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厄災令嬢は王太子殿下の元婚約者でした  作者: はるくうきなこ


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29/39

29また毒が(アルベルト、レーニング)


 キケル医師はすぐに戻って来た。

 「殿下、こちらの薬を飲んで下さい。これはあの薬師が作ったもので毒消しの効果があると聞きました。とにかく今は身体の毒を何とかするのが一番です」

 俺はキケルから薬包を見せられた。

 「ああ、アナが作った薬だな。あれは甘みがあって飲みやすかった」

 「そうなんですか」

 キケルはそれだけ言うと先に水の入ったコップを渡した。そして薬包を広げて俺の口に持って来た。

 舌に薬の粉が広がる。少し甘い味がしたと思うとすぐにもう一つの薬が口の中に入れられた。

 「これも毒消しですので」

 キケル医師がすかさずそう言った。

 ツンとした匂いに鼻奥がズキッとしたが、俺は何の疑いもなく我慢だと思った。

 苦みのある薬が口の中に入って俺はすぐに持っていたコップの水を飲みこんだ。

 甘かった味は後で飲んだ薬の苦みに追いやられたのか、流し込んだ薬は喉が焼けるような違和感があって胃の中に熱湯でも流し込まれたような感じがした。

 おかしい。

 脳が何か異常を嗅ぎ取った。

 そしてすぐに身体に異変が起きた。痙攣が始まり焦点が合わない。息が出来なくて苦しくなり喉を掻きむしる。

 「殿下!」

 そばにいたキケル医師が叫んで倒れかけた俺を抱え込む。

 だが、俺は息が出来なくてヒクヒクするだけで声も出ない。

 「ぐぐっ。うがっ!」

 その内意識が遠のいて行った。


 *~*~*


 「殿下が。キケル貴様何をした?」

 「私は何もしていません。薬師が作った薬を飲ませただけで‥」

 キケルの顔は狼狽えているように見えた。

 それより殿下だ。キケルが一度抱きかかえたがもがいて床に転がり込んでいる。

 「もういい!誰かロイトンを呼べ。いやあの女だ。薬師のアナを呼べ!」

 俺は驚いて大声で助けを呼んだ。

 何が起きた?

 殿下が?毒か?誰が?

 キケルは殿下が苦しむのを見てその場に立ちすくんでいる。

 「私はあの薬師が作った薬を殿下に飲ませたんです。さっき薬師に薬の調合を頼んだらここにある薬に解毒薬が入っているからこれを飲ませればいいと言われて‥まさか、こんな事になるなんて‥殿下、しっかりして下さい。おい、誰か催吐剤を持って来させろ!早くしてくれ」

 キケルがそう言ったので俺はその言葉を信じた。

 まだ、誰が何をやったか報告も受けていなかった。

 キケル医師はもう待っていられないとばかりに部屋を出て行く。

 「レーニング副隊長、殿下を見ていて下さい。私は催吐剤を持ってきます」

 「ああ、急いでくれ。殿下が‥」

 俺は床に転がり苦しみもがく殿下を支え背中をさすりながらキケル医師が出て行くのをそのまま見送った。



 そこにコートナー法務局長。マリウスが入って来た。後ろにはガクセン財務局長もいる。

 「何があった!」

 「平民の薬師が作った薬を飲んだらいきなり苦しみ始めたんです」

 「キケル医師はどこだ?」

 「今、催吐剤を取りに行ってます!」

 「マリウス。ロイトンを呼べ他の薬師も、早くしろ!」

 「すぐに」

 




 




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