2厄災令嬢は平民にされました
王都で噂が流れた。
ディアナ・オールデルに関わると厄災が降りかかるのではないかと。
オールデルの令嬢は厄災令嬢だと。魔力を使えるから何をするかわからないとでも思われたのだろう。
そんな事あるわけがない。
母は無実だ。父だって不正をしたわけではない。
でも、その噂を鵜呑みにした人たちの嘲笑を私は黙って受け入れるしかなかった。
そして正式にオールデル公爵家は叔父様が引き継ぐと決まった。
叔父様は幼い頃からずっと父と比べられて父を妬んでいたらしくこの機を逃すまいと思っていたのだろう。
しばらくしてアルベルト殿下の婚約者に従兄弟のシャロンが選ばれた。
どうやら私は叔父の爵位に不満を言いシャロンまで虐げている事になっていた。
ちなみにシャロンと私は同じ年。学年も同じだった。シャロンはよくアルベルト殿下に近づいていた。もしかして婚約が白紙になったのもシャロンのせい?まさか、あれは両親の事があったからだもの。
アルベルト殿下に呼び出され言われた。彼の腕にはシャロンが縋り付いている。
「お前の家族は揃いも揃ってクズだ。ディアナお前は今からオールデル公爵令嬢と認めない。これからはただのディアナだ。お前は平民として生きて行け!」
「そんな、平民だなんて酷すぎます!たとえ両親がどうであろうと私はオールデル公爵家の正式な後継者です。それは殿下もご存知のはずです!」
両親は私が生まれた時、母にもう子供が望めないとわかりオールデル公爵家の後継者を私にすると決めていたのだ。
まあ、でも私が殿下の婚約者になって生まれた子供の1人がオールデル公爵家を継ぐことになってはいたのだけど。
「ほら、殿下。ディアナ様ってすごく怖いでしょう?あの顔。ああ、怖い。ほら、いつ魔法を使って私を痛めてやろうかって思ってるんですよ。だから‥私、身体が震えるんです」
シャロンが薄らと目に涙を溜めてアルベルト殿下のシャツを握りしめる。
私は魔力をそんな事に使った事はない。
殿下がそんなシャロンにふわりと目を細め優しい声音で言う。
「ああ、シャロン。怖がらなくていい。俺がついてるだろう。ディアナ、確かお前は薬草に詳しかったな。そうだ!いいか、お前は教会の救護院で働けるようにしてやる。但し魔力は使うなよ。魔力を使うと死人が出るからな。お前だってそれくらいわかってるだろう?さあ、今日中に荷物をまとめて公爵家を出て行け。いいな!」
すっと私を見る殿下の目が嫌悪を抱き吐き捨てるようにそう言った。
「そんな、酷い。あんまりです」
「これ以上何か言うなら牢に入れるぞ!これでも元婚約者だから温情を与えてやっているんだ。ありがたく思え!」
私は護衛兵に引きずられるように王宮を後にした。
私はすっかり生きる気力を失いもう死んでしまいたいって言うほど落ち込んでいたしこんな家にいたくもなかった。
そして私は18歳で教会に入った。その時公爵家を剥奪され私は平民として登録された。
私は名前もディアナでなくアナと変えた。
コニアは私と一緒に救護院に来てくれた。私はコニアにブガリア国に帰ってもいいと言った。だって彼女は母の嫁入りについて来てくれた。これ以上コニアには犠牲になってほしくはなかったがコニアはどうしても一緒にいたいと言ってくれた。
それがどんなに嬉しかったか。私にはもうコニアしかいない。今は2人で仲良く暮らして行けたらと思う事しか出来なかった。
この国では魔法が使える人間が少ない。王族は少し魔力を持っているが、ほんの少し灯りを灯すとか人の頬を撫ぜる程度の風を起こせるくらいだ。
皮肉な事に母の作る薬は魔力を含んでいたのだろう。王妃からはいつも重宝されていると聞いた。でも、あんな疑いを掛けられてしまったと思うと複雑な気持ちにもなった。
教会でアスロイ大司祭に挨拶を済ませ薬草の知識がある事が分かると取りあえず救護院の看護係として働く事になった。
とりあえず貴族の令嬢だとばれないように認識阻害の魔法を使う事にしようと思うけど、この国で魔力は使う気はなかった。
それでも立派な薬師になって母の無念を晴らせたらといいのにと思っていた。




