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厄災令嬢は王太子殿下の元婚約者でした  作者: はるくうきなこ


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5宮廷薬師になりました


 私は救護院で看護係をしている間に何度かこっそり治癒魔法を使った事があった。言った通り、治癒魔法を使った事がわかればただではすまない。それに救護院などに治療に来る人は治癒魔法のことすら知らないのだ。


 最初はほんの偶然だった。

 最初は幼い子供がおぼれて救護院に担ぎ込まれた時だった。

 すでに息はなく唇は紫色になっていた。泣き叫び子供に縋りつく母親。

 私の中で魔力が渦巻いて気づいた時には子供は淡い光に包まれていた。仮死状態にあった子供は息を吹き返した。


 二度目は喉に食べ物を詰まらせたお年寄り。呼吸は止まり心臓は鼓動していない。その時も腹の底から魔力が沸き上がってお年寄りが食べたものを吐き出させて息を吹き返した。


 三度目は騎士が大けがをして運びこまれた時だった。

 背中に大きな裂傷を受けた傷。何でも馬車が暴走して引かれそうになった人を助けた時運悪くそばにあった石で怪我をしたと言う。出血がひどくすでに意識はなかった。さすがに無理だろうと思った。でも、助けたいと思うと魔力が沸き上がった。背中の傷がゆっくり塞がり騎士のまぶたが震えた。微かに胸が上下して彼は命を取り留めた。

 だが、完全に傷を塞がず浅い傷を残して治癒魔法を使った事がわからないようにした。

 それでも私には治癒魔法を使う力があると確信した。

 それからも私の魔力は進化の一途をたどった。治癒魔法のほかに患者に触ると具合の悪い所が分かるようになった。そのおかげでどの薬草を使えばよいかわかり的確な治療が出来た。

 だけど、人には絶対にばれないように細心の注意を払っていた。

 はずなのに気づかれていたとは。




 どうやらブガリア国の血を引いた私は元々そう言う魔力を持っているらしかった。

 ある時どうも私が作る薬の効きがいいと言う事になって救護院長に問いただされた。

 仕方なく私は薬にほんの少し回復できる魔力を注げるほどだと言った。

 救護院長はみんなに箝口令を敷き私が魔力を使っている事は秘密にされていた。

 そうやって救護院に入って半年が経つ頃には、その噂は秘密にしていても宮廷医にも流れていたらしい。偶然なのか必然なのかアルベルト殿下に薬草を届ける役目を請け負い毒を見つけ結果彼は助かった。

 ロイトン先生は最初から私が治癒魔法を使えると知っていた気がする。まあ、ブガリア国に行ったことがあるからかも知れないけど。

 彼はレイモンド先生のことも良く知っているようだった。


 母も同じ能力があったのだろうか?今となっては確かめる事も出来ないけど、もしかしたら母はこの能力のせいで知ってはいけない事に気づいたのではないだろうか?ひょっとしたら王妃を助けようとしてそれを仕組んだものの手に落ちたのでは?

 そんな想いが心の中に渦巻いた。

 もしこのまま宮廷薬師になれればもしかしたら母の無実を張らせるかも知れないと微かな期待が湧いた。


 

 殿下の危機を救った事で私はロイトン先生からしばらくここに残って欲しいと言われた。そして私は一時的に宮廷医薬師と言う肩書を持つことになった。ロイトン先生の言い分は私はあくまでも薬師。治癒魔法が使える事は絶対知られてはならないと誓約書まで書かされた。

 だから治癒魔法が使える事を知っているのはロイトン先生だけだ。


 私の肩書は宮廷薬師ではあるが身分は平民のアナのままだった。

 母が王妃に毒を盛った疑念を持たれ父は公金横領疑惑の娘。厄災の異名を持つ女の私だとは誰も気づいていなかった。

 何しろ私は髪を肩まで切り前髪は目が隠れるほどだった。おまけに認識阻害魔法を使っていて青銀色の髪色は栗色に見えるし、夕暮れの色をした橙色の瞳は平民のよくある茶色い瞳に変えてある。そして眼鏡をかけてもいる。

 私はよりによってアルベルト殿下の薬師担当になった。

 無理ですと言ったけどロイトン先生は聞く耳は持っていなかった。

 これって絶対ばれるのでは?いや、彼は私に興味などなかったし髪色も瞳の色も違う。バレるはずはないだろう。





 

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