38アルベルト国王になる
コートナー法務局長がひと息つくと言った。
「それではみなさん。改めてアルドラーゼ国新たな王。アルベルト国王陛下。決定でよろしいですね?」
「異議なし」キャベル公爵。
「もちろんです」ルシフェル侯爵。
「おめでとうございますアルベルト国王陛下」
父が言った。
「皆、ありがとう。これから俺、いや、私は国王となるため一生懸命励むつもりです。どうか協力をよろしくお願いします」
アルベルト国王陛下が言った。
「本日の会議はこれまでとします。皆さんお疲れさまでした。客間にお茶を用意させておりますのでどうかおくつろぎ下さい」
コートナー法務局長がそう言うとそこで会議はお開きになった。
キャベル公爵はシュルク辺境伯に挨拶を交わし一緒に出て行った。
コートナー法務局長はレイモンド・ルシフェル侯爵と話をしながら。
部屋にはアルベルト国王陛下とユリウス様、父と母が残っていた。
アルベルト国王陛下が立ちあがると真っ直ぐに私に近づいて来た。
「ディアナ、少し話がある」
「何でしょう国王陛下」
「いや、二人きりで話がしたいんだ」
「いえ、結構です。ここで話して下されば」
アルベルト国王は気まずそうにした。
「だが‥いや、今までの事悪かった。婚約を白紙にしたことも平民にしたことも悪かった。俺が間違っていた。どうだろうか?もう一度俺の婚約者として‥」
やっぱり都合のいいように話を持って行くところ変わってない。
「一度婚約は白紙になりました。もう二度と国王陛下と婚約することはありません」
「怒ってるんだな?ディアナ、俺が悪かった。これからは婚約者としてきちんと扱う。浮気もしない。国王として政務もちゃんとする。だからもう一度考え直してくれないか?」
「無理です」
「どうして?俺は国王になったんだぞ。お前は王妃だ。なっ、機嫌直してくれよ。そうだ。婚約指輪は何がいい?ディアナの好きな指輪でいいぞ」
お調子者のアルベルト全開。彼は満面の笑顔で私の手を取ろうとした。
すかさずユリウス様が間に割って入った。
「国王陛下、恐れながらディアナ嬢はお困りです。さすがに無理です。諦めて下さい!」
「なんだ?ユリウス。お前側近だからってそんな権限ないだろう。俺はディアナと話をしているんだ。邪魔するな!ディアナ、もう一度ゆっくり考えてくれないか?なぁいいだろう?」
「そんな事言われても困ります」
私が断ると今度は父に向かって話を始めた。
「そうだ。オールデル公爵。どうだろう?俺は本当はディアナが好きだったんです。でも、あんな事故が起きて‥事情は分かって頂けますよね?お嬢さんを大切にすると誓います。だから婚約をお許しください」
「国王陛下。有難いお話ですが、私は二度と政略でそのような話を進める気はありません。娘の気持ちを一番に考えてやりたいと思っています。どうかディアナの心のままに」
父に促され私ははっきりと言った。
「国王陛下。私は今は薬師の仕事が楽しいのです。結婚は今は考えるつもりはありませんので、どうか他の方をお探しください」
私はこの時彼の性格を見誤った。
アルベルトは髪を振り乱しいきなり私の前に跪いた。
「ディアナどうか俺と結婚して欲しい。俺が悪かった。お前を追い詰めた。平民なんかにして悪かった。だからもう機嫌を直してくれ」
彼は私の中ではまだ自分を諦めていないと言う勝手な自分なりの解釈をしたようだった。ぐいぐい行けば私は落とせると思ったらしい。
だから違うんです。あなたが嫌いなんです。最初から。
私は大きなため息を一つした。
すると今度はアルベルトの隣にユリウス様が跪いた。
「もう、我慢の限界だ。今度こそは二度とチャンスは逃さないと決めていた。ディアナ・オールデル公爵令嬢。どうか私と結婚して欲しい。ずっと幼い頃から。君に出会った時から。俺は君の事が気になっていた。それからずっとディアナ。君一筋なんだ。俺には君しか考えられない。どうか俺にチャンスをくれないか?」
「ゆ、ゆりうす‥さま」
胸がいっぱいになった。この人は昔からそうだった。そばにいても出過ぎずそれでいて助けて欲しいときには助けてくれた。
私だって淡い恋心を抱いた。でも、アルベルトとの婚約でそんな気持ちは振り切った。アルベルトのそばにいるユリウス様を見るのは辛すぎるから。だから諦めたつもりだった。
でも、ここに来てまた彼に出会って死にそうになった私を死に物狂いで助けようとしてくれて。そんなあなたに気持ちが揺らがないと思った?
目の前にふたりの男が跪いている。もう、こんな状況どうすればいいの?
「ディアナ、あなたの気持ちは?今思っていることを正直に言ったら言いのよ」
私は微笑む母の蚊を見た。
「お母様‥私‥私、ずっと辛かった。お母様が死んだと思った。お父様まで私を置いて行ったと。でも、コニアがそばにいてくれた。薬師をしてみんなに喜ばれた。でも、心は空っぽだった。本当はね。ユリウス様が好きだったの。でも、アルベルト国王陛下と婚約してそんな気持ちを持っていてはいけないと思った。なのに、ここに来たらユリウス様は昔のままで、私のそばにいてくれて‥そんなことされたら‥私の気持ち‥もう我慢できなくなる。だってずっと我慢して来たから。ねぇ、ユリウス様本当にいいの?本当に私をあなたのお嫁さんにしてくれるの?」
ああ、言ってしまった。もう取り返しはつかない。でも、これが私の本心だから。
「ああ、ディアナ。君に婚約を申し込むって言うのは俺の妻になって欲しいって事に決まっているだろう。婚約者じゃなくて結婚して俺の妻になって欲しい」
ユリウス様は立ち上がると私を抱きしめた。
「おい、お前ら何やってるんだ。俺はどうするんだ。ディアナ、いいか。良く聞け。俺は国王になったんだぞ。ユリウスなんかしがない俺の側近だぞ。どっちがいいかよく考えてみろ。俺の方が言いに決まってるだろう?なぁ、ディアナ!」
「国王陛下。いくら陛下でも人の心まではどうする事も出来ません。それにはっきり言いますけど私。あなたの事嫌いでしたから、ずっと前から自分勝手で傲慢で‥大嫌いです」
「お、お前、それが国王に言う言葉か?不敬だ。今すぐこいつを捕らえろ!」
「ほら、やっぱり。自分の思い通りにならないとそうやって権力でごり押しして来るところ。改めた方がいいですよ。あなたはもう国王になったんですから!」
「な、なにを!」
そこにコートナー法務局長が入って来た。
「国王陛下、いつまでそんなところにいるつもりですか?シュルク辺境伯もキャベル公爵もお待ちです。さあさあ、早く行きましょう」
「コートナー。待て。まだディアナに話があるんだ」
「ディアナ様との話はいつでもできます。今は国の未来についての大切な話です。さあ、国王として一生懸命励むと言われたばかりじゃないですか。その意気込みを見せて頂きますよ」
「確かにそう言った。だが‥」
「そうでしょう。さすがアルベルト国王陛下」
コートナー法務局長にそこまで言われたアルベルト国王陛下。後には引けなかった。




