩こうとしたその時______
ガラララッ
「ファガーソンッッ!!」
ファガーソン...!
ファガーソン......
ファガーソン...........
その廊下に、某サッカー選手、現在は監督を務めている者の名が響き渡る。
その引き戸を勢いよく開けた女の子と私は瞬間目が合って、しばらくの沈黙が訪れた。
八重歯がよく冴える、黒髪の短髪の子だ。
同じくセーラー服を着ている。
「あ...あはは...ファガー...ソンさん...ですか?」
「んなわけなか...」
「ん...あ。君あれ?入部希望者?」
「...あ、入部希望っていうか見学っていうか、なんていうか...その...」
「見学者でしょ。もう、華奈がバカでごめんね。落ち着きないでしょ?この子」
その華奈と呼ばれた子の背後から顔を出す、落ち着いた雰囲気の黄色の髪の女の子。
カーディガンを着て、右手には本を抱えていた。
「私は部長の葦野野呂。こっちの落ち着きないのは和田華奈。女の子なのにサッカーが好きなんだって」
「はぁ?女の子でもサッカーが好きでいいでしょー?」
「別にいいけど、私はそんな野蛮なスポーツいやなの」
「...あ、ごめんね。とりあえず立ち話もなんだし、部室に入って?お茶でも出すから」
「お茶...」
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ポンッ
「さぁさぁお飲みください。都伝部で育てたお茶ですよ」
「とでんぶ...?あ、都市伝説研究部だから...って」
「この部活ってお茶育ててるんですか!?」
「そうだよー。先生方には内緒だけど、見つからないようにするのも、なんだか面白いじゃない」
「だからどうか教師陣には内密にね」
そう言って野呂さんは微笑む。
「はぁ...すごか...」
「いただきます」
ズズ...
「あ...おいしか...」
「ふふっ、やっぱり採れたては違うでしょ」
「ズジョ、ゴボョビョゴクッ_________」
ドンッ!
「うまい!もう一杯!」
「お前は味わって飲めやぁッッ!!!」
葦野さんは血相を変えて華奈さんの後頭部をぶっ叩く。
華奈さんの顔は目の前の机にめり込んだ。
「(葦野さん...華奈さんには当たり強いな...普段から華奈さんがこんなことしてるからかな...)」
そんなことを考えながらお茶をすする。
「あ...そういえば、都市伝説研究部って2人だけなんですか?他に部員とかは...」
「あー...そうだね、私らの他には1年の子が1人と、2年の子が1人かな」
「あ、じゃあその2年の子に私今日会いました。その子が今日この部活に勧誘してくれたんですよ。私も同じ2年なので」
「お...そうだったんだね。じゃあ颯ちゃんかな」
「...ん...?」
「うん?」
「あぁ、いえ...その子、自分で坂木ゆりって名乗ってたから...」
「坂木...ゆり...?」
葦野さんは不思議そうに華奈さんと顔を見合わせる。
「鶴木ちゃん...」
「▅▅▅なんで坂木先輩のこと、知ってるの?▅▅▅」
「...」
「え...先輩...?」
「ノロ...この話は...」
さっきまでふざけていた華奈の表情には不安と萎えた感情が浮かぶ。
「そ、そうね...うん...その方がいい」
「...」
「...」
「あの...私...」
「気にしないで!その...以前、この部活にそういう先輩がいてね。今は卒業しちゃったんだけど」
「もしかしたら、同じ人がいたのかもね」
「...」
「今日はもう人も集まらないし、ここらでお開きにするけど鶴木ちゃん。入部の件、是非検討してね」
「私たちはいつでもあなたを歓迎するから」
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真っ赤な夕陽に照らされた歩道を歩く。
辺りは草原と木々だけで、キリギリスとセミの声がうるさいほどに聞こえてきた。
「なーんか、変な1日だったなぁ...」
クラスで最初に話しかけてくれた子...あれ一体なんだったんだろ。
華奈さんと葦野さんはなにか知っている様子だったけど...なにか事情がある感じだったなぁ...
「...」
「でもここに越して友達もまだだし、幽霊部員でも入っておいた方がいいよね」
「よーし...今日から都市伝説研究部、頑張るばい!!」
そう言って私は、顔を出した三日月にガッツポーズをした。
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「...坂木...先輩...」
鶴木が居なくなった部室で葦野はその名前を夕陽に向かって呟く。
「なぁノロ...なんか変だよ。鶴木って子、なんで坂木先輩のことなんか...」
「...知らない。見たところ、普通の子そうだし悪戯や悪い冗談を言うような子にも見えないし」
「うちは元々部員も少ないからね...入ってくれればこの部活も存続出来るかもしれない」
「でも...!」
「分かってるわよッ!!坂木先輩は...坂木先輩は_______」
「▅▅▅2年前に交通事故で死んでるのよッッ!!▅▅▅」
「......」
「...とりあえず...明日、鶴木ちゃんのクラスに行ってみる」
「そこに真実が、あるはずだから」
[第1話 福岡からの転校生 [終]]




