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厄災令嬢は王太子殿下の元婚約者でした  作者: はるくうきなこ


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37すべてが明らかに3


 二人がいなくなるとコートナー法務局長が一度アルベルト殿下を見た。

 「さて、まず次に行うのはアルベルト殿下を国王として任命したいのですが、ガイアス国王代理長い間代理としてお疲れさまでした。いつまでもアルベルト殿下を王太子のままにしておくわけには行きません。皆さんも同意していただけますよね?」

 「「「同意する」」」

 キャベル公爵。レーニング副隊長。ルシフェル侯爵。オールデル公爵が揃って同意する。

 「私はアルベルトを国王にするのはもう少し待った方がいいと思う。こんなことがあったばかりだ。万が一今アルベルトが国王になればまた狙われるかもしれん」

 ガイアス国王代理は顔を曇らせる。


 「ガイアス卿はそのようにお考えですか?」

 キャベル公爵があえてそう言った。ガイアスは王弟だが正式な爵位は持っていない。

 「キャベル公爵、私はまだ国王代理ですぞ!」

 「ほう、ですが、いい加減国王はアルベルト殿下に引き渡すべきでしょう。それとも素直に引き下がれない理由でも?いつまでそれが通用するでしょうかな。オールデル公爵お願いします」

 キャベル公爵が父に言った。

 父は分厚いファイルを開いた。


 「私は半年前、王妃陛下が毒殺され妻がその犯人とされ牢内で亡くなったと知らされて落ち込みました。領地に引きこもると王宮医師であったレイモンドからリーブル川周辺で起きている住民の異変について報告を受けました。ブガリア国のシュルク辺境伯からも同じような症例がある事も知っていました。リチャードが領地の鉱山で採掘している鉱石が原因ではないかとも聞きました。そんな時キャベル公爵から妻が生きていると知らせを受けアリアは王宮で真相を突き止める手伝いをする事になったと知り、私は死んだ事にしてドボーヌ子爵領の調査に向かいました。そこで分かったのは驚きの事実でした。金鉱脈があると言う話は嘘でした。ドボーヌ子爵領で新たに見つかった鉱山から採れたのは鶏冠鉱と言う猛毒の鉱石でした。その鉱石の採掘で鉱夫は体調を崩しリーブル川に流れ込んだ毒で近隣の住民も体調を崩していたのです。おまけにリーブル川対岸にあるブガリア国シュルク辺境伯領にまで被害は及んでいました。魔獣が攻撃的になったのもすべて鶏冠鉱の毒のせいだと思われました。レイモンドはその毒の解毒剤を作ろうと苦心していました。そしてやっと解毒剤が完成しましたが毒の流出を止めなければ解決はしません。その鉱山で暴利をむさぼっている奴らを根絶やしにしなくてはならないのです。そしてその暴利をむさぼっている一番の張本人がガイアス・アルドラーゼ卿です。この鉱山の利益の大半が彼の懐に流れています。そしてそのおこぼれに預かっているのがガクセン財務局長。トレント騎士団長。元オールデル公爵を名乗っていたリチャード・ドボーヌ子爵です。証拠はここに揃っています。この鉱石が隣国や闇ギルドに流れどれほどの犠牲者を出したのか想像も出来ません。王妃陛下もその毒の犠牲者です。殿下も危うくそうなるところでした。そして何より王妃に毒を盛ったとされた妻アリアもディアナも被害者です。今もその毒は近隣に住まう領民にも被害を及ぼしリーブル川に流れこみ作物にも被害が出ています。この鉱山は今すぐに閉山として毒の流れを止めなければアルドラーゼ国もブガリア国にも多大な被害が出ることは間違いありません。アルベルト殿下。いえ、もうあなたは国王陛下になられている。どうかこの資料をご覧になって間違いのない決断をして頂きますようお願いします。最後に今日ここにお招きしているブガリア国リント・シュルク辺境伯に意見を述べて頂きたいのですが」


 コートナー法務局長がシュルク辺境伯に頭を下げる。

 「もちろんです。我が国が多大な迷惑をかけた事誠に申し訳なく思っております。どうか遠慮のないご意見をお聞かせください」

 シュルク辺境伯が立ちあがりお辞儀をしてアルベルトを見た。

 アルベルト殿下も頭を下げて彼に意を表した。


 「ブガリア国シュルク辺境領のリント・シュルクと申します。我が国側のリーブル川流域での実情をお話します。約1年ほど前から領民の間に原因不明の皮膚病や腹痛が起こるようになりました。そして命を落とす事態も起きるようになり、次第に川の水を浸かっている地域にそんな症状を訴える者がいることが分かりました。魔物も必要以上に狂暴さを増し対策に苦慮していたところ妹の婿であるレイモンド・ルシフェルから鉱山の事を聞きました。最初は金鉱脈と聞いていましたが本当は毒性のある鉱石の採掘をしていると聞いてすぐにもアルドラーゼ国に苦情を言うつもりで国王に報告をしましたらアリア様やオールデル公爵が動かれていることを聞きそれでしばらく様子を見る事にしていましたところ、今日ここに招かれました。国王からはブガリア国にとってアルドラーゼ国が信頼の置ける国であるか見極めて欲しいとも言われてここに参りました。この国の方々が私の期待を裏切ることのない人たちであってほしいと心から願っています」


 父はその間に持っていた分厚いファイルを控えている部下に渡した。それはすぐに殿下の前に置かれた。

 アルベルト殿下はシュルク辺境伯の話を聞き終わるとそのファイルの一部を見始めた。

 そして‥

 「俺は今まで叔父を信じていた。母が毒を盛られた時も叔父の言う事を信じた。でも、母が亡くなった後父の見舞いに言った時父が言ったんだ。叔父を信じてはいけないとしっかり自分の目で見ろと‥それなのに俺は‥」

 そのファイルはほんの一部を見ただけでもガイアスのやって来たことが見て取れたらしい。



 「やっと目が覚めましたかアルベルト国王?」

 アルベルトがハッと顔を上げてコートナー法務局長を見た。

 「私達がついています」

 キャベル公爵が言う。 

 「こんな俺を指示してくれるのか?」

 「もちろんです」

 レーニング副隊長が言う。

 「私も妻も協力します」

 父がアルベルト国王を見る。

 「オールデル公爵。すまない。アリア様の事もディアナ嬢の事も俺が悪かった。もっと早く気づいていれば。いや、もっと俺がしっかりしていれば母も失う事もなかったのかもしれない。どうか許してくれ」

 アルベルト国王はみんなに頭を下げた。

 「アルベルト国王、王は簡単に頭を下げてはいけません。さあ、ご指示を」


 「ガイアス・アルドラーゼ。あなたの国王代理の権利を剥奪する。そして今まで行って来た不正すべてに罪に問う。叔父上ご覚悟を」

 アルベルト国王がそう告げるとガイアスは真っ先に立ちあがり異議を唱えた。

 彼の事だ。招集をかけたのには両親が生きていた事やわたしが嘘をついていたことを利用してうまく罪を逃れようとしていたに違いない。でも、思っていたほどうまくはいかなかった。

 当たり前よ。


 「待て!アルベルト。これはコートナー法務局長。いや、キャベル公爵の策略だ。私はお前を立派な国王になって欲しくて国を豊かにしようと。だからあの鉱山を利用して‥鉱山はドボーヌ子爵がガクセン財務局長にうまい話があると誘ってあいつらが勝手にしたことだ。私は知らない。何も知らなかったんだ」

 ひどい言い訳だった。

 「ガイアス、貴様!散々いい思いをして来たくせに最後は私に罪を擦り付けるつもりか?そんな事はさせるか、私はガイアスの行った不正取引の帳簿を持っている。今さら知らないとは言わせない。覚悟するんだな」

 ガクセン財務局長も立ち上がってガイアスを糾弾する。

 「私もガイアス国王代理に命じられてやったんです。ディアナ嬢殺害もその他の証拠隠滅もすべてガイアスに言われてやった。私はただ命令に従っただけだ!」

 トレントも一国の騎士団長と言う役職のくせに狼狽して自分の罪を擦り付けている。


 「そうだ。すべての発端はドボーヌ子爵だ。あいつが新たに見つかった鉱山の鉱石が猛毒で金になると持ちかけて来たから‥」

 「「「そうだ。ドボーヌが一番悪い!!」」」

 ガイアスがガクセンがトレントがリチャード・ドボーヌを指さした。

 「いい加減にしてください。あなた達こそ私からどれほどの暴利をむさぼったんです?私なんてほんの一握りの富を得ただけじゃないですか!ほとんどの儲けはあなた達が持って行った。それで私が悪いと?冗談もいい加減にして下さい。国王、すぐに鉱山は閉山にします。それでいいじゃないですか。私はドボーヌ子爵に戻ります。反論もしませんし、今まで通り税金は国にきちんと治めます。ですからどうかそこの3人を罰して下さい」


 「どいつもこいつもいい加減にしろ!全員捕らえろ!コートナー法務局長。この3人の取り調べは容赦のないように」

 アルベルト殿下がはっきり言った。

 「はい、もちろんそのつもりです」

 ガイアス。ガクセン。トレントが騎士に連行されて行く。レーニング副隊長が立ちあがり一言。

 「アルベルト国王陛下、私が責任を持って牢に連れて行きます。どうかご安心ください」

 「ああ、ヴォルク・レーニング、お前をたった今王国騎士団長に任命する」

 「ヴォルク・レーニング。全身全霊でその任務お受けします」

 レーニング隊長の目が潤んでいた。

 私はアルベルト国王を少し見直した。ほんの少しだけ。









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