30無理やり牢に入れられる
私は部屋に案内されてしばらくすると食事が運ばれて来た。
窓の外はもう太陽が沈み薄っすら闇が迫っていた。
少し早いが運ばれて来た夕食を食べてそろそろお風呂にでも入ろうかと思っていた。
いきなり部屋の外が騒がしくなった。
何人もの人が行きかい隣の近くの扉が開き声が聞こえた。
「先生。殿下が大変です。すぐに来て下さい」
「殿下が?何があったんだ」
「多分毒が!」
「どうして?殿下には護衛がついていただろう?」
「とにかく急いで下さい!」
「毒ならアナも一緒に」
「それは出来ません。いいから早く」
慌ただしいやり取りの後、秀敏な足音が遠ざかった。
また殿下に毒が使われたのだろうか?まさか。だってそのための警護がついていたはずと思うものの、私はそわそわしながらも部屋でじっとしているしかなかった。
それから少しの間は静かな時間が流れた。
まるでさっきの喧騒は嘘だったかのように廊下には人の気配がなかった。
いきなりノックもなしに扉が開かれた。
「ディアナ!お前を捕らえる」
護衛騎士の服装をした男が3人入って来た。
私は窓越しに椅子に腰かけていた。振り向いたまま椅子から立ちあがる。
「いきなり、どういう事ですか?」
「自分の胸に聞け!全く白々しい、殿下に毒を盛っておきながらよくも」
1人の騎士が眉間に皺を寄せて言葉を吐き捨てる。
「毒なんか盛ってません!これは何かの間違いです」
「いいから来い!」
別の騎士が私の腕を無理やり引っ張った。
身体の重心が傾き私は倒れそうになるが、騎士に腕を思いっきり引っ張られそのまま引きずられるように部屋から連れ出された。
「私は何もしていません!」
「うるさい!お前は魔法が使える。現に俺たちの目を欺いていた。そんなやつの言う事が信じられるか!」
「そんな。それには事情があったと言いました。警務調査官は信じて下さいました。それなのに」
「それは殿下が倒れていなかったらの話だ。殿下はまた毒を盛られた。今も生死の境をさまよっていらっしゃるんだ。お前のせいだ!」
「私なら殿下を助けられます。私を殿下の所に連れて行って下さい」
「はっ!お前のような奴を殿下のそばに連れて行けるか!お前は殿下の暗殺未遂で処刑だ!」
「そんな、あんまりです。私はやっていません。ロイトン先生に聞いてもらえばわかります。私は無実だって!」
「うるさい。いいから大人しく牢に入ってろ!すぐに処分が決まる」
3人の騎士は殿下の事で相当頭に血が上っているらしく何を言っても取り合う気はないらしい。
私は取り調べ前に入れられていた牢にまた戻された。
どうして私がこんな目に合わなきゃならないの?
マリウス警務調査官は本当の姿の方は疑がわれないって言った。なのに。
それに殿下にはあの後護衛が着いたんじゃないの?
この国は一体どうなってるわけ?
王妃は毒殺。国王も怪しい最後だった。王太子であるアルベルト殿下も二度、いや三度も毒を盛られて、この国は誰が国王になる訳なのだろう?
いた。ニコライ元国王の弟。ガイアス国王代理がいる。
ガクセン財務局長。トレント騎士団長。キケル医師もその息がかかった人。そして叔父のリチャード。そしてシャロン?でもシャロンは殿下の婚約者で、彼女も殿下に好意を寄せていたはずだった。
何かがおかしい。
そもそも毒は何の毒だろう?トリカブトのような植物、それとも鉱物に含まれる毒なのだろうか。
外はすっかり暗くなった。灯りは牢の通路にあるかがり火だけで牢の中には灯りはない。
それに床も壁も石造りで冬ではないが何だかひんやりしている。
私は粗末なベッドの上で身体を丸めた。
このまま母のように何を言っても信じてもらえず私も気力を失っていくのだろうか。心を病んでいくのだろうか。そして最後は自分の命を絶ってしまおうと思うのだろうか。
無実の母はこんな気持ちだったのかと思うと悔しさと悲しみが一気に押し寄せて来た。




