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シンデレラ・リアリズム  作者: Aschenputtel
4/14

4.カミラ

ヘルガが過酷な裁縫仕事に慣れ始め、半年ほどが過ぎた頃のことでした。季節は巡り、冷たい秋の風が屋敷の窓を揺らす季節になっていましたが、継母エレオノールはさらなる難題をヘルガに課してきました。

ある日の昼食時、豪奢に飾られた食卓の上で銀のナイフを置きながら、エレオノールは不機嫌そうに目を細めてヘルガを睨みつけました。


「ヘルガ、なぜお前はマリエルやパメラと同じ食事を、同じ量だけ食べているのですか。淑女たるもの、美しいウエストラインを維持するために、厳しく食事を制限するものです。そんな卑しい食べ方、見苦しいわ」


決してヘルガが食べ過ぎているなどということはありませんでした。むしろ、朝から晩まで果てしのない縫い物の仕事を課されているヘルガにとって、現在の食事量でも足りないくらいでした。これ以上食事を減らされては、本当に倒れて死んでしまうと恐怖したヘルガは、勇気を振り絞って反論しました。


「ですが、お義母さま。マリエル義姉さまやパメラ義姉さまはお食事の後に、温かいお茶とたっぷりのお菓子まで召し上がっているではありませんか。私はおやつなど頂いておりません」


「あら、ヘルガは本当に愚かな子ね」


姉のマリエルが、絹のハンカチで口元を覆いながらクスクスと嘲笑しました。


「すでに十四歳を過ぎて、淑女としての美しい心身が出来上がった私やパメラと、未だに成長の途中で垢抜けないあなたとでは、条件が同じなはずがないじゃない。お菓子をいただくのは、高尚な社交の場としての資格があるからよ」


「そうよ」


妹のパメラも、意地の悪い笑みを浮かべて言葉を重ねます。


「お茶のマナーも完璧にこなせないあなたが、高貴なお茶を嗜む資格なんて無いわ。まずは給仕の所作でも学んで、一から出直してらっしゃい」


エレオノールは、ゴミでも見るかのような見下す視線をヘルガに向けると、わざとらしく大きなため息をついて言い放ちました。


「母に向かって不躾に意見するとは。前妻のヨハンナはいったいどのような浅ましい教育をこの子にしていたのかしら。やはり田舎の貴族のしつけは、この程度なのね」


お母さまを貶されること。それはヘルガにとって、心の一番柔らかく弱いところを刃物で切り裂かれるような痛みでした。テーブルの下で握りしめたヘルガの小さな拳は、怒りと悔しさで激しく震え、爪が手のひらに食い込んで白く染まっていました。しかし、ここで怒りを爆発させれば、亡き母の名がさらに汚されることになります。ヘルガは奥歯を噛み締めました。


「罰として、ヘルガは明日から私たちと同じ食卓に着くことを禁じます。これからは使用人と同じ格下の食事をとりなさい。そして、私たちの給仕を務めることで、淑女としてのもてなしを学び、私たちをつぶさに観察して美しい所作を身につけなさい」


何を言っても無駄だということを悟ったヘルガは、ただじっと床の一点を見つめ、うつむきながら静かに答えました。


「……わかりました、お義母さま」


再び姉たちの耳障りな笑い声が食堂に響き渡りました。ヘルガは胸の内に燃えるような屈辱を抱えながら、かつてアンナが教えてくれた「忍耐は美徳」という言葉を、祈りのように必死に心の中で繰り返していました。

次の日から、ヘルガの給仕としての過酷な仕事が始まりました。少しでも手元が狂えば、たちまち義姉たちからの容赦のない叱責が飛んできます。


「カップをソーサーに置く時は、絶対に音を立てない。そんな基本的なことも分からないのかしら、この泥の手は」


「お茶を注ぐ時は、もっと茶葉をじゅうぶんに蒸らしてから、高い位置から静かに注ぐのよ。こんな薄くて不味いお茶、とても人間の飲むものではないわ」


パメラはそう言うと、ヘルガが淹れたばかりの温かい香草茶を、目の前の床へと無造作にぶちまけました。茶色い液体が、ヘルガの足元に広がっていきます。


「私たちがこうしてあなたに厳しく指導しているのは、すべて立派な淑女に育て上げるための、姉としての深い愛の鞭よ。わかっているわね? さあ、汚れた床はあなた自身の手で、きれいに掃除なさい」


飛び散った茶葉と液体を這いつくばって拭き取り、重い銀の茶器を片付けて、ようやく薄暗い厨房へと帰った時、ヘルガの心身はすでに限界を迎えていました。激しい疲労と空腹のあまり、視界がぐにゃりと歪み、ヘルガはその場にふらりとよろめきます。


「お嬢様!」


その小さな体を下から力強く支えるようにして、料理人を兼務している使用人のカミラが駆け寄り、優しく抱き止めました。


「なんて酷いことを……。お嬢様、もう大丈夫ですよ。こちらに来た時は、エレオノール様たちの目を盗んで、このカミラが何か美味しいものを作って差し上げますからね」


カミラはヘルガをそっと木椅子の背にもたれさせると、手早く炉の火を熾し、昼の残りの豆を丁寧に潰して、温かいスープを作り始めました。

木のお椀から立ち上る湯気と、お腹に染み渡る暖かな豆のスープは、冷え切っていたヘルガの体と心を、まるで生きていた頃の母親が抱きしめてくれているかのように、優しく温めてくれたのでした。

⭐︎リアリズムポイント⭐︎

当時の上流階級では、食事制限、優雅な所作、宴席、身体管理、は教養の一部でした。

継母の教育方針はあながち間違いとは言い切れない。つまり、使用人が現場を見ない父に対し、恐れながらと訴え出ても、エレオノールは教育熱心だな、くらいで済まされてしまうのです。

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